六十一話 拝啓、二千年前の俺へ 後悔していませんか?
三章、四章の最終戦スタート!
超絶長い会話文が出てきますのであきらめないで読んでください(^◇^;)
あれから零夜が『今の状態の兄上と戦っても意味がない』と言って俺達を逃がして月影城に戻ってきた。
月影城に戻った俺達をまず迎えたのは天狗達だった。
天狗達は急いで毛布を二枚持ってきて俺と朧にかけようとしたが俺は毛布を取って自分の部屋に戻った。
なぜ毛布をかけようとしたかというと朧が震えていたからだ一方俺は顔が青ざめて朧と同様震えていた。
「マスター、戻っていたんですね」
「月夜か…」
夜真砥は明るくない自室で魔力回復薬のビンを散らかして壁によりかかり座っていた。
「だらしないですよ。どうかしましたか?」
「黄泉神が零夜だった」
「あのガキは二千年前に死にました」
「生きていた。多分、俺達と一緒で転生したんだ。…知ってただろ月夜」
「…マスターには二度と家族を殺させたりはしない。もしもあのガキが生きていたと私が教えたらマスターはどうしていましたか?」
そんなの決まっている。
「倒しに行く」
「でしょ。…あのガキは私が殺します」
「月夜は手を出すな。これは二千年前の俺のけじめだ」
「だからって!」
「ああ、やりたくないさ。でもな月夜、お前が零夜に勝てるか?十中八九無理だろ?」
「…でも、マスターとなら」
「来たら契約を切る」
これは脅しではない本気だ。
「…わかりました」
「すまんな。回復したし行くわ」
夜真砥が部屋を出ようとした時、月夜が夜真砥の袖を掴んだ。
頭を垂れて顔を隠しているが床に落ちた雫でわかる。
月夜は今、泣いている。
「私を置いて死なないで…絶対だから…二度と一人にしないで…もう、待つのは嫌だから」
「必ず帰ってくる。だからそれまでは俺の弟子を頼んだ」
夜真砥は城を出て壁の上にやってきた。
「夜真砥ー!」
「ティナか」
「お帰りなさい!」
「今から出かけるところなんだが」
「そうなんですか!」
「そんなに驚くことか?」
「そういえば朧さんに会ってきました」
「様子はどうだった?」
「いなかったです」
朧さんに会いに行ったけど家にいなかった。
正直言って損した気分だ。
「いなかった!?」
「はい」
あいつはすぐに家に帰ったはずだ。
なるほどあそこにいるのか。
「ティナ、悪いが少しの間ついてきてくれ」
「わかりました。てか、今からどこに行くんですか?」
「黄泉神のところ」
「え!?軍は!」
「俺、一人だ」
ほえ~やっぱりこの人スゴいな。
夜真砥とティナは壁の下に降りてしばらく歩いていたすると、
「遅かったな夜真砥。ティナも連れて行くの?危険だよ」
朧が馬に乗って待機していた。
「連れて行かない。なぜいる」
「夜真砥、一人に背負わせないから」
「そうか…気持ちだけ受け取っておく」
夜真砥は朧を気絶させた。
「ティナ、悪いが朧と馬を日の本の国まで連れていてくれ」
「無理ですよ!」
というかこのために連れてきたの!
「これで何か買っていいから」
夜真砥は収納箱から巾着を取り出して千グリアを渡した。
「ありがとうございます!武運を祈ります!お釣りは貰っていいですか!」
「後で返せ」
「え~!ケチ」
「何か言ったか!」
「何でもないです」
ティナは手綱を取り馬に朧を乗せて日の本の国に戻っていった。
「悪いな朧、俺だけでケリをつけたいんだ」
黄泉の国、日の本の国からかなり北西に進むと見えてくる山脈を越えた先の渓谷にある国、黄泉神という王が国を治めており、最高幹部が王の周りの領土、幹部がそれぞれの領土を治めている。
最高幹部は最大で六名、現在は心以外倒されていない。
幹部は時代ごとに違うためランダムとみられる。
法により縛られており裏切りは御法度、下準備が発覚した段階で即、大逆罪とみなして打ち首だ。
そして現在の黄泉神は月影零夜、俺の前世での弟だ。
そんで俺は今、その渓谷の入り口にある門の前にいる。
「こんちは~」
「月影夜真砥がなななな何の用だ!」
ビビって誰も出てこねぇ。
「何の用ってそりゃあ…大将首取りに来た」
「絶対にここを通すな!」
ありゃらら意志が固まってしまった。
さて、どうしたものか…殺気を飛ばして気絶させるか。
夜真砥は殺気を飛ばしたすると門番は石化したかのように次々と固まってしまった。
「行くぞクロ」
夜真砥は闇炎馬のクロにまたがり門を突き破り、殺気を飛ばしながら黄泉の国の城へと突っ走った。
「あれは…黄泉戦か」
しばらく進むと黄泉戦が見えてきた。
「止まれ!」
「止まれと言われて止まる奴はおらん!」
このまま突っ切る!
「待て!城に言っても私はおらぬぞ」
「黄泉神様!?」
零夜…。
「付いて来い。誰も手を出すな私の客人だ」
零夜が城に向かおうとすると黄泉戦達は道をひらけた。
なお、俺には槍などを向けて警戒している。
そして俺は零夜に連れて行かれ黄泉の国の城にやってきた。
「ようこそ私の城へ」
黄泉の国の城は山頂に建てられていた。
高くなく横に長かったまるで貴族の家みたいだな。
「ここが玉座の間だ」
「広いな」
「ここで作成会議をするからな。…さて兄上、少し昔話をしないか?」
昔話?何のつもりだ…まあ、いいけど。
「いいぜ付き合ってやるよ」
「…兄上は僕の誇りだった優しくて誰からも慕われていた」
口調が元に戻った。
零夜の一人称は本来は『僕』だ。
こいつも演技をしていてな。
「零夜だって慕われていたぞ。俺より賢くて優秀で誰からも頼られて、天を統べる者だったから時期国王になるはずだった」
「確かに兄上はバカだった」
「うっせぇ。…だが十五になった頃、お前は自ら死を偽装した。そして黄泉の国に行った。なぜそんなことをした」
「兄上に見て欲しかったから」
「俺に見て欲しかった?」
「ああ、兄上は僕といつも一緒に遊んでいたのにある日を境に僕のことを無視し始めあの精霊と行動を共にするようになった」
零夜の言うあの日とは闇夜の国の本陣が死山に襲撃されあの夜のことだ。
その日以来、俺は人が変わったかのように性格が豹変して戦いにのめり込んでいった。
「とてもつらかった。僕を見てくれていた兄上が僕のことを見てくれない!どんなことをしても兄上は見てくれなかった!見ているのは黄泉神と己の師である精霊だけだった!なぜ僕を見てくれない!なぜ僕だけを見てくれない!皆は見てくれるのに!兄上に見てもらうには何をすればいい!ありとあらゆる書物をあさったがそんな方法など書いていなかった!どうすればいいんだ!そしてある日気づいたのさ…黄泉神になればいい」
「そしてある日自ら死を偽装した」
「そうだよ!黄泉神になるには黄泉の国に行き実績を上げなければならない!でも、僕は黄泉の国の住民ではない!ましてや最大の敵国である闇夜の国の王子そしてその時期国王だ!当然なることはできない何年待とうともな!だがもう一つ気づいた。…死ねばいいんだ。死ねばこの身分から解放されて自由になり黄泉の国に住むことができる!でも死んだら意味がない!だったら自らの死を偽装すればいい!そうだ偽装すればいいんだ!決行の日は十五の誕生日を迎えた次の夜!元服だってする!兄上にも見てもらえる!でも、兄上はその日、近くに出現した黄泉神の撃退に向かった!僕より黄泉神を優先して!そして確信した僕の考えは間違っていなかったと。作戦決行の夜!天は味方してくれた!その夜は大雨!土砂崩れは起こり僕はそれに巻き込まれ川に流されて溺れたこととなった!でも、僕が仕組んだことだ。土砂崩れはあらかじめ術で地盤を柔らかくして土砂が迫ってきた時に僕は結界で身を守り川に流される途中に木の枝に捕まり助かる!後は簡単だった!適当に下流に着ていた着物を置いたらあら不思議!従者達は皆、だまされた!僕が死んだことを父上に伝えにいった!だけど心配だった僕の捜索が行われてしまうのかそれでは台無しだ。なので姿を消す術を使い侵入したら作戦は素晴らしい方向に進んでいた!誰も入っていない棺桶!僕の遺影が飾られた祭壇!そしてとても嬉しかったのが月影零夜と掘られた墓石!僕は死んだんだ僕の存在は死んだんだ!その時は実に実に実に実に実に実に!最高の気分だった!でも、少し悲しかったがな誰にも見てくれなくなることが。そして僕は黄泉の国に行き黄泉神に命じた!僕を最高幹部にしろと!そしたら思った通り!黄泉神は僕を最高幹部にしてくれた!何せ僕は天を統べる者!本来なら敵になるはずの僕が味方になったんだ!黄泉戦達は僕に拍手喝采をしてくれた!そこであるモノが吹っ切れたあの時の悲しみだ。なんとちっぽけなものだったのか!たったあれ式の人間達に敬われ誉められ讃えられていたことが!黄泉の国は闇夜の国より僕を見てくれる人…いや、魔族が多かった!何だこれは!何と嬉しいことか!そして黄泉の国での最高幹部としての人生がスタートした。僕が何かしようとすると先に誰かが動きそれをやってのけた。作戦会議で僕が助言をしようとしたら別の者がそのことを言った。誰にも頼られず鍛錬を続ける日々が続いた。…ああ、最高の気分だ。ここには僕を頼る奴は誰もいない!僕がやろうとしていることをやらない奴はいない!はっきり言ってうんざりだったんだよ!頼られるのが!零夜様、これはどうすればいいのですか?そして僕が教えると、さすがです零夜様!…テメェだってこんなことできるだろうか!僕は普通のことをしただけだ!それなのにテメェは僕を誉める!なぜ思いつかない!簡単なことだ!なぜ僕ばかり頼る!自分で考えない!ウザイ!ウザすぎる!…でも、黄泉の国にはそんな奴、一切いなかった。自ら行動して考える。優秀な人材ばかりいた。僕は自分の野望に専念できる!だが一つ障害があった。黄泉神がその席を降りない。僕が目指しているのは黄泉神だ!邪魔なんだよあいつが!これじゃあ僕がやってきたことが台無しだ!だったら黄泉神を倒せばいい!そして僕は黄泉神をねじ伏せ黄泉神となった!そして時は経ち兄上は僕の前に立ちはだかった!あの日の兄上の顔は忘れないさ!絶望し怒り悲しみ憎しみ僕にかかってきた!やっと見てくれた!やっと僕だけを見てくれた!だが何だその鬼は見たことある顔だな!そうだ鬼神家の娘ではないか!兄上、なぜそいつを見る!そいつは敵だぞ!結局、最後まで兄上は僕のことを見てくれなかった。地獄で悲しんださ。罰を受けながら僕は泣いた!」兄上を待った!でもある日、兄上の魂が地獄に来てないことがわかった!天国に行ったのか?ならば会いに行こう!でも、いなかった。ならどこに?気になったので調べたするとまだ下界にいるではないか!魂となりさ迷いしかも転生していた!ここには兄上は来ない!会いたい会いたい会いたい会いたい!この忌まわしき地獄から抜け出したい!だから僕は地獄から這い上がってきた!やっと会えた!兄上、僕を見てくれ!」
さっきからの違和感が零夜の話で確信のモノとなった。
零夜は人を止めた!
夜真砥は抜刀して零夜が羽織っていた布を斬った。
すると見えていなかった零夜の全体像が見えてきた。
「気づいちゃった?」
「バカやろぉぉぉぉぉ!!」
零夜の体は人間のものではなかった。
地獄から連れてきた死に人に与えられた体、いや、地獄からやってきた悪魔にふさわしい見た目をしていたそうだこれは悪魔だ。
魔族の祖とされている悪魔族の見た目だ。
零夜の背中には大きな黒い翼が生えており腕は阿修羅と同じく六本、髪の毛は逆立ち額には角が二本、口からは牙が出ている肌は少し深い赤、尻尾はバレないように腰に巻き付けていたがかなりの長さだだいたい一メートルほどか?服は着ているがその隙間から見える筋肉はかなりのものだ。
正直言ってこれは魔王のレベルだな。
「兄上が僕のために悲しんでくれた僕のために!嬉しい嬉しい!もっと見てくれ!」
今からこのいかれた弟に天誅を下す!
「さっさとケリをつけようや!」
「そうだね。兄上、僕と地獄に行こう」
「断る!ブラコンは咲夜だけで十分だ!地獄に帰れ零夜!始めようか今世紀最大の兄弟喧嘩を!」
前世での兄弟は再びこの島でぶつかった。
次回!夜真砥VS地獄から這い上がってきた魔王、零夜!
ちなみに零夜はジュダより強いです!
それではまた次の話で!