五十六話 弟子として
今回の話は!
夜真砥暴走!
それをティナが止める!
まあ、そんな話です。
夜真砥と死屍谷は皆が、アンデッドと戦っている湖に飛ばされた。
「どうだ?聖水に足を浸した気分は?」
「最悪の気分だな」
(どれほどの知識があればこの広い湖全体を聖水に変換することができるんだ!)
「ちょうどアンデッドも全て倒されたことだし再開しますか」
湖に現れたアンデッド達はティナ達の活躍により全て倒された。
そして夜真砥と死屍谷はお互いの獲物を握りしめ睨み合った。
すると二人に遅れて黒い塊が降ってきた奈落だ。
天地開闢で両断したのか。
「累…助けにきたよ…私をアンデッドにして役に立つから」
マズい!
あんなのがアンデッドになったら余計不利になる!
「…テメェなに無様な姿で現れてんだよ」
「え…?」
「え?じゃねぇよ俺、出陣する前に言ったよな。殺しまくれと!なのに何でそんな醜い格好で戻ってきてんだ!テメェの方がやられてんじゃねぇか!」
死屍谷は奈落に良くやったとそういった言葉をかけずにただ蔑み冷徹な目で睨んだ。
それもそうだ死屍谷にとって奈落も単なる道具、黄泉神以外は単なる道具、利用する価値がなければ斬り捨てるただそれだけの存在、そして死屍谷がアンデッドにする対象は使える道具、奈落のように下半身のない道具は玩具箱には入れずにゴミ箱に入れる。
「仲間だろ。憐れみの気持ちとかないのかよ」
「あぁ?なぜ道具に同情しなければならない。全くこんな時に…つくづく使えないクズだな!悪魔との契約を使ったのに負けたのかよ!…そうだ利用してやるよ喜べ」
「うん!」
奈落は大きな返事をして笑った累はまだ自分を必要としているのだと思ったのだ。
だがそれは違う死屍谷は奈落の頭に足を乗せて踏み潰し奈落の死体から溢れ出た魔力を取り込んだ。
「ゴミはリサイクルしないとな!どうだ?今、テメェはどんな気持ちだ?」
「別に先ほどとたいして変わらないさ。テメェがどんだけ人を殺そうと、どんだけ残虐な行為をしようと変わらない。こいつでテメェを斬る…ただそれだけのこと…要は復讐心しかねぇな」
「ずいぶんと残忍な奴だな」
夜真砥は何も返事を返さずに無言で足を動かして死屍谷に斬りかかった。
二人は湖の水を巻き上げながら再び戦いを始めた。
一方、ティナ達は、
「あれって夜真砥?」
「魔力反応からしてそうね」
珍しい、夜真砥が黒以外の鎧を着るなんて。
(あれは神の聖騎士の装備、どうせあのストーカー天使に貸してもらったんでしょ。無謀すぎるのよまったく、身が滅んでも知らないから)
「さっさと避難するわよ。…どうかしたの?」
「うん、なんか怖いんだ」
「そりゃあそうよ。マスターが戦っているは最高幹部よ」
「そうじゃない。怖いのは夜真砥…何かいつもの夜真砥じゃないみたい」
とても怖い、目を尖らせて眉間にシワを寄せて吠えながら斬って時に不気味な笑みを見せてる。
まるであいつらみたい。
「はぁっ!」
「効かんぞクソガキ!!」
限界がそろそろ近い!
だがそれは相手もだ。
(何だ…足がふらつきやがる。聖水のせいか?)
「光の牢獄!!」
「こんなの!」
(目が!)
「剣技連撃!!」
「ぐうっ!」
(なぜだ!先ほどから奴の攻撃を見切れなくなっている!聖水の効果かもしれないが効果が現れるのには早すぎる!)
「テメェ!何かしやがったな!」
「やっと気づいたか。状態異常付与聖毒、アンデッドのみ効く猛毒だ」
(おもしれぇ!アンデッドである俺に毒をもるとは)
「それと動きを鈍らすだけではない。聖撃!」
死屍谷の右肩に剣先が刺さるとそこが光属性の爆発を起こした。
「再生能力の低下これをもたらす」
(腕の再生がおせぇ!何だこの毒は!)
「耐えてみろ。まだ終わらせたくないテメェには最大の苦痛を与えじっくりと殺していく」
(悪魔かこいつは!)
「聖撃聖撃聖撃」
夜真砥は続いて左肩、左右の太ももに聖撃を放った。
そして再生途中の死屍谷の腹を蹴り水を操り死屍谷にかけた。
まさにそれは不死者であるアンデッドに対する拷問である。
「早くしろ破壊するところがもう腹と頭しかない十を数えるまでにどこか再生させろ十、九、八、七、六、五、四、三、二、一。吹き飛べ風撃」
死屍谷は腹に風撃を当てられて吹き飛んだ。
「まだ、死ぬなよ」
(こんなクソガキにこの俺が倒されるのか!?ありえねぇありえねぇありえねぇ!!)
「剣技連撃」
死屍谷は再生した腕や足を斬られた。
「何をしている」
夜真砥は剣先で相手を突く体勢をとり剣先に魔力を集中させた。
「何って聖撃をぶっ放すに決まってんだろ。頭だけ残してな」
(こいつ楽しんでる殺しを…ああ、そうだったな俺も感情を知るために殺しをして楽しんでいたな)
「クククククッ、醜いなぁ」
「お互い様だ聖」
夜真砥が聖撃を放とうとしたその時、誰かが夜真砥の前に飛び出したティナである。
「何やってんだ。そこを退け」
「嫌です」
「師匠命令だ。そこを退け」
「退きません!」
怖い…怖いけど止めなきゃ止めないと夜真砥が…私の師匠が元に戻れなくなる!
「殺されたいのかテメェは!」
「上等です!それに今のあなたを師匠なんて呼べません!私の師匠は優しくて誰よりも思いやりの心を持ちそして誰よりも戦いに誇りを持っています!でも今のあなたは残虐で慈悲の心がないそして戦いを快楽だと感じている…まるでパパを殺したあいつらのように!そんな奴を私の師匠はこう言います…大バカ野郎と!私は…あなたが元の師匠に戻るまで決してここを退きません!」
そして月夜がティナを庇うように夜真砥の前に降り立った。
「ティナの言うとおりこんなことをしても何も解決はしないわ。マスター、私はそんなことをするためにあなたに戦い方を教えたのではない!夜暁、あなたは今何をしてるの?」
夜真砥は少し黙り、言葉を震えさせながら応えた。
「俺だってわかってるさ…こんなことをしてもあいつらは生き返らない。爺ちゃんの足は元に戻らないことだって。わかんねぇんだよ!今、自分が何をしているのか何をすればいいのか!教えてくれよどうしたらいいんだ…どうしたらいつもの俺に戻れるんだ」
(夜暁そして夜真砥の師匠として私は一つ後悔していることがある。夜暁、夜真砥に戦い方を教えてきたが一つだけ大切なことを教えていなかったそれは…人としての心、夜暁は戦いにのめり込み次第には敵味方から悪魔などと恐れられるようになった。夜真砥はある時、絶望して獣のようになってしまった。もしも私が人の心を教えていたらこの子はこんな気持ちを抱かなかっただろう。夜真砥はまだあの炎の夜に取り残されているんだ。私にはこの子を止めることができない。止められるのはこのバカ弟子しかいない)
「勇者してください」
「勇者…」
「はい、勇者というのは代価など要求しない自分の守りたいモノを守る人のことなんでしょ?いつも夜真砥は何かを守るために戦っていました。サンドリアではそこに住む皆を王都ではサルディア帝国の国民を船の上では船長さん達をそしてこの戦いでは国民を守るために戦っているじゃないですか…だから今も何かを無我夢中で守ってください!」
何かを守るために俺は戦っていたのか…思い出せばそうだ何か大きな事件があれば俺はリリムやジャック、ヒルデを置き去りにして剣を振るってた…ああ、そうか俺はあの炎の夜、皆を守れなかっただから俺は何かを守るために突っ走っていたのか…今はどうだ復讐のために武器を振るってる…情けねぇな。
「ふっ…何か吹っ切れたぜ。ああ、俺もだいぶと落ちたもんだな!ありがとうティナ、月夜」
(師は弟子を見下してはいけない。師というのは弟子に気づかされることもあり弟子とともに成長していくものである。マスター、この子を弟子にして正解よ。異種族でバカだけどあなたの持っていないモノを持っていたわ)
「守ってやるさ国民を!そしてお前の信じた師匠としての俺を守るために」
「はい!」
「なぁんか良い話をしてるようで悪いんだが、こっちはそんな甘ったるい話を聞きにきたんじゃねぇんだよ!決めた決めたよもう決めちゃったもんね。今すぐ、この島の人間、魔族全ての感情を奪ってやるよ!感情なんて異物はいらねぇんだよ!」
「させるかよ!異空間での質問の答えを返してやるよ。詰まらん!感情が生物からなくなれば詰まんねぇな!感情があるからこそ人族は生きとし生けるものは成長していく!そして今、俺は成長した!もう、自分には負けない!」
「何カッコつけてんのかなぁ!神の聖騎士はもう時間切れで使えねぇんだよ!不死者の俺をどうやって殺すんだよ!」
死屍谷の言うとおり神の聖騎士は時間切れで消えている。
もう夜真砥に打つ手はないだが夜真砥は高笑いをしている。
「お前ら下がってろ。本気を出す。巻き込まれても知らねえからな!」
「あのユニークスキルを使うのね!」
「その通り!」
「ティナ、離れるわよ!」
「え、うん」
そういえば夜真砥のユニークスキルって見たことがない。
いったいどんなのだろう。
「スキル全属性耐性強化、魔法耐性強化、耐久力上昇、武器耐久力上昇空気抵抗低下、疾風脚、観察眼、龍王の加護、危険察知、災厄、自動回復、魔眼」
すごい量のスキル言ってる!
「そしてユニークスキル」
やっとユニークスキル言うんだ…あれ?夜真砥がいない。
「なるほど…スキルで速さを強化して逃げたか!」
「夜真砥は臆病者じゃない!」
「ビビって逃げたんだよ!」
「逃げてないわよ。それと右腕どうしたの?」
「右腕?…なっ!?ありえねぇありえねぇ何で切れてんだぁぁぁ!?痛てえよ痛てえよ!」
(幻覚系のユニークスキルか!?いや、この痛みは本物だ!だとしたら)
「うわぁっ!」
死屍谷はその場で回転斬りをした。
「捉えようとしても無駄だ。俺は危険察知でテメェの攻撃を予測している」
「どこにいる出てこい!」
「どこにいる?居るじゃねぇかよテメェの真ん前に」
夜真砥はいきなり死屍谷の真ん前に現れた。
しかも周りには夜真砥が複数人いる。
「分身の術か!?」
「そんな生ぬるいもんじゃねぇよ。これは分身は残像だそして俺もな」
周りに現れた夜真砥は消えてその代わりに死屍谷が全身から血を吹き出した。
「テメェに俺のユニークスキルの正体がつかめるかな?…それとお前、大切なもんとっくの昔に失ってんぞ」
次回はちょこっと昔に戻ります!
十年前の日の本の国に夜真砥が覚醒する瞬間まで戻ります!
それではまた次回の話で!