四十七話 最弱無双!
今回はあの最弱の弟子が氷属性最強の竜、グレイシアドラゴンと戦います!
ちょいと伏線、入れときました。
朧が天地開闢を放つ数分前、死悩エリアでは夜真砥と紅葉が周りに出現した魔法陣を高速で組み立てていた。
一方、ティナは氷属性最強のドラゴン、グレイシアドラゴンと1対1の勝負を挑んでいた…強制的に。
「あの師匠、後で殺す!」
勿論、かないっこない。
全力で逃げている。
「やれるもんならやってみろ!」
「夜真砥、あんた本当に鬼だな!」
「喋ってる暇あるのか!それ間違えてるぞ!」
「本当だ!」
「0.01パーセントでも間違えてみろ!発動した瞬間、吹っ飛ぶぞ!いいか!100パーセントだ!間違いなく組み立てろ!」
「他にないのかよ!」
「グレイシアドラゴンは生半可な炎では倒せない!だがこれならほぼ一撃で倒せる!この断罪と絶滅の災禍ならな!」
断罪と絶滅の災禍、極炎属性魔法の一つで軍隊を一瞬にして壊滅させるほどの威力を誇っている。
使用者の周りに出現した魔法陣から火山噴火のような炎が噴出、これはまだ一波、二波目はあちらこちらに出現した魔法陣が大爆発そして最後に下から大噴火これにて終わり。
このとてつもない威力を持つ魔法には欠点がある。
一つは魔法発動の時間が長い約五分かかるそして五分以上過ぎると発動できなくなる。
二つ、夜真砥が先ほど言ったとおり0.01パーセントでも間違えたら使用者だけを巻き込み発動、つまり死が訪れる。
三つ、仲間を巻き込む。
四つ、魔力消費量が大きい、なので二人で分担して組み立てている。
例え極のクラスをいく魔法を覚えたとしても決して使いたくないと冒険者は口をそろえて言うこの極をいく魔法はあまりにも危険なため自害魔法の異名を持っている。
「失敗したら死とかどんだけ危険なんだよ!」
「だから教えたくなかったんだよ!帰国するたびにいちいち『夜真砥、極炎属性魔法、教えて』とか言うから今回、仕方がなく教えてやったありがたいと思え!」
そろそろ完成する…あと一つ!
「こんな危険なのありがたく思うか!」
セット完了!
「終わった!次だ!」
夜真砥は一分半で完成させた。
100パーセント完璧に。
「はや!」
「あとはティナを守るための防御結界!」
こっからが本番だ!
それはさて置き…大丈夫だな。
「戦ってみろ!いい経験になるぞ!」
「無理ですよ~!」
でも…やってみる価値はある…かな?
忘れがちだけど私は魔王の娘なんだ!
こんなドラゴンに負けてたまるか!
ティナはグレイシアドラゴンの方に振り向き剣を抜いた。
「月影夜真砥の弟子、魔王の娘、ティナ・キャロル、参ります!」
やる気出したか…お前ならこんな奴に殺されたりはしねぇよ!
「…どう戦おう?」
やっぱあいつアホだ!
「炎属性魔法で戦え!それとヒルデの話を思い出せ!」
「はい!」
そうだ!
ヒルデさんの話にグレイシアドラゴンが出ていた!
グレイシアドラゴンが前足を上げたときは…
「そこから下に潜り魔法を撃つ!」
「あれ?何か変わった」
ティナはグレイシアドラゴンの腹の下に潜り込んだ。
「豪炎球!」
そして豪炎球を放った。
理由はグレイシアドラゴンの腹は唯一、防御が薄いから!
ブレスを下向きに撃とうとしている?
それなら!
「凍りつけ!」
「頭上ががら空きになるからラッシュ!炎属性付与!」
ティナは飛んでグレイシアドラゴンの頭を連続で斬りつけた。
グレイシアドラゴンは予想外の攻撃によりブレスを中断して振り返るだがそこにティナはいない。
「そこだぁぁぁぁ!!」
ティナは天井を蹴り、一気に急降下してグレイシアドラゴンの首に剣を突き刺し降りた。
「あれだけ乱暴な扱いをすれば剣は折れる…折れてない!?」
「驚け雪女、その剣は鉄、ましてや魔物の素材でできていねぇ!世界で最も固い鉱物で五本の指に数えられるアダマンタイトでできてんだよ!」
ティナの装備は全て夜真砥が作り出したアダマンタイト製の武器や防具を身に着けている。
ゆえにそう簡単には折れないし砕けない。
「アダマンタイト!?私、自ら凍らせてやる!」
死悩は凍結の矢を放った。
だが、結界により阻まれた。
「そうはさせるか!ウチの弟子の晴れ舞台だ!おとなしくしとけ!」
「ありがとうございます師匠!」
「暴れてこいバカ弟子!」
「あの防具、何かいろいろと細工してあるでしょ?」
「よく気づいたな。足の部分には速度、防御、攻撃強化の付与、腕は防御、攻撃強化の付与、上半身には重要な臓器中心に防御強化の付与、まあ、いろいろと細工してある。耐久性の向上、緊急時のバリア等もな。これから鎧ではなく服みたいな動きやすい防具にしていく予定だ。アダマンタイトも止めて魔物の素材とかに…そんなことより終わったのか?」
「あともうちょい」
「早くしろよ」
やっぱし動きにくそうだな。
服の案はやっぱり採用だな。
しかし…あんなに強化したっけ?
何か俺みたいな動きしてないか?
それに一瞬だけ違和感が…まあいいか。
地面に着地した瞬間、ティナは再びグレイシアドラゴンの腹の下に潜り込んだ。
今度は魔法を撃つためではない足を斬るためである。
やっぱり硬い!
「師匠、まだですかー!」
「紅葉、待ち~」
「急かすなよ~!」
もう少し時間を稼がなくちゃ!
グレイシアドラゴンが尻尾を振るう。
尻尾は地面をえぐりながらティナに襲いかかる。
だが、ティナは尻尾の付け根に飛び移り剣を背中に突き刺した。
わずかだが鱗に隙間が生じていたのだ。
「外がダメなら内側をやれ!」
あの時の俺のやり方ね。
さて、魔力が保つのかな?
「豪炎球!」
ティナはグレイシアドラゴンの内部で豪炎球を作り出した。
グレイシアドラゴンは今まで受けたこともない攻撃に困惑してティナを振り下ろそうとする。
だが、ティナは必死でしがみつく、振り落とされないように鱗を掴み踏ん張る。
「倒れろぉぉぉぉ!!」
グレイシアドラゴンの背中が爆発!
その衝撃でティナは落とされ地面に叩きつけられた。
「…やれグレイシアドラゴン!」
グレイシアドラゴンと前足で踏み潰そうとする。
ティナは衝撃により動くことができない!
「完成だ夜真砥!」
「防御結界発動!受け取れティナァァァ!!」
間一髪、ティナに防御結界が張られた。
そして紅葉と夜真砥の周りに目にも留まらぬ速さで回転する魔法陣が出現した。
「「極炎属性魔法!断罪と絶滅の災禍!」」
そして炎が噴出!
魔法は成功した。
炎がグレイシアドラゴンを包み込む。
そして容赦なく二波目が発生!
周辺に出現した魔法陣が爆発そして大地から炎が噴出!
先ほどの氷の空間とは違って全く正反対の炎熱の空間が現れた。
それはまさに地獄絵図、炎が敵を飲み込み勢いを増す。
死悩は運良く、夜真砥の結界に守られてダメージはない。
しかし、死悩は雪女、結界の内側にいても熱によるダメージがくる!
外に出たら確実に死ぬ!
その証拠にグレイシアドラゴンまとっている氷が一瞬にして蒸発していく、やがて炎は少しずつ鎮火、しかしまだグレイシアドラゴンは生きている。
「まだ足りないか!ティナ!起きろ!こいつでケリを付けろ!」
ティナは力を振り絞り立ち上がる。
そして夜真砥の前に炎の塊が現れた。
断罪と絶滅の災禍の残りカスを集めているのである。
「数多の罪を焼き尽くす終焉の業火を汝に託す!汝、その力を用いて眼前の罪を滅せよ!極炎属性付与!!」
夜真砥の手から放たれた炎の塊はティナの剣に付与された。
剣は刀身から炎が噴き出してまるで火山そのものを武器にしたようにも見える。
ティナが今もし、『私は魔王の娘だ!』と言ったら説得力はかなりあるだろう。
「踏み潰せグレイシアドラゴン!」
師匠が託してくれたこの想い…無駄にはしない!
死んではいないけど。
「我流剣技!」
「俺の力も借りてるから合技だ!」
じゃあどう言おう…よしこれだ!
「師弟合技!」
何じゃそりゃ!?
「龍王の業火!」
ティナは剣を地面に叩きつけた。
すると剣先から龍の形をした炎が噴き出てグレイシアドラゴンに直撃!
炎はそのままグレイシアドラゴンを飲み込んで灰にしながら死悩に襲いかかる。
死悩も負けずと全魔力で氷の盾を作り抵抗する。
やがて炎は大爆発を起こして消えた、その衝撃で氷の盾は砕け散り死悩は倒れた。
「…やった…やった勝ったー!」
ティナは喜び飛び上がった。
だが、着地に失敗して尻餅をついた。
魔力がもうスッカラカンなのである。
「良くやった!」
「もう、戦闘は無理です~」
「魔力回復しておけ」
夜真砥は魔力回復薬をティナに渡した。
「ありがとうございます」
「ティナちゃん、不知火家の門下生にならない?」
紅葉はティナに飛びついた。
「どっちかって言うと俺の力だろあれ」
「私も頑張りましたよ~」
「…そうだな。今回は良くやった!ほんの少し成長したな」
「これでもほんの少しですか」
「当たり前だ。グレイシアドラゴンなんか秒で倒せ秒で」
「いや、無理だろ。夜真砥、ぐらいだ」
うん、紅葉さんの言うとおりです。
「だったら俺みたいになってもらう」
「…じゃあとりあえず頑張ってみます!」
今日はティナがほんの少し成長した日となった。
そしてほんの数秒後に後ろの氷の壁は斬られて分断された。
朧の天地開闢が放たれたのである。
第三章がやたら長いので残り一話で第四章突入します!
第四章はこの戦争の裏の話!そして残りの最高幹部との激突!意外な奴の意外な行動!そして正体不明の黄泉神が正体を現す!
それではまた次回の話で!