四十八話 生きて帰ることが最高の勲章
次回から第三章開幕です!
それにしても第二章長すぎだ!
幹部戦、意外な結末を迎えます(`・ω・´)
氷の壁が崩れて分断された二つのエリアが合わさった。
しかし、合わさったとはいえまだ決着はついていなかった単に死悩の魔力が切れて氷の壁を維持できなくなったのだ。
「死悩!」
その証拠に火苦が走り死悩をかばいに行く。
その大きな体で死悩を隠して、しかし、死悩と同じく火苦も魔力がもうほとんどない。
「黄泉神幹部だな」
「その通り、我は黄泉神幹部牛王火苦、死悩だけは逃してくれ!」
黄泉の国にもこんな心を持っている者がいるものだな。
「火苦、私を置いて逃げろ」
「逃げん!逃げるのはお前だ!」
「あのなぁ」
俺があることを二人の幹部に言おうとしたとき後ろから聞き覚えのある声がした。
「夜真砥、お主はそちらにおったか」
「よう、ずいぶんとボロボロじゃねぇか」
「夜真砥、月夜は?」
「あれ?そっちに行っていなかったのか?」
「来ていません。先に帰ったのですか?」
おかしいなぁ…確かに一緒に洞窟に入ったんだが…あ、すっかりあれしたこと忘れてた。
しかも、天井に感じたことのある魔力があるんだが…
天井が崩れてそこから二人の女性が落ちてきた。
「勝手に魔法かけておいて!」
「置いていかないでください!」
そして夜真砥の頭を踏みつけた。
夜真砥はもちろん、地面に転がる。
「すんませんでした!」
そうそう、月夜と心に道がわからなくなる魔法、迷い道をかけたんだった。
「黄泉神最高幹部!?」
そりゃあ驚きますよね。
降ってきたもう一人が元黄泉神最高幹部、悟道心なんだから。
ある意味、魔法かけて正解だったな。
「いろいろあって仲間になりました」
いい加減、二人とも降りてくれないか…。
「嫌です」
「心、もう少し強く踏めと言っているのかこのバカは」
「そうです」
「なら強く踏もう」
「そんなこと考えてないわ!」
夜真砥は自力で立ち上がり二人をのかした。
「ちょっと待て!何で仲間になってんの!?」
「詳しくは帰ってからこいつに聞いてくれ」
とりあえず説明が面倒くさいので。
「裏切ったのは本当だったのか悟道!」
「ええ、今は日の本の国は妖怪です。二度と帰りませんから」
「マスター、トドメさしますよ」
月夜は刀に手をかけた。
だが、俺は月夜の前に手を出して止める。
「マスター?」
「悪いがおいしいところは俺がもらう」
夜真砥は刀を抜いて倒れている二人の前に立った。
そして刀を振るって壁を斬り、伝達を使用した。
「親父、幹部は残りの最高幹部、二人を除いて全て倒した。今から帰還する。そうそう、あのことは…了解、帰ったら説明します」
そして、伝達を止めて後ろを振り向いて歩き出した。
当たり前だが死悩と火苦は斬られてないし死んでもいない。
「全員、帰還するぞ」
「夜真砥、まだトドメはさしていませんよ」
何でまだトドメはさしていないのに帰るんだろう?
幻覚でも見せられているのかな?
「ティナ、お前の目は節穴か?よく見ろ、死んでるだろ?」
「節穴なのは夜真砥の目です!トドメをささないと!」
「ああ、そうだったな」
良かった、 やっぱり幻覚を見ていたんだ。
「これでよしっと」
…ええぇぇぇぇ!!
トドメじゃなくて魔力回復薬を置いた!?
「何のまねだ!」
「あのなぁ、お前らはなんか勘違いをしていないか?俺はな、好き好んでバッサバッサ命を斬っている訳じゃねぇんだよ。そんなに死にたいのなら崖から飛び降りろ」
「私達を生きて帰す気?」
「さっきからそうしているだろ。察しろよ」
「あまったれたことをするな!さっさと殺れ!」
「牛鬼、お前が戦う理由はなんだ。その行動から予想するにそこの雪女を守るためだろ?」
「…それがどうしたというのだ」
「質問変えます。雪女、お前はそこの牛鬼が死んだら悲しいか?」
「悲しい」
火苦は死悩の答えに戸惑った。
まさか死悩がこんなことを考えていたなんて思ってもいなかったからだ。
自分は死悩にとってただの相棒、そんな扱いだと。
しかし、死悩は確かにこう言った『悲しい』、なぜそのようなことを言ったのか火苦にはわからなかった。
「火苦が死んだら悲しい。火苦がいない世界なんてつまらない!火苦はいつも私を笑わしてくれた!励ましてくれた!いつも…いつもそばにいてくれた!それだけで生きる気力がわいてきた!だから火苦を殺さないで!私の大事な妖怪を殺さないで!」
火苦は死悩を助けていた気になっていた。
けどそれは違った火苦は死悩に助けられていたお互い知らぬ間に助け合っていた、かけがえなのない存在になっていたのだ。
「助けていた気になっていたのは俺の方か…どうか命だけは取らないでください!」
「だからさっきから取らんって言ってんだろ!話聞けや!」
「しかし、お主らこれからどうするんじゃ?黄泉の国に戻ったとしても首を落とされるぞ」
「この森で生きていきます。野宿には慣れているので」
「気に入った!次期不知火家当主の権限により二人を保護する!」
「それならわたくしも、神威を脅して保護させます」
今、閃さんむちゃくちゃ恐ろしいこと言った!?
「叢雲家も保護する。妖怪の侍は叢雲家の軍にもいるから」
「それなら儂の方がよいだろう!なんせ鬼神家は妖怪が当主だからな!」
「てなわけでここにいる奴らはお前らの味方だ。その命、落とすつもりがあるのなら、日の本の国第二王子、月影夜真砥が守り通す。バカ弟子、ドS精霊、文句ないな」
「ないです!」
「ないわ、脳天気マスター」
「「ありがとうございます」」
元黄泉神幹部の二人は礼をした。
感謝の気持ちを込め、涙をこらえながら。
「鉢合わせになると面倒だから…はっ!」
夜真砥は魔力の塊を壁にぶつけて奥へと続く大きな穴を作った。
「こっから行け」
「この御恩、いつかお返しします」
火苦と死悩は開けられた穴に入り歩いていった。
死悩が火苦の背中に乗って。
「どっかのバカが言ってたことだけどな!侍にとって大将首を取ることは最高の勲章ではない生きて愛する人のもとに帰ることが最高の勲章だとさ!まあ、困ったらいつでも来いや。ラブラブカップルども」
さてとちゃっちゃと帰るてしますか。
「今の夜真砥の言葉でしょ」
「あぁ?だったらどうした」
「うんうん、カッコいいと想ったから!」
そうかい。
実際には夜暁の言葉だけどな。
まあ、俺なんだが。
俺達は二人を見送ったあと来た道を戻って洞窟の入り口に到着した。
途中で心が仲間になった時にいなかった奴らになぜこうなったのかことの顛末を説明した。
ついでに切れかけた魔力を回復した。
良薬は口に苦しとはよく言ったものだ、マジで苦すぎだ。
作ってる時間がないから市販のものはきついな。
暇があったら作ろう。
「あとは帰還するだけだな!」
「戦争は帰るまでが戦争ですよ」
遠足みたいに言うな!
「そうだ。戦争は帰るまでが戦争だ。特に裏切り者はな」
何だ!
この背筋をいや!心臓を直に触られる感じは!
確実に敵だ!
「悟道心、黄泉神様を裏切ったこと後悔させてあげます!」
しかも二人!
振り返るとそこには岩の上に立っている女の鬼と岩に座って膝に肘を置いている男の鬼がいた。
「遅かった…私を置いて逃げてください」
「イヤです。…夜真砥、お願いします!」
「何もできないバカが威張ってんじゃねぇよ!」
でも、こいつらの相手をできるのは俺しかいないか!
夜真砥は地面に召喚石を叩きつけた。
出てきたのは闇炎馬だ。
闇炎馬は一頭で二人乗せれる、しかし、夜真砥を除いて人数は七人、だが運良く近くに馬が四頭いた。
行くときに使用した馬である。
「月夜、みんなを頼んだ…おいしいところはいただく!」
とは言ったもののとんでもなくマズい飯になりそうだ。
「死ぬなよ。マスター!」
「黄泉神最高幹部、死屍谷累」
「その妻!黄泉神最高幹部、死屍谷奈落で~す!」
「黙れ阿婆擦れ女!ちゃんと名乗れ」
「わかったよ…黄泉神最高幹部、深奥奈落」
「「裏切り者を成敗しに来た。死にたくないならそこをどけ」」
「その申し出、断る!俺は日の本の国第二王子月影夜真砥!俺が生きている限りここは通さん!」
死悩と火苦は幸せになりましたとさ!
後々、登場する予定です。
てなわけで夜真砥、大ピンチ!
二人な最高幹部をどう振り払うのか!
それではまた次回の話で!