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勇者の弟子は魔王の娘?~魔王になれなかったので勇者の弟子になります!~  作者: 寅野宇宙
第四章 拝啓、二千年前の俺へ
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五十七話 目覚めし力

最高幹部戦の最中ですが十年前に戻ります!

 このユニークスキルが発現したのは十年前のことだ。

 十年前、日の本では魔物が大量発生して混乱していた原因は台風により魔力が運ばれてきてそれが溜まり魔石になり魔物が発生したため。

 そのため父上は兵を総動員して鎮圧にかかり城は母上と咲夜だけになっていた兄上は父上と共に鎮圧に向かっていた。

 そしてどういうことか咲夜が城を飛び出して父上の陣に行ってしまった。

 後から咲夜が言ったことだが弁当を作ったので父上に食べてほしかったらしい。

 そして最悪の事態が起きた。

 咲夜が日の本で一二を争う全長約二十メートルにもなる八首で八つの尾を待つ魔物、八岐大蛇に遭遇してしまった。

 一方その頃、俺は月夜と共に魔物をこっそりと討伐していたのであった。

 ということでちょっこら十年前に戻ってみるとしよう。





 十年前、日の本の国、壁の外、壁の下付近の森、


 「絶対、爺ちゃんにバレたくないな」


 十歳の夜真砥はひょんなことから四年前に森で出会った月夜と共に魔物を討伐していた。


 「文句言わないでさっさとやる」


 「地獄耳かよ」


 「聞こえてるわよガキ!」


 「痛い痛い!」


 月夜は夜真砥の頬を引っ張った。

 この頃はまだ月夜に自分が夜暁の転生体だとは教えていない。

 そうそう、十歳の俺と月夜では身長差が頭一個分の差がある。

 言うまでもないが月夜が上だ。


 「こんなチャンスはめったにないの!」


 「だからって魔法も使えない俺を何で外壁に出すんだよ!」


 「鍛えるため」


 「俺が死んだらお前、打ち首だからな!」


 「残念だけど私はあんたの親父に封印されていることになってるからそれとお前じゃない師匠と呼べ!」


 月夜は夜真砥の頭を殴った。


 「痛った~!」


 「あんたがちんたらしてたから魔物に気づかれたじゃない」

 

 茂みから魔物が数体、現れた。


 「言っとくけど手は貸さないから」


 そう言うと月夜は木の枝に飛び乗った。

 

 「は!?え!マジかよ!ああ、やってやるよ!」


 そして数分後、


 「死ぬかと思った~」


 「上出来上出来」


 「何か地響きが聞こえてくるんだが」


 「あらかた巨大な魔物が出現したんでしょ」


 今すぐ国に帰りたい。


 「…襲われたら面倒だし戻るよ」


 ラッキー!


 月夜が夜真砥の手を取り壁の上にジャンプしようとしたその時、森の奥から叫び声が聞こえた。


 「この声って…」


 「どうかしたの?」


 そして同じ叫び声が二度目、俺の予想は確信のものとなった。


 咲夜!


 俺は月夜の手を振り払い森の奥に走った。

 

 「ちょっと夜真砥!」


 間違いない咲夜だ!

 咲夜が何かに襲われているんだ何で壁の外に居るんだよ!

 前世の勘で…こっちだ!


 夜真砥は全力で突っ走り崖に到着した。

 崖の下は開けた岩場のようになっているそこに咲夜がいた。 

 そして咲夜以外にもう一体、


 八岐大蛇!?


 サイズは小さいが八岐大蛇がいた。


 助けないとでも俺の力じゃあ…そうだ月夜に!


 「私の力を借りようとしても無駄よ。精々、時間稼ぎで手一杯」


 「でも」


 「でもじゃない八岐大蛇は一度狙った獲物を逃がさない。そのしつこい執念で追い詰める。あの小娘を国に入れたらあれが国に侵入するわ。それにあの小娘はあんたを虐め差別してきたヤツよ。そんなのここで死ねばいいじゃない」

 

 「そうか」


 「わかったのならさっさと戻」


 「俺が殺る」


 「はぁ?あんたの力であれを倒せるわけないでしょ!」


 「無理でもやってやる。俺が時間稼ぎをしている間に父上達が到着してなんとかしてくれる。だから」


 「力の差の問題よ!一瞬で死ぬわよ!」


 確かに八岐大蛇と俺では力の差があまりにも大きい。

 だからって!


 「見捨てるわけにはいかないんだ!咲夜は俺のたった一人の妹、家族だ!家族だなんて認められなくてもいい!俺は咲夜を守りたいんだ!それに目の前で震えている女の子をほおって逃げれるか!逃げたら男じゃない!」


 夜真砥は後ろに走りユーターンして崖から飛び降りた。 


 「夜真砥!」


 「咲夜から離れろおおぉぉぉぉ!!」


 夜真砥は八岐大蛇に刀を突きつけるが弾き飛ばされる。


 「何であんたがいるの!?」


 「それはこっちのセリフだ!」

 

 「さっさと失せろゴミクズ!こんなの私一人で十分よ!」


 「まあ、そう言わずに妹なんだし兄ちゃんに任せろ!」


 「はぁ?」


 こういう場合はちまちま、傷を付けてダメージを与えていくのが最良…だが!

 俺の力では小さい傷すら付けることができない!

 なら、一刀一刀、全力で振り下ろすまでそしてこの岩場の地形を利用しろありとあらゆるモノ全てを使え!

 心の中で言ってやる。

 八岐大蛇、運が悪かったなテメェの目の前に居るのは二千年前に実在した闇夜の国、最強の侍、月影夜暁だ!


 「参る!」


 隙があったら背中に飛び移る。

 だけど今は腹を狙え!

 あの巨体を支えているのは腹だ!

 腹さえ斬れば奴は己の体重を支えなくなり動けなくなる!


 「やあっ!」


 浅い!

 もっとだもっと力を振り絞れ両腕で振り下ろすんじゃない全身で振り下ろせ!


 入った!


 夜真砥の全力の斬りつけは八岐大蛇の右腹にわずかなかすり傷を付けた。

 

 毒のブレスがくる!

 どこか逃げる場所は…あるけど無理だ!

 それに逃げるなんて選択はない!

 首の下を走り抜け!


 夜真砥は八岐大蛇の首の下を走り抜けて毒ブレスを回避した。

 しかし、夜真砥は何かにつまづいた。


 槍!?

 そうかここって父上達が魔物を討伐しながら通った場所なんだ。

 これは使えるぞ!

 まずは槍だ!

 先ほどかすり傷を付けた場所にこれを突き刺す!


 夜真砥は後ろから回り込み先ほど付けたかすり傷に槍を突き刺そうとするが跳ね返される。


 「まだだあぁぁぁ!!」


 夜真砥はあきらめず槍を突き刺す。

 わずかに槍は刺さったが今にでも外れそうだ。

 なので夜真砥は突き刺してそのまま体を回転させて槍の末端に蹴りを入れて押し込んだ。

 八岐大蛇の右腹に槍が突き刺さった。

 八岐大蛇はそれに反応したのか右に転がろうとする。

 しかし、これは夜真砥の作戦だ。


 かかった!

 そのまま思いっ切り転がれ!

 そしたらテメェの体重で俺の後ろの鋭くとがった岩に突き刺さる!


 八岐大蛇は右腹に岩が突き刺さり咆哮を上げた。


 いけるいけるぞ!


 俺はその時、少し油断してしまった。

 そのせいか八岐大蛇に頭突きをされ吹き飛んだ。

 運良く頭突きは刀に当たり少しだけそれた。


 「があぁっ!」


 バカかテメェは!

 相手はテメェより強い八岐大蛇、一瞬でも油断したら骨がバラバラになるぞ!

 今のは運が良かっただけ!

 休んでる暇なんてない!

 次の一手を考えろ!


 夜真砥は地面に落ちていた球を投げた。

 すると球から煙が出て当たりを覆った。


 煙玉が落ちていて良かった。

 しかもこれは簡易的なもので小麦粉を使ったヤツだそれにあと、四個落ちている。

 慎重に使うか…いや、紅葉から聞いたあれをやるぞ!


 夜真砥は落ちている煙玉を全て八岐大蛇にぶつけた。


 今日は無風、しかもここは空気が溜まりやすいということはこの火打ち石を投げれば、


 夜真砥は腰に付けてある袋から火打ち石を取り出して八岐大蛇に投げたすると火打ち石は火花を散らすだけではなく大爆発を起こし八岐大蛇を包み込んだ。


 粉塵爆発、空気中に浮遊する粉塵の濃度が一定である時、火花などで引火しやすい状態となり爆発を起こす現象のことだ。

 これで傷口から炎が入り込み内部から焼かれる。

 それに奴の鱗が焦げてもろくなり砕きやすくなる!


 まだ炎に包まれている八岐大蛇が火を吹いた。


 「あつ!」


 そういえばこいつ火を吐くんだったな。

 地面に盾が転がってて良かった…まてよ使えるぞ!

 やっぱり煙玉が落ちているてことはこれもあるよな!


 夜真砥は盾で炎を防ぎながら火を吹いている首に近づき火が止まるのと同時に口の中に先ほど拾ったモノを投げ込んだ。

 そしてまた八岐大蛇が火を吹くと首もとが爆発した。

 投げたのは火車剣、本来は放火などに使うが戦闘用に改良して火をつけ敵に投げたら時間差で大爆発するようになっている。

 要は忍者用の手榴弾だ。


 「火を吹くっていってもテメェらは口の中に炎属性の魔法陣を展開してそこから火炎放射をしているだけだよな!つまり喉から下は炎属性の耐性がないのと同じだ!」


 「グルアァァァァ!!」


 怒るのはや!


 八岐大蛇は怒ると体の色がどんどん赤くなっていき凶暴性がます。

 ちなみに火炎放射の威力も上がる。


 八岐大蛇は再び火を吹いた。

 夜真砥はとっさに盾でガードするがあることに気づく。

 火炎放射の延長線上に咲夜がいることに。


 あいつ、腰が抜けて逃げれねぇのか!

 …くっ!この盾を使え!


 夜真砥は咲夜の方に今、使用している盾を投げた。

 おかげで咲夜は火炎放射から身を守れたが、それにより夜真砥の服は燃えて皮膚はただれ火傷を負ってしまった。


 「何でそこまで…何でそこまでするの!」


 「守りたいから…咲夜という女の子を守りたいから」


 八岐大蛇は体を回転させて尻尾で連続で夜真砥を叩き宙に浮かせた。


 この時、俺は遠のく意識の中、体の中で異変が起こっていた。

体の中で何かがざわめいている。

 とても熱いでも優しく誇り高い…わかるこれが何か俺にはわかるこれは自分の身を犠牲にして誰かを守りたい熱い心だ。

 太陽に魅入られた者、本来は月の加護のみ受けて産まれてくるはずが神のイタズラにより太陽の加護まで受けてしまい、身体能力、魔力がほぼゼロに近い状態となってしまう告げられるのは成長の見込みがない出来損ない。

 だがそれは違う!

 日の本二千年の歴史の中で語り継がれるうちにその内容は変わってしまった。

 ある時代では最強の将軍となり国を勝利へと導くと、ある時代では鬼神家との盟約によりその者は鬼を超える力を持つこができると、ある時代ではその凶暴性により太陽に魅入られた者は牢屋に幽閉しなければならないしかし、国が滅びかけた時、その者は救世主となると、そして今ではただの落ちこぼれと。

 時代が変わるごとに伝説は変わってしまう。

 太陽に魅入られた者、二千年前ではこう呼ばれていた天を統べる者(あまをすべるもの)と、天に浮かぶ月と太陽の力、その両方を持って地上に産まれることは天と地を統べて産まれてきたのと同じことだからだ。

 要は太陽に魅入られた者はやり方次第で日の本でいや、世界最強の王になることができる。

 太陽に魅入られた者の持つ力はユニークスキルであるため保持者が死ぬとその能力は次の世代へと受け継がれる、世界中の名だたる英雄達のもとに、ある時は魔王を倒して世界を救った勇者のもとに、ある時は極東の王族のもとに、ある時は伝説の大賢者のもとに、ある時はとある王国を救った救世主のもとに、そして現在は夜真砥が所有している。

 なぜ日の本の国の月影家がこの力をよく所有してしまうのかはよくわからない。

 このユニークスキルの名は夜真砥が世界に名を轟かしたのと同時期に国際ギルドが命名した。

 各時代の英雄からリレーのバトンのように受け継がれ各時代の英雄達を見守ってきたこのユニークスキルの名は








   

      受け継がれる伝説レジェンド・オブ・ヒローズ


 



 このユニークスキルの保持者は努力次第で世界最強になることができる。

 そして十年前、八岐大蛇に反撃を受けて宙を舞った夜真砥にその力は発現した。


 宙に浮かされた夜真砥は体勢を立て直して、刀を握りしめ八岐大蛇の首を走る。

 夜真砥の動きが一気に変わった刀を振るえば肉は断ち切られ鱗は剥がれ落ちる。

 火炎放射も素早くよけて首を落とす。

 八岐大蛇は首を再生しようとするがそれ以上の速さで夜真砥が首を次々と落としてゆく。

 満身創痍になりながらも声を上げて歯を食いしばり刀を振るう。

 そしてまたもや勝利の女神が夜真砥に微笑んだ。

 夜真砥の右目が黄金色に輝いた。

 先天性スキル魔眼(まがん)が発動したのだ。

 八岐大蛇が再び尻尾を振って夜真砥を宙に打ち上げる今度はガードしきれている。

 天高く舞い上がった夜真砥は八岐大蛇に剣先を向けて急降下して皮膚に深い傷をつけ、内部で何かが砕けた。

 その数秒後、八岐大蛇は動かなくなった。

 砕いたのは魔物の心臓でもある魔石、自分より強い魔物を仕留めるのに使う有効な手段である。


 「はぁはぁはぁはぁはぁ…俺の家族に手ぇ出した罰だ」


 そして夜真砥も倒れた。

 その後、夜叉と魔物討伐のために編成された軍が到着した。

 粉塵爆発の轟音でこの場所を知ったらしい。

 初めは咲夜が八岐大蛇を倒したのかと思っていたが咲夜が真っ先に八岐大蛇の背中で倒れている夜真砥を今すぐに治療してほしいと言い夜真砥が八岐大蛇を倒したことを知った。

 

 「まさか夜真砥が八岐大蛇を倒すとは…そこに居るのは誰だ!」


 八岐大蛇の背中で倒れている夜真砥の隣に誰かいた。


 「俺の息子から離れろ!」


 「息子?何十年も放置しておいて今更、この子のことを息子という資格があんたにあるの?ねぇ、元主」


 「その声は!?月夜なのか…」

 

 「ええ、そうよ。あの日のことは感謝してるわ。私を守るために封印した。でもそれは決して忘れないし一生、恨み続ける。この子にしたことも」


 「構わない。それが俺達、一族が償わなければならない咎だから」


 「そう考えているうちはあんたの罪は消えないわよ」


 「どういうことだ?」


 「そのまんまの意味よ。…お疲れ夜真砥」

 

 こうして夜真砥の物語の歯車は動き出したのであった。

 

 

次回は夜真砥、無双して死屍谷を倒します!

それではまた次回の話で!

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