五十一話 炎に消えた友、炎から生まれた憎しみ
今回は前回の続きではなく二千年前の話をします!
夜真砥が夜暁だったときのお話です!
約二千年前、日の本の国のある陣(日の本の国といってもまだこの時代では日の本の国とは呼ばずに別の呼び方をしていた現在の月影一族、四天王、裏方の当主が治めていた国が同盟を結びそれが日の本の国となった要するに日の本の国は人族の連合国だ。月影一族の国は闇夜の国と呼ばれていた)では数名の家臣や兵が王に長男を任して王が一度、国に帰っていたこれから最悪の悲劇が起こるとは知らず。
「爺、父上はまだ帰らぬのか?」
この少年は闇夜の国第一王子月影夜暁後の夜真砥である。
まだ、十一歳である。
ちなみに三歳年下の零夜というおとなしい次男と五歳年下の深夜という暴れん坊の三男がいる。
「予定では明後日、帰ってくるかと」
この老人は俺に仕えていた、父上が最も信頼している家臣だ。
名前は忘れたことがない武藤茂吉、俺にとって第二の父親みたいな人だった。
「そうか。じゃあ、爺の武勇伝を聞かせてくれ」
そしてよく俺は茂吉の武勇伝を聞いていた。
武勇伝には本当や嘘の話が入り混じっていた。
茂吉は嘘をつくのが得意だったそしていつも俺を嘘で笑わせてくれる。
「喜んで」
そう、いつもなら寝る前に茂吉の本当か嘘かわからない武勇伝を聞いて寝床に入っていたがこの日は違った。
茂吉の武勇伝が始まる前に兵が一人、部屋に飛び込んできた。
「どうした!騒々しい。夜暁様は今からお寝んね時間であるぞ!」
「ご無礼をお許しください!陣の前方に黄泉戦、出現!率いているのは黄泉神死山結です!」
「すぐに兵を集めろ!」
「はっ!」
兵は他の兵士を集めるため急いで陣内を駆け巡った。
だが、黄泉神登場の知らせはすでに陣内に広まっていた。
(なぜじゃ。なぜ、黄泉神が来ている…まさか、殿が帰還していることに気づいたのか!?)
「爺…」
(夜暁様は闇夜の国の跡取り、何かあったら、闇夜の国崩壊の恐れが)
「夜暁様、陣を離れる準備をしてください」
(この命に代えても夜暁様は生きて殿のもとに!)
「逃げるのか?」
「はい」
「爺が言うなら」
俺は急いで陣を脱出する準備をして、裏門に茂吉に手を引かれてやってきた。
だがそれと同時に黄泉戦の攻撃が始まり陣の天井が砲撃により崩れて陣は燃え初めて、門が壊されて黄泉戦がなだれ込んできた。
「夜暁様を守れー!」
「茂吉殿、夜暁様を連れて早くお逃げください!」
兵士は俺を守るために刀を振るう。
己の主君の子を守るためにその身を挺してだが、黄泉戦の攻撃は弱まらない。
しかし、兵士たちは誰一人として倒れていない倒れているのは黄泉戦だけだ。
「夜暁様、行きますよ!」
「でも」
「さあ、早く!」
俺が茂吉の馬に乗ろうとした時、空から砲弾が降ってきた。
いや、砲弾なんてそんな柔なものではなかった黄泉神死山結が空から降ってきたのだ。
「おうおう!テメェらどれだけ時間をかけてんだ!我が出る羽目になってしまったじゃねぇか!」
「お主は!」
「そこの爺、そのガキは闇夜の国第一王子月影夜暁か?まあ、ここにいる奴らは全員、皆殺しだけどなぁ!」
結は持ってきた大剣を振るった。
一方その頃、闇夜の国の陣から少し離れた場所では闇夜の国の王が兵を率いて進軍していた。
実は闇夜の国に帰ったというのは嘘で本当はある人物と同盟を結んでいたのだ。
「殿!夜暁様が居られる陣から火の手が!」
「黄泉神に感づかれたか!」
「そりゃあ感づくでしょ。神の眷属である私と同盟を結ぼうとしていたら」
「お主ならここから何分で到着する」
「すぐにでも着くわ」
「同盟を結んで早速だが頼めるか」
「ええ」
闇夜の国と同盟を結んだ少女は自分よりもはるかに大きな刀を持って赤く燃え上がる闇夜の国の陣へと少女の黒髪と同じくらい黒い闇の中を駆けていった。
場所は戻り闇夜の国の陣
「ほう、我の攻撃を受け止めるか」
「小童が俺を誰だと思っておる!闇夜の国元親衛隊隊長、武藤茂吉様とは俺のこった!」
「爺!」
「夜暁様、早くお逃げください!」
「嫌だ!一国の王子が民を見捨てて逃げてたまるか!」
俺はその場に立ち止まり、武者震いをして言った。
「なんとありがたきお言葉。しかし、このような状況下では夜暁様の身の安全が何よりも最優先です!」
「良い王子じゃねぇか!」
「茂吉殿を助けろ!」
「来るなお前ら!」
兵士が結に斬りかかった瞬間、兵士は命を刈り取られた。
陣はますます炎に包まれて辺り一面、火の海になった。
「そろそろどけ」
「夜暁様、早く!」
「嫌だ嫌だ!」
「早く逃げろ夜暁!」
結は攻撃を中断していったん退いて、再び斬りかかる。
退いたとはいえ、他者から見たら一瞬の出来事である。
無論、茂吉は攻撃を受け止めるがだまされた。
受け止めたのは鞘にしまってある刀、大剣ではまだ攻撃していない。
「吹っ飛べ」
「ぐっ!」
茂吉は横腹を大剣で叩かれて吹き飛んだ。
「そこでよく見ておけ。お前の大事な王子が死ぬ様を」
「止めろおおぉぉぉぉ!!」
結が夜暁の首を飛ばそうとしたその時、天井が再び崩れてそこから刀を持った少女が降ってその攻撃を受け止めた。
「何とか最悪の事態は免れたみたいね」
先ほどの少女だ。
「おいおい!誰かと思いきや月兎じゃねぇか!」
「その呼び方はあまりされたくないわね。私の名は天月夜剣、大月神の元眷属よ!」
現れたのは二千年前の月夜。
俺はあの時、月夜によって助けられたのだった。
「天月夜剣、頼む!夜暁様をここから連れ出してくれ!」
「夜暁様?ああ、今にも小便ちびりそうなこのガキのこと?頼まれたしこのガキだけでも連れ出すわ」
天月夜剣は結を蹴飛ばして夜暁の手を握り裏門から飛び出た。
「嫌だ!爺たちも一緒に!」
「夜暁様、あなた様にお仕えできて私は幸せでした。テメェら最後の戦だ!武士らしく主を守って死んでやるぞ!」
陣にいた侍たちは刀を握りしめ、己の主を守るために結に立ち向かっていった。
天月夜剣は泣きわめく夜暁の手を引っ張りるが夜暁は戻ろうとするので担いで走った。
そして夜暁は運悪く見てしまった茂吉が結に斬られ殺される瞬間を。
しかし、茂吉は夜暁の顔を見て笑みを浮かべ、口を動かして『お元気で』と言い倒れていった。
「うあぁぁぁぁぁ!!」
天月夜剣は黄泉戦の追撃を逃れるためいったん、大木の頂上に身を潜めた。
「天月夜剣」
「なによ」
「強くなりたい。大切な人、民を守れるほど強くなりたい」
「だから?」
「僕を鍛えてくれ」
「それって私に何か利点はあるの?」
「この戦を終わらせる」
「無理ね」
「無理じゃない」
「…わかったわ。でも、その気合いがなくなったら何も教えないから」
「うん」
それから俺は月夜と闇夜の国に戻り俺は月夜の弟子になった。
天月夜剣が闇夜の国と同盟を結んだ噂はたちまち、島全土に広まり各国の当主が闇夜の国と同盟を結び、闇夜の国の当主を総大将とする日の本連合王国いわゆる日の本の国が誕生した。
俺は順調に月夜のもとで修行に励んだがある話が持ち込まれた死山結が病により死亡した。
しかし俺は月夜との約束を果たすためにその頃仲が良くて黄泉の国から亡命してきた元黄泉神最高幹部の娘で後の朧である百鬼と手を組んで黄泉神に戦いを挑んだ。
しかし、俺はあの時、この戦がすでに別の意味へと変わっているのを初めて知った。
改めて二千年前の俺に聞きたい「あんな結末でお前は本当に良かったのか?」と。
はっきり言って俺は後悔している。
場面は変わり、二千年後の夜真砥の部屋
「要するに奴は死を超越せし世界、オーバーワールドにより死なないと」
「ええ、死なない」
「なら俺一人で奴と戦う。犠牲は最小限に抑えたい」
それとあいつに協力してもらうがな。
直接ではない単に話をするだけだ。
「じゃあ、儂は奈落を倒す。奈落の情報を頼む」
「奈落のユニークスキルは空間工作」
「やはり、空間操作系のユニークスキルか」
「うん。でもただの空間操作系のユニークスキルではない。空間を斬りそこを別の空間につなげたりすることができる」
「つまり、どういうことですか?」
「バカティナ、この紙を見なさい」
バカティナは余計です!
「この紙を一つの空間とします。そしてハサミで斬って三枚にして端の二枚をノリでくっつけます。これが空間工作の簡単な説明よ」
「えっと…つまり、元々地面があった場所が川になりそこに橋をかけたみたいなことですか?」
「説明が曖昧だけどそういうこと」
てことは、手で俺の頬を斬ったのは俺の頬の位置の空間、または奴の手がある空間を斬ってたってことか、そして俺の魔法が背中に当たったのは俺の前方の空間と後ろの空間をつなげたってことだな。
頭、使うから嫌いだなこのユニークスキル。
「あとの細かいことはこの紙に書いてあります」
残りを手書きですませやがった!
「じゃあ、最高幹部戦は俺と朧だけで挑む。ちょっとやることあるから二日後ぐらいに出発な」
「やることってなんじゃ?」
「つながるかわからない面倒くさい奴に連絡取る」
まさか、あいつの手を借りることになるとはな。
さて、あいつとは誰なのか?
まあ、アンデッドを倒す方法を知っている奴ですが。
おそらく次回は最高幹部二人と戦うと思います。
それではまた次回の話で!