六十五話 夜暁が残していった物
戦いは遂にクライマックス!
夜真砥は切り札を得るべく自分(夜暁)が眠る墓に行く!
零夜に反撃するため俺は月夜に背負われて俺の墓、つまり月影夜暁の墓に向かっている墓というより墳墓だ実物は見たことないが石で作った建物らしい。
俺だけが葬られたわけではなく歴代の月影一族はだいたいそこに入れられたが何千年か前にその習慣は終わったらしい。
「あの日見たいね」
「そうだな」
月夜に背負われるなんて死山に襲撃された時、以来だな。
「ずいぶんと大きくなって」
「年寄り臭いぞ」
「置いてくわよ」
「冗談だって」
「でも、その状態は冗談ではすまないけど」
「バレてたか」
「何年マスターといると思ってるの。…許容範囲とっくに超えてるよね?」
「当たりだ。少しずつ周りに放出してるがヤバい」
魔力の許容範囲はとっくに限界を超えている。
あとほんの少し魔力が俺の体に入ってきたら俺は死ぬ。
「とばすわよ!」
「頼む!…零夜!」
「さすがに気づくか。マスター、墳墓までかなりあるけどまけるかしら」
「無理…だけどお前らが何とかしてくれんだろラブラブカップル!」
「おうとも!ここであの時の御恩返さしてもらう」
「元黄泉神幹部!」
岩陰からあの時、俺が逃がした元黄泉神幹部の牛王火苦、雪崩死悩が出てきた。
おっと失礼、雪崩死悩じゃなくて牛王死悩か。
死悩の左手の薬指には宝石がついた指輪がはめられていた。
「結婚おめでとう!」
「まだ、してない」
そりゃそうか今はどの国にも所属してないし結婚式を挙げようにもこんな短期間には無理だからな。
「とりあえずうちの元総大将を止めるぞ我妻よ!」
「その呼び方はあまりしてほしくないけど…嬉しいわかった!ユニークスキル氷山の一角!!氷壁!これが私のフルパワーだああぁぁぁぁ!!」
死悩が全力の氷壁を出現させて零夜の進路を絶った。
「でっか!」
宙を飛んでいる零夜の進行方向を防いだ!?
どんだけ魔力あんだよ。
「今のうちに!」
「これは…あいつら生きてたな。…よくも裏切ってくれたな!」
だか零夜により一瞬にして溶かされた。
そういえば災厄が踊る円舞曲はどうしたんだ?
「糸?」
零夜の足下に糸が敷かれた。
この糸は火苦のユニークスキル、蜘蛛の巣後光であるそしてそれを設置した当の本人は日の本の国へと自分の妻を連れてワープしていた。
「だいぶと時間が稼げるな!」
「そうね!危険を承知して出てきてくれた二人に感謝しなくちゃ!転移の穴!」
は?
「到着!」
「おい、月夜」
「何でしょうか?」
「転移の穴使える魔力があるならさっさと使えや!」
あの二人の努力はいったい何だったんだ!
「帰る用の魔力も残したかってんですぅ~!」
「ああそうかい!で、入り口は?」
「この石…扉!」
月夜は石扉を勢いよく開けた。
「重そうだな」
「片方それぞれ 約三十キロ」
「ご苦労さん」
「それとマスターの胸と太股の傷、塞いどいたから雑すぎよ」
「気づいてないとでも?」
走りながらやってたな。
「む、精霊の慈悲を受け取らないの?」
「回復されたじてんで慈悲は受けてるっうの。案内しろ」
「はーい」
二人はまだ半開きの石扉を通り抜け墳墓に入った。
そこはほこり臭くて一歩踏み出せば砂埃がまい壁一面には苔が生えており雑草は隙間から顔を出している。
何か書かれていたような痕跡はあるが今は色があるだけ絵と呼べる物は一つもないこういう墳墓の場合、門番がいるものだがいなかったおそらくこの精霊が門番のような役割を担っていたのだろう。
靴音は反響する死者を目覚めさせるアラームのような音ではなく死者を弔う優しきレクイエムのようにだがここに葬られた死者の魂はこの墳墓を訪れた者の中に宿っている。
そして二人はたどり着いたこの国の英雄が眠る石室にそこには石棺が二つ置いてあった。
「ここに切り札があるのよね?」
「ああ、俺の遺書通りに残った奴らが入れてくれてたらの話だがな」
「開けるわよ」
月夜は石棺の蓋をずらして床にそっと置いた。
「うっ…」
自分の死に顔なんて見るもんじゃねぇな。
石棺の中で眠っていた者は完全に白骨化していたが立派な甲冑が着せられていた生前、本人が動きにくくなるから嫌だと言って着なかった甲冑、周りにはその者が大切にしていた私物が置かれていた。
「よおう、元気にしてたか俺…あった。借りてくぞ」
「マスターが使っていた剣?」
「その通りだ」
「でも、それは!」
「柄さえ無事なら使える。…月夜、逃げろ」
「…!了解」
決着をつけようか零夜。
「出てきてよ!僕でも兄上が眠っている墓は壊したくない」
「言われなくても出てきてやるよ」
「兄上、よく僕の全力の攻撃を止められたね」
「皆がいなかったらできなかった。それと零夜、お前のユニークスキルってかなりのデメリットがあるな」
「それは?」
「先ほどの攻撃をすればしばらくの間、ユニークスキルは使えなくなる」
「当たり。でも、使わなければいい」
それもそうだな。
「決着つけるぞ。零夜」
夜真砥は鞘から剣を出した。
だが、その剣には刀身と言える部分がなかった。
「それって二千年前に僕が砕いた剣じゃないか!刃がない剣で僕をどう殺すのさ!」
「覚えてないか?これで零夜の心臓に突き刺したことを」
二千年前にこの刃なき剣で零夜の心臓に突き刺して俺は零夜と相討ちして死んだ。
「そういえばそうだったね。何でそんなので刺せたの?」
「こういうからくりだ。…我が意志に従い我が剣よ!その真なる力を解放し我を勝利へと導け!我が魔力を喰らいて見えざる刃よ顕現せよ!我が意志の重さは星の如く!我が肉体は硬さは鋼の如く!我が眼光の鋭さは砕けぬ刃の如し!ゆえに我に見合う力を汝も引き出せ!闇よ光よこの星のありとあらゆる万物の根幹を担う者共に告ぐ我が願いを叶えるべく我が下に集え!我が願いはこの島に大平の世をもたらすことなり!」
(詠唱!?何かの魔法か!?しかし、二千年前のこの島には詠唱文と呼べるものは陰陽道ぐらいにしかなかった兄上は陰陽道には精通していない!じゃあ、何なんだこの詠唱文は!?しかも剣、己の魔力、そして世界そのものに呼びかけている三重詠唱か!?何が起きるのだ!)
「魔剣解放!」
(魔剣解放だと!?あれは魔剣だったのか!?)
「お前の驚いてること全部話す!まずは詠唱文からだ!その通り俺は陰陽道には精通していない!」
「ただの戯言か」
「作ったんだよ!この詠唱文はこの島に最初に誕生した詠唱文だ!」
零夜との戦いの前に海岸に異国からの漂流者が漂着してきたその者と当時の俺は協力してこの詠唱文を作成した。
そいつは賢者を名乗っていたのでそれぐらいのことは容易いと言っていた。
「そしてお前が考えている通りこれは三重詠唱だ!まあ、一文だけどな。最後の答えだ!こいつは元はただの剣だ!だがこの詠唱を言うことによりこいつは魔剣になる!だが使用者がこの島に大平の世をもたらしたいと思っていたらの話だがな!俺は二千年前から変わっちゃいねぇよ!…零夜!なぜこんなことをした!」
「…皆は僕のことを見てくれた。だけど兄上だけは僕のことを見てくれない誉めてくれない!兄上は僕のことを嫌いだったんだ!だから兄上に見てもらおうと僕は黄泉神になったんだ!」
なるほど…死んで正解だ二千年前の俺!
「俺は零夜のことを嫌ってなどいない。零夜のやってることは当たり前だと思っていたから俺は誉めなかっただけだ。悪かった」
「嘘だ…嘘だああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「嘘じゃない!お前が去った後、闇夜の国がお前がいた頃と変わらなかったことを不思議に思わなかったのか!荒廃せず発展していき総大将となっていったあの国のことを!」
「僕は僕は僕は僕は間違ってなんかいない!兄上は僕を冷たい目で見ていた!そうだ!それが証拠だ!」
「それは俺の目つきだ」
月夜の稽古で寝不足だったんだよ。
「うるさい!うるさい!例え僕が間違っていてももう止まることはできない!そうかそうか!あの異国から来た魔族を殺せば兄上の目が覚めるはずだ!」
零夜は日の本の国がある方角を向いた。
あいつ動転して気が狂ったな!
「お前に俺の弟子は殺させない!力を貸せ!八百万剣!!」
刃なき剣は柄から一筋の虹色の光を出してそれは刃となった。
「ユニークスキル!受け継がれし伝説発動!スキル!魔眼、ベヘモス・アーマー、鉄筋、鉄骨、災厄、龍王の加護、観察眼、危険察知、疾風脚、全属性強化、全属性耐性強化、クロノスタシス発動!」
これ以上、強化したら今度こそ体が保たない!
これが今、俺が出せる全力だ!
「…行くぞ零夜!」
「止めれるものなら止めてみろ!」
零夜は収納箱から大太刀を取り出した。
夜真砥は地面を蹴って突進する。
一方、零夜はそれを迎え撃つため大太刀で水平斬りの構えを取る。
このまま行ったら俺は確実に斬られるだが!
零夜は大太刀を振ったが夜真砥が途中で少し跳び大太刀を踏み台にして避けられた。
「今の俺なら避けれる!剣技!龍の角!!」
そして夜真砥は零夜の左肩関節目掛けて突いた。
その攻撃は零夜の体を貫通させた。
「ああぁぁぁぁぁ!!」
更に着地と同時にそのまま零夜を押して岩に激突させ剣を抜いた。
零夜は夜真砥を突き放すため大太刀を再び水平に振るが夜真砥が左足を上げてそれを止める。
堪らずユニークスキルで地面の岩を突き出して夜真砥を放し隕石で追撃を行う。
「潰れろ!」
「潰れん!」
夜真砥は魔法を使わず斬撃を飛ばして空中で砕きその破片を集めて魔法の隕石、隕石を作って零夜に叩き落とす。
「ふん!」
大太刀をいったん地面に突き刺して零夜は右拳で隕石を砕く。
一瞬できた隙を夜真砥は見逃さず零夜を全力で蹴り飛ばした。
後ろの岩は衝撃に耐えられなくなり砕け散り零夜は後方に飛ぶが三位一体砲で飛ばされながら反撃する。
しかし、夜真砥は臆せず突っ込む。
「自殺行為だぞ!」
「死ぬとわかって突っ込む奴なんていない!」
三位一体砲の先端が俺の顔に当たる瞬間、俺は走りながらしゃがんで三位一体砲の下を滑り込む。
三位一体砲は光線だ下げれば俺に直撃するそれぐらい零夜はわかっているだからこうする!
夜真砥は剣で三位一体砲を斬り始めた零夜はそれに気づかず三位一体砲を下げる。
そして夜真砥は起き上がり気づかれないように三位一体砲を斬り裂きながら突っ込み末端付近にたどり着いて跳んで零夜の頭上を通過して零夜の背中を斬った。
「ぐうぅ…」
(やはりあの攻撃をしたのは間違いだった。まだ災厄が踊る円舞曲が出せない!)
「近づくな!」
零夜は夜真砥を竜巻で夜真砥を日の本の国の方角に飛ばして透かさず自らをも竜巻で飛ばして空中で夜真砥を斬って日の本の国を覆っている壁に激突させる。
今のは効いたなぁ!!
「夜真砥!?」
「出てくるなティナ!」
「そいつが貴様の弟子かあぁぁぁぁ!!」
零夜は俺の方に氷塊を飛ばした。
あのさ!それは普通、ティナに向ける怒りでは!
「私の師匠に手を出すなあぁぁぁ!!」
ティナは飛び降りて氷塊を刀で受け止めた。
「バカ!何で出てきた!」
「師匠を守りたいから!剣技!龍王の業火ああぁぁぁぁ!!」
極炎属性を付与してないのに出した!?
零夜は寸前で地下水を放出させて鎮火させた。
「もう…無理」
「おっと!」
魔力切れだな。
「無理しやがって」
「すみません」
「月夜、受け取れ」
「はいはい!」
「テメェ、マジで俺を怒らせたな」
(兄上の目つきが変わった!?あの魔族を傷つけることが兄上の怒りの導火線なのか!?)
「消えた!?」
「消えてない!」
夜真砥は零夜の懐に現れて腹に拳を入れた。
「ぐはっ!」
「まだまだ!」
腹を押さえ込む零夜の顔面を蹴り上げて追撃する。
「ちょこまかと!」
今度は後ろに現れて後頭部を蹴り地面に叩きつける。
「そろそろケリをつけるぞ!」
「死ぬのは貴様だあぁぁぁ!!」
俺は零夜の大太刀を交わして右腕を掴んで日の本の国とは逆方向の方角に投げる。
(こうなったらあの攻撃で兄上ごとあの国を吹き飛ばす!)
零夜は立ち上がり先ほど夜真砥達を苦しめた光線を放つ構えを取った。
「この感じは…また撃つつもりか!…ならそれごと斬る!」
これでこの戦争に終止符を打つ!
第四章は残り二話で終わります!
それではまた次の話で!