六十四話 災厄が踊る戦場で
夜真砥と零夜、再び激突!
山脈を越えようとした夜真砥だが山脈の出口で止まっていた。
さて、どうしようか魔力で焦げないようにしているが…遠くを見る限り雷落ちてるは、氷の柱が突き出てるは円舞曲って言うからグルグル回っているモノかと思ったが全く違うなぁ…零夜を中心に荒れた気候が円を描くように配置されているのか…強行突破するしかないか!
夜真砥はものスゴいスピードで災厄の渦の中を駆け抜けて零夜の懐に飛び込んだ。
「兄上!?」
「また会ったな!」
零夜は回避しようとするだがもう遅い!
「はっ!…止めるか」
零夜は鞘に刀を入れたまま俺の攻撃を止めた。
「何があるかわからない所に突っ込んでくるとか無謀すぎるぞ!」
「百も承知!出たとこ勝負どんとこい!」
反撃の隙を与えるな!
このまま攻める!
夜真砥は刀に力を入れ零夜のバランスを崩して左手で収納箱から刀を取り出してそのまま零夜の右肩に叩きつけた。
「ぐうっ!」
なるほどな。
零夜とこの災厄の渦は天文学者達が言うところの惑星とその周りを回る衛星のような関係だ。
要するに零夜をこのまま北西に押し出せば日の本の国は被害を受けない!
夜真砥は零夜の右肩に刀を叩きつけたままそれでバランスを取り跳んで右足で蹴る構えを取った。
足に魔力を集中!
ついでにスキルも発動させる!
「スキル、ベヘモス・アーマー発動!」
(マズい!吹き飛ばされる!)
零夜は夜真砥の右足を掴もうとするが蹴る速さが上がり掴めなかった。
「吹き飛べ!零夜!脚技!後方回転蹴り!!」
後方回転蹴り、バク転する勢いで相手を蹴り上げる技、主に蹴る場所は顎、うまく決まると脳震盪を起こす新米格闘家ならすぐに覚えた方が役に立つ技だ。
まあ、格闘家じゃなくても使えるがな。
だが俺のはただの後方回転蹴りじゃないベヘモス・アーマーで硬くし魔力を足に集中させて攻撃力を上げているので脳震盪ではすまない顎の骨は砕ける!
しかし相手が零夜なのでさすがにそれはならない俺は両足が地面につくのと同時に跳んで零夜跳んで同じ高さに行く。
そして!
「雷音寺流拳技改良型!粛正の神撃!!」
零夜の腹に粛正の神撃を撃ち込んで遙か彼方まで吹き飛ばした。
「…成功か。…たたみかける!」
夜真砥は零夜の魔力を追いかけて落下地点から跳んでさらに零夜を吹き飛ばす。
「…舐めるなああああああ!!」
零夜は竜巻の力でその場に止まり右腕を高く上げて何かをした。
すると上空から岩の塊が落ちてきて竜巻の中に入った。
「お返しだ!」
そしてその塊は竜巻から出てきて夜真砥に襲いかかった。
「竜巻の回転により速くなった隕石か!」
夜真砥は隕石を受け止める。
硬くて砕けない!
少し雷が後ろに下がった?
零夜が来る!
ちなみに災厄がどの場所にあるかというと零夜に近い順に竜巻、雷と竜巻、氷の柱つまり極寒地帯、豪雨地帯、灼熱と溶岩となっている。
そうそう、隕石は零夜が指定した場所に降ってくる。
零夜は隕石を砕いて夜真砥を地面に叩きつけた。
「楽しいな兄上!」
そして夜真砥の右太股に刀を突き刺した。
「楽しくねぇよ!こんなことをして迷惑だと思わないのか!」
「迷惑!?僕は兄上以外の生き物など興味がないんだ!だから迷惑じゃない!言うならば駆除だよ!」
「そこまで堕ちたか零夜ああああああ!!」
「最高だ!素晴らしい!蘇って良かった!」
零夜は夜真砥の首を掴んで持ち上げて竜巻を夜真砥の後ろに発生させてそこに投げ込んだ。
夜真砥は何度か竜巻の中をグルグル回って山脈の入り口付近に吹き飛ばされた。
「うっ…」
早く立ち上がって反撃しなければ…寒い…雷?
そうか竜巻を操って飛んできたのか…手を動かさないと…動かない。
「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
零夜は竜巻に乗って飛んできて夜真砥の心臓近くに刀を突き刺す。
「もう終わりかな?」
「終わってねぇ…」
俺は零夜を殴るが五メートルほどしか離すことができなかった。
さっきの衝撃でうまく体が動かねえ!
動け…動けええええええ!!
「兄上ってこんなに弱かったかな。もっとあの時は強かったよ。…そうか…そうかそうか」
嫌な予感がする!
「この島にいる生き物が邪魔でうまく戦えないのか…兄上は優しいからね」
零夜は百メートルほど後ろに下がって手を前に出した。
「そんなの消し去ってあげる」
あいつティナ達をこっから殺すつもりか!
「止めろおぉぉぉぉぉぉ!!」
零夜の手からマグマやプラズマ、氷、竜巻を混ぜたようなまるで三位一体砲のような光線です放たれた。
俺はその前に飛び出して防御壁を展開させて防ぐが後ろにドンドン押されるたまたま山脈の入り口付近で防いで山の中を通っていったがその光線はかなりの大きさで山脈に穴をあけながら俺を日の本の国まで押していく。
このままでは全員死ぬ!
これが勇者グローリアが苦戦したユニークスキルの本領!
俺じゃ無理なのか!
同じ勇者なのに俺には倒せないのか!
零夜を止めることはできないのか…。
「伝達!父上!皆を連れて逃げてくれ!」
夜真砥は伝達を使うのと同時に魔力で作った床を足下に敷いた。
『それは無理な相談だな』
「ヤバいモンがそっちに向かっているんだ!」
速すぎるこれじゃあ日の本の国に到達するのも時間の問題!
おそらく数分で到達する!
残り約百十五キロ!
『こっからも見えてる。確かにヤバいな。だから皆で止める!』
「皆で止める!?何をしているんだ!」
『壁の外に全員集まってんだよ!黄泉の国の民もな!まあ、戦えない老人と子供は何もしないがな!ガハハハハ!!』
「何笑ってんだ!止めれるわけ」
『止める。夜真砥、何でも一人で抱え込むな。…父さんの口から言いにくいが私達は家族なんだ。いや…この国全てがお前の家族だ!自分が今までやってきた行いを誇れ!これほどの味方をお前は得ることができたのだからな!黄泉の国の民なんか率先して恩を返すためだと先頭にいるぞ!だから止めるぞ!』
「…わかった死ぬなよ親父!」
『夜真砥!私達もついてるからね!』
「紅葉!?いきなり入ってくんなよ!」
『私もいる。一門総出で止めるから』
「雫もいきなり入ってくんな!…何か俺に言いたい奴、遠慮なく入ってこい!」
『私もいますわ!夜真砥、抜け駆けしたので宴の費用は全部あなたが出しなさい!』
閃が入ってきた。
「ほどほどにしてくれよ!」
『もちろん言葉も!絶対守ってやるから!』
『夜真砥!後で勝負しろ!私を連れて行かなかった罰だ!』
「朧が言うべきセリフだけど葉月だな!」
『夜真砥!これが終わったら礼として酒をたらふく飲むぞ!』
「断りたいが付き合ってやるよ!連華!」
『夜真砥!俺もいるから安心しろ!』
「神威がそれを言うと安心できないな!」
『兄貴!生きてますか!』
「勝手に殺すな!風牙!」
『お兄様!咲夜もいますよ!終夜兄様も!』
「ありがとう感謝する!」
『夜真砥…俺達…俺達兄弟いや家族の力を黄泉神に見せつけてやるぞ!』
「おう!」
何か知らんが力がわいてきた!
『夜真砥様!日の本の国の兵一同ここに集結しております!』
「頼む!お前らの力、貸してくれ!」
『夜真砥ちゃん!これが終わったらうちの蕎麦食べに来てね!』
「蕎麦屋のおばちゃんか!もちろん行くさ!でも、ちゃん付けは止めてくれ!」
『夜真砥様!先ほどはありがとうございました!黄泉の国の民、我が国の王の暴走を止め、この国を守るためともに戦います!』
「あの時の村長か!無事で何よりだ!」
『儂もおるぞ』
「…いや!あんた誰だよ!」
『この国に旅行に来た通りすがりの爺じゃ!』
「お、おう」
俺は数々の声援をもらって日の本の国に近づいていく(何か知らん奴もいたが)でも、恐怖がないむしろ希望が出てきたほとだ。
そうだよ勇者グローリアだって一人で魔王を倒したんじゃない皆と力を合わせて倒したんだ!
だったら俺も倒せる!
そして日の本の国に着いた。
最悪なことに光線の威力は弱まっていないむしろ強くなっている。
「皆!力を貸してくれ!」
夜真砥が先頭の列に近づくと同時に日の本の国の民は結界、黄泉の国の民は防御壁を展開させた。
「バカマスター、一人でこんなの止めるとか無茶です。…言いましたよね生きて帰ってこいと」
「月夜」
「そうそう、夜真砥が死んだらあたしは誰と外の景色を見るの?」
「朧」
「さすが師匠!人望が厚いですね!ますます師匠の弟子になれたこと誇りに思います!」
「ティナ、くたばるなよ!」
何で私だけ死亡フラグ立てるの!
「絶対止めてやる!」
零夜にこれ以上誰も殺させない!
「ギルドランク序列一位、ヤマト・ツキカゲの権限により禁忌を使用する!」
「禁忌って何ですか?」
「使ったらダメな魔法のことだ。序列十位以上になったら使えるぞ。まあ、使ったらダメなヤツもあるが」
さてさて、気を取り直していっちょやりますか!
「我が望むのは絶対的力なり、力あれば我は何者にも負けぬ。しかし我には力がない」
我には力がない?
何言ってるの?
あるじゃん!
「故に汝に願うは他者の力を奪う能力!おお!その能力を我に授けてくれるのか!ならば今ここにおいて我は強欲の王と名乗ろう!しかし喰らいつくしてもまだ足りぬ!幾千の兵の力を喰らえどまだ足りぬ!喰らえ喰らえど満たされぬ我が渇きここで満たす!貴様の力を喰らい我は貴様を越す!集え我が力よ!その牙を研ぎで我が敵に喰らいつき血肉をあされ!蹂躙し全てを喰らえ!」
喰らえ喰らえうるさい詠唱文ですね!
耳にタコができます!
「禁忌魔法!強欲王の満たされぬ晩餐会!!」
強欲王の満たされぬ晩餐会、禁忌魔法の一つでシールドと言うより身体強化に近い無属性魔法だ。
能力は防いだ相手の攻撃を無効化して自分の力に変えるだ。
禁忌魔法にするほど危険な魔法に見えないがこの魔法はかなり危険だ力は物理的なものであっても全て魔力へと変換されるつまり、奪う力が多いと使用者の許容範囲を超えてその者は死んでしまうのだ。
ならば許容範囲を超える前に止めればいい?無理だ強欲王の満たされぬ晩餐会は一度発動させるとほぼ一緒解除できなくなるのだゆえに解除するための技術が必要となるだから禁忌魔法に指定されているのだ。
条文にはこう記されている。
この魔法は制御不能となり使用者が死ぬ恐れがあるのでここに禁忌魔法として定めると。
「…何も変わってませんよ」
「当たり前だ。盾を作る魔法じゃないからな!こう使うんだよ!」
そう言うと夜真砥はためらいなく結界の外に手を出した。
「ええぇぇぇぇぇぇ!!」
「直接攻撃を体に当てて無効化する!そしてそれを魔力に変換して喰らう!これが強欲王の満たされぬ晩餐会だ!まあ、許容範囲を超えると死ぬがな」
あっさりえげつないこと言った!
「止まれええぇぇぇぇぇぇ!!」
光線は夜真砥と日の本の国、黄泉の国の民の協力により止められた。
「…マスター!体は無事?」
「…吐きそう」
ギリ許容範囲を超えなかった。
解除もしたし死ぬ恐れはないな。
「今すぐ魔力を放出して」
「いや…おかげで頭が冴えた。…月夜、悪いがあそこまで連れて行ってくれないか」
「あそこ?」
「…俺の墳墓だ。…月影夜暁のな」
「…了解」
光線を止めて喜ぶ民の隙を見て夜真砥は月夜に背負われて月影夜暁が葬られた墳墓に行った。
戦いは遂にクライマックスを迎える!
こんな文があると最終回のようですが最終回ではありません!
それではまた次の話で!




