三十九話 戦場に赤き花咲く友の血で虚空を仰ぎ涙を流す
このタイトルは二十五話裏方登場に出てくる夜真砥の短歌です。
この短歌に込められた意味が今回の話でわかります!
「本当に私達だけで戦闘をするですか~」
現在、私達は再戦することを敵に伝えるためとある場所に向かっていた。
戦争を始める前はこんな事はしないが停戦をして再び再開する場合は伝えに行くらしい。
ようわからないけど要するに『戦争始めるけど準備良いですか?』と聞きに行くんだと思う。
「ああ、神威、兄上を除く次期当主と神威の代行で閃、そんで俺とティナと月夜だけでやる。父上達は国に残ってもらった」
いくら何でも私達だけでやるのは無謀だよ~。
「いくら言っても無駄よ。月影家の人間は代々、犬死にを嫌っているからね」
「基本的に戦争はしない平和主義国家、しかし、国のためならその身を犠牲にしてでも護り通す意志がある」
「決して崩れることのない日の本の城塞そのもの」
そろそろ見える頃だと思うのだが…
突然、夜真砥は舌打ちして森の入り口で止まった。
「夜真砥?」
「話し合いは俺と月夜、朧、紅葉、雫の五名で行う。残りは待機だ」
「もしかして黄泉神!?」
「それよりかはましだが幹部が四名来ている」
「そんな大勢で何の用があるですか!」
「さぁな、俺の首でも取りに来たんじゃね?」
その後、少し進んで門の前に到着した。
「何ですか、この大きな門」
これは初めて見たな…鳥居だよな?
絶対、岩戸家が造りやがったな。
造りからして五百年ほど前か?
「黄泉の国の近くには来たことない」
気がついたら連華がニヤニヤしながらこっちを見ていた。
「夜真砥でも知らないものあるんだねぇ」
「どうせお前の家の建造物だろ。神社が近くにあるのか?」
「鳥居だけど鳥居じゃない。鳥居はこっからは神様の領域だと示すものだけどこの鳥居は別の意味で建てられた」
「どういう意味だ?」
「こっから先は命を落とす場所、引き返すのなら今だぞってね」
物騒なもの建てたな。
かなりの大きさだぞ。
「要するに地獄の門ってとこか?」
「鬼は居ないけどね」
「鬼ならおるぞ」
確かに朧は鬼だけどそういう意味じゃない!
「じゃあ、ここで待ってろ」
さて、気を引き締めて行きますか!
俺はティナと別れて敵と会議をする場所に到着した。
そこは周辺の地形よりややへこんでおりまるで隕石が衝突したかのようになっている。
そこには地面を埋め尽くすように彼岸花が咲いていた。
「彼岸花の境界線」
「さすがにそれは知ってるんだ」
「有名だろ。日の本と黄泉の境界線、神話でいうところの黄泉平良坂」
「そこには彼岸花が群生しておる。原因は不明」
懐かしいな…元日の本の国の陣。
「マスター、奴らはもう来ているわ」
予想通り、黄泉神幹部が四名居るな。
あいつを置いてきて正解だ。
「日の本の国の使者、月影夜真砥だ」
「儂は黄泉の国の使者、草煙茶総じゃ」
ぬらりひょんか。
「封書を受け取ろうか」
夜真砥は茶総に封書を渡した。
書いてある内容は『これからお前らの王の首を取りに行く』とそう書かれているだけである。
そして夜真砥も茶総か封書を受け取った書かれていた内容は『遠慮なくかかってこい月影の小僧』と夜真砥達が黄泉の国に攻めにいくことがわかっていたかのような内容だった。
「確かに受け取った。それと一つ書き忘れたことがある」
「何じゃ?」
「身だしなみは整えとけ。落ち武者のような首を持って帰るのはイヤだからなってな」
「貴様こそ身だしなみを整えて来いよ」
二人の使者の受け渡しは終わって幹部はこの場を去っていった。
「ふーっ、終わった終わった!」
「何で挑発したんじゃー!」
「何となく」
「何となくそんなことをするな!」
「へいへい、今度からは気をつけます」
「お主、反省してないじゃろ」
してませんよ~!
これからもどんどん挑発していきますから。
「何もなかったなし日の本に戻りましょ」
「悪いが先に戻ってくれ」
「何で?」
「休憩」
「あっそ、勝手に攻めに行かないでね」
それは良い考えだな!
疲れるだけだからやらないけど。
夜真砥は紅葉達を先に戻らせて月夜と二人だけで彼岸花の境界線に残った。
「あの時の短歌ってこの場所のことを詠ったんでしょ?」
「ああ…戦場に赤き花咲く友の血で虚空を仰ぎ涙を流す、これはこの場所で起きた戦の歌だ」
「これは彼岸花じゃない。動物の血で咲く鮮血の薔薇、二千年前にここで死んでいったマスターの戦友の血で咲いた花」
「虚空を仰ぎ涙を流すは俺の無力感を表した部分だ。あの時、俺はお前に助けられて陣を抜け出して友を見殺しにしてしまった」
俺はあの時、11歳になったばかりだった。
だから朧はこの場所を知らない。
元日の本の国の陣、そして俺が初めて黄泉戦に遭遇して敗れて強くなることを誓った場所、月夜に初めて合った場所でもある。
その頃はまだ日の本の国の名前はない。
日の本の国は複数の国が集まった国家なのだ。
「…死ぬ気じゃないわよね」
「死ぬかよ…だがこのくだらない二千以上も続く戦争を終わらせる。俺はそのために転生したのかもしれない」
「マスター、準備もあるしそろそろ」
「行くとするか」
俺は彼岸花の境界線から立ち去ろうとしたとき一面に咲く鮮血の薔薇の花びらが風に乗り散った。
それは俺の周りを囲み視界を覆った。
「何だこれは」
俺は腕で花びらが目に入らないようにして風が止むのを待った。
すると風が止んだ時に馬のひずめと甲冑がぶつかり合う音が聞こえた。
先ほど俺はみんなを先に帰還させたはずだ。
月夜は甲冑など暑苦しいものは着ない常に着物を着ている。
「…爺や」
俺の目の前にはあの時の戦で死んでいった戦友そして俺に仕えていた老人が居た。
「鮮血の薔薇はまれに栄養分として使用した者の血からその者の蜃気楼を作ることができるって図鑑に載っていたけど本当たったのね」
いや、これは蜃気楼じゃない。
「夜暁様」
「喋った!?」
「ここは黄泉平良坂あの鳥居ができたことにより生者と死者の境界線ができたんだ」
だが、ほんの一瞬だろう。
「すまなかった…俺は無力だった自分だけ生き長らえてしまった…しかもまた新しい生を…すまない、謝ってすむことではないと思っている」
夜真砥はその場に崩れ落ちて涙を流した。
「夜暁様、その命、無駄にしないでください。必ずやこの戦争を終わらして平穏をもたらしてください」
「ああ」
(まるであの歌のようね。古戦場に散っていた友の血で咲いた花が死者をほんの一瞬だけ呼び戻してその主はその場に崩れ落ちて無力な涙を流す…あの時、助けた弱虫のガキが私のマスターになるとわね)
「必ずやこの世に平穏をもたらす。お前たちも共に戦ってくれないか」
「私達は常に夜暁様のそばに居ますよ。夜暁様、お元気で武運を祈ります」
そう言うと戦友達は空気に溶け込むように消えていった。
「月夜」
「わかってるわよ」
「「超全力で叩きのめす!」」
俺は戦の準備をするために闇炎馬に乗って日の本に帰還した。
「あ!夜真砥だ!遅かったね!」
言葉は相変わらずこんな状況でも笑顔を撒き散らしているな。
まあ、それがこいつの良いところだけど。
「考え事してたんだよ」
「何考えていたの?」
「どう攻めるか」
少人数で攻めるから回復薬は必ずいるそういう準備は万端だがまず班が決まってない。
「全員集合!」
俺は黄泉の国に攻め込むメンバーを召集した。
「班、決まったのか!」
「作戦変更…ヒットアンドウェイならぬキルアンドウェイに変更だ!」
「キルアンドウェイ?」
「要するに殺して逃げるってことです」
「誰を?」
「そりゃあ黄泉神幹部に決まってるだろ」
「マジですか!?」
「その方が効率がいい」
確かに良さそうだけど。
「さっさと行くぞ。山岳地帯に幹部二名が黄泉戦を率いて陣を張ってやがる」
「何でそんなことわかるんですか?」
「会ったときに魔力を記憶して片っ端からサーチした。他の奴は洞窟内にいる」
何でもありか!
やっぱり夜真砥って無茶苦茶だ!
「転移の穴なんてめんどくさい魔法は使わんから馬で行くぞ」
闇炎馬の召喚石どこに入れたっけな…あった。
「夜真砥のお馬さん、変わってませんか?」
「鎧着させただけだが?」
「ずいぶんとゴッツいですね」
「まあな…一つ聞くが」
「何ですか?」
「お前、馬の乗り方とか知らんよな」
「知りませ~ん」
さすが箱入り娘、一般のお嬢様とは全然違うな。
乗馬の仕方ぐらい教えてもらっとけ。
「じゃあ俺の後ろに乗れ」
「夜真砥の後ろに!?」
闇炎馬にまたがりティナに後ろに乗るよう命じたときになぜかティナ以外の女子共に驚かれた。
「何か文句あるのか」
「ないけど夜真砥ってねぇ」
「あれだからなぁ」
何か隠しているな。
「雫、何か文句あるのか?」
「率直に言うと夜真砥の馬に乗ると毎回酔う」
「そんなに荒いか?」
自覚は無いけど荒いのかな?
「荒い」
「じゃあ、朧の馬にでも乗れ」
さてと出陣しますか!
「今さら何ですけどここまだ壁の内側ですよ。馬に乗るのは早いのでは?」
「闇炎馬をなめるなよ」
そう言うと夜真砥は闇炎馬で壁を駆け上っていった。
「乗らなくて良かったでしょ」
「…はい」
これは夜真砥に後で聞いた話です。
闇炎馬は山岳地帯や絶壁に住んでいる召喚獣なので壁を走ることはお茶の子さいさいだそうです。
召喚獣も反則すぎてす!
次回からは黄泉神幹部とバトル!バトル!の連続です!
チートキャラ夜真砥は黄泉神幹部を倒すことができるのか!
相手にもチートキャラいるので簡単にはいきませんが、それではまた次回の話で!