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勇者の弟子は魔王の娘?~魔王になれなかったので勇者の弟子になります!~  作者: 寅野宇宙
第三章 日の本の国で波乱万丈大冒険!
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過去語り 一匹の野良猫のシンデレラストーリー③

今回は恋のキューピットが出てきます!

皆さんの知る人物で~す。

そういえばこの話、長寿キャラ多いなぁ。

 鈴音が夜叉の護衛となり早二年、現在日の本の国は黄泉の国と久々の戦争状態となっていた。

 …と言っても、


 「夜叉、規模小さくないか?」


 「そりゃあそうだバカな幹部が単独で攻めてきているんだから。それも倒して今は残りの者を倒してる」


 刀捨てて拳で戦うバカだったな。


 「バカだな」

 

 「それさっき俺が言った」


 戦争と言っても俺まったく動いてないし、誰か攻めてこないかなぁ…こいつを試せるいい機会なのに。


 夜叉の手には美しく光る黒い剣が握られていた。


 「夜叉、バカ一匹こっちに突撃してくる」


 よっしゃ!

 

 「試し斬りだ!」


 「覚悟しろ月影夜叉ぁぁぁ!!」


 突撃してきた妖怪は刀を振るっただが刀ごと夜叉に体を斬られて上半身だけが夜叉の後方に飛んでいった。


 「いい切れ味だ…天月夜剣(あめのつくよのつるぎ)


 握られていたのは月夜こと天月夜剣、今は夜真砥の相棒である月夜であった。

 夜叉は戦いの前に祖父から譲り受けたのであった。


 「精霊を物扱いしないでください」


 「やっぱ喋るのか」


 これはうるさくなるな。


 「喋ります」


 天月夜剣は精霊の姿になった。


 「このチビ誰?」


 「どうも、月影一族二代目当主の戦友、天月夜剣こと精霊剣の月夜です」


 「要するに月影の伝家の宝刀」


 「ふーん、で、このチビ使えるの?」


 やけに喧嘩腰だな。


 「先ほどのカス同様の死に方したいの?」


 「上等!」


 「喧嘩するな!」


 あれだ。

 多分、精霊剣が本当の護衛だと勘違いしてるのだろう。


 「わかりましたよ主」


 この時の月夜は使用者のことをマスターと呼ばずに主と呼んでいた。

 マスターと呼ぶようになったのは夜真砥と異国の地に降り立った頃からである。


 「この小娘、あれね」


 「何か言ったか月夜」


 「何も言ってませんよ主」


 その後、戦は終わり夜叉達は城に戻ってきた。


 「汗かいたから風呂だ風呂!」


 夜叉は戦終わりの風呂が大の楽しみとしている。

 これが十八歳の少年の趣味なのである。


 「何も風呂場の入り口で仁王立ちしなくても」


 「夜叉が風呂に入っている間、くせ者が近づいてこないか見張ってるのだ」


 そもそも、風呂場の入り口以外のどこに待機していろと?

 私は女だ男湯には入れない。


 「主の背中、流してきたら?」


 月夜は少しにやけながら鈴音に聞いた。


 「アホかぁぁぁぁぁ!!わわわ私は女だぞ!何でやや夜叉の背中を流さなければならないんだ!」


 (わかりやすい反応)


 「あんた護衛でしょ?何なら身の回りのお世話ぐらいしても良いんじゃないの?」


 「そんなの女官どもがする!」


 「それじゃあ女官の誰かに主をとられるわね」


 「今の話と何の関係がある!」


 月夜は鈴音の前に出て鈴音の顔を指した。


 「あんた主のことが好きなんでしょ!三時間ぐらいしかあんたのこと見てないけど主と一緒にいる時のあんたの目、輝いていたわ!」


 私が夜叉のことを好き?

 そりゃあ友達としてはいい奴だと想っているけど。

 てか、そもそも、


 「友達としてだろ?」


 「あぁ~、最近の不良はそんな事も知らないのか、愛の方の好きよ!」


 「えっ…えぇぇぇ!!私が夜叉を愛してるぅぅぅ!?」


 「うん、絶対そう」

  

 何なのそれ!

 確かに夜叉はカッコイいと想うけどそれは無い!

 あれでもこれって、


 「絶対違う!絶対違う!そんなの絶対に無い!あんな奴のことなんか私は」


 (顔、真っ赤にしてオロオロしているから全く説得力が無いんだけど、そうだ!)


 「主、もう出たの?」


 「えっ!?夜叉、これはその…あれ?」


 (良いわねこれ!超楽しい!)


 「テメェ、ミンチにするぞ!」


 「とにかくあんたは主に恋してるそれだけは確かよ!あんたの想いがマジなのならその恋、手伝ってあげる!」


 風呂場のドアが開いた。 


 「騒がしくてゆっくり入れねぇ、何かあったのか?」


 夜叉が風呂から出てきた。


 少し、髪が濡れてるけど何かキラキラしてて良いなぁ…何考えてんだ私!


 「おっお願いします!」


 「ラジャー!」


 「何が?」


 「夜叉には関係ない!」


 「そうか」


 でも余計に気になるんだが。


 こうして月夜の不良娘恋愛大作戦が始まったのであった。


 「作戦一!あんたのたゆんたゆんの脂肪をフル活用する!」


 たゆんたゆんの脂肪?


 「ちょっと胸元が見える着物で主を悩殺!」


 胸のことかよ!

 確かに年の割にはあるけど。


 「そんな恥ずかしいの絶対に無理!」


 「恋に無理は不用!当たって砕けて星になれ!」


 「星になったら意味がなぁぁぁぁい!」


 この精霊、私の嫌いなタイプだぁ~。


 「とにかくチャレンジ!レッツゴー!これ着なさい」


 「マジかよぉ~」


 というわけで第一ラウンド開始!


 「夜叉、休憩したらどうだ?」


 鈴音は少し前かがみで夜叉にお茶を出した。

 しかし、夜叉は無言で受け取り鈴音をじっと見つめた。


 こっち見てるよ~。


 「お前、顔赤いぞ。風邪でもひいたのか?」


 「へっ?」


 「それにその服、何か寒そうだし着替えてこい」


 「わっわかった」


 鈴音は月夜の所に戻った。


 「無視された」


 「主、鈍感すぎ」


 何のためにやったのか。

 

 「あいつはこれでデレデレになってたんだけどなぁ」


 「あいつって?夜叉のことか?」


 「違う違う、二十代目の主が」


 とんだスケベ野郎だな!


 「それよりこんなのどこで知ったんだ?」


 「二十代目が私を遊郭に持ってった時」


 とんだ変態野郎だった!


 「大変だったんだな」


 「雌がうるさかったから寝てたけど…気を取り直して作戦二!」


 「よっしゃこい!」


 「料理の腕を見せつける!」

 

 ほう…それは内容からして、


 「無理!」


 「何で!」


 「料理は超苦手だ!」


 「為せば成る!実行しろ!ちょうど三時だし」


 それはやる気の問題じゃないと思うんだけど。


 ということで第二ラウンド開始!


 「できた」


 「大福?」


 鈴音が作ったのはあんこ入りの大福である。


 「おやつ」


 「なるほどね」


 (でも、確か調味料を…ま、いっか!)


 「夜叉、大福作ったぞ」


 鈴音は夜叉の部屋に作った大福を持っていた。

 偶然にも火焔と紫電がいた。


 「鈴音が?珍しいな!」


 「ちょうど三つあるじゃん!ほれ、火焔も食えよ」


 紫電が火焔に大福を渡した。


 「ありがたく頂戴する!」


 (この二人はヤバい!)


 白夜とともに雷音寺、不知火の家に行き、二人の性格をなんとなく理解していた月夜は反射的にこの二人が鈴音に対してマイナスの存在だと感づいた。


 「この大福」


 「味が…」


 (やっぱり気づきやがった!)


 「とりゃあー!」


 月夜は火焔を投げ飛ばし紫電を蹴飛ばして隣の部屋にぶち込んだ。


 「何やってんだ月夜!」


 「虫がいたので!」


 何かこの状況ヤバくない!


 「失礼しました!」

  

 鈴音は部屋から立ち去った。

 なお、月夜は窓から地上に飛び降りて部屋から脱出したのであった。


 「大丈夫かお前ら」


 「ああ、何とかな…何で俺だけ蹴るんだ」


 「それより夜叉、お前こそ大丈夫か?」


 「何が?」


 「何がってあの大福、砂糖じゃなくて塩が入ってたんだぞ」


 そうだったのかでも、


 「塩あんびんじゃないのか?」


 ((ああ、なるほど。こいつ塩あんの方が好きだったな))


 夜叉は普通のあんこより塩あんの方が好きなのである。

 塩あんびんとは、砂糖の代わりに塩を使った大福である。


 「やっぱり塩だった~」


 「ある意味天才ね」

  

 (さて、次の作戦どうするかなぁ)


 月夜が次の作戦を考えていると夜叉が一階に降りてきた。


 「見回りしに行くぞ」


 王族は国民との交流がてら見回りをしている。


 「了解」


 夜叉は見回りのため城下からかなり離れた工場地帯にやってきた。


 「懐かしいなここようたまり場にしてた」


 「そこでついたあだ名が工場猫」


 「それを言うな」


 「そういえば何でいちいちあだ名に『猫』が付くんだ?」


 前から聞きたかったことだ。

 

 「それはこれだよ」


 鈴音は懐から鈴を取り出した。


 「いつもこの鈴を身に着けてるから」


 「なるほどでも何で?」


 そんな事考えたことなったな。

 うーん…


 「何となく」


 「何となくねぇ」


 「主、これって単なる見回り?」


 「感づいたか…これを読め」


 夜叉は着物に取り付けてあるポケットから手紙を取り出した。


 「『月影夜叉殿、そなたに相談事があります工場地帯を進んだ先にある廃工場内で待っております護衛も一緒に』…見え見えの罠ですね」


 「多分、罠だ。でも俺は行く」


 「自警団でも呼べばいいだろ」


 「この字、見覚えがあるんだ」


 ということは夜叉の知り合いか何かか?


 「というわけで到着、来てやったぞ姿を現せ!」


 工場の柱の影から刀を持った一人の男が出てきた。

 夜叉達の知る人物である。


 「あん時の大会の審判!」


 現れたのは鈴音が優勝し夜叉の護衛となった大会の審判であった。


 「黙れ小娘が!」


 様子がおかしいな…やっぱり予想は当たっていたか。


 「何の用だ!」


 「無礼をお許しください。その小娘を護衛にするのは断固反対です!下民風情が夜叉様の身の回りをうろつくなどあってはならないこと!この(わたくし)のような高貴な者を護衛にするべきです!」


 「くだらん!断る!」


 こいつの家系はちょっとした貴族だったっけ。

 まあ、雷音寺から見たら下の下の下だがな。


 「そっちの用はわかった」


 そっちの用?

 まだ誰かいるのか?


 「で、そちらの刀は何者で何の用だ?」


 「アホじゃないの刀が喋るわけ…あ」


 「何よこっち向いて『あ』ってあんな禍々しい者と一緒にしないでくれる?」


 禍々しい者?


 「だんまりか。なら名前で呼ぶから目的を言え!黄泉神幹部妖刀禍闇(まがやみ)!」


 刀が幹部!

 絶対無い!絶対無い!


 「よくぞ見破ったな月影夜叉!」


 ホンマやったぁぁぁ!!

 刀が喋ってる!


 「あの刀何!」


 とりあえず質問だ!


 「妖刀禍闇、黄泉の国側の妖怪が使用すると莫大な力が与えられる感情を持った妖刀、そのため黄泉神幹部に選ばれた。見ての通りしゃべる」


 「じゃあ、あの審判、妖怪なのか?」


 「いや、こっちの人間だ。あの妖刀を黄泉の国以外の者が使用するとあの刀の意のままに操られるんだ」


 「意のままに」


 「まあ、割かしらあの審判の本音が出てると思うがな」


 ほう…今すぐぶっ飛ばす!


 「どうやって見破った?」


 「あの戦の後からだ!何か引っかかっていたんだ!なぜ最後に刀を捨ててあのバカは拳で戦ったのか。あの幹部は偽物だろ?」


 あのバカ幹部は最後に刀を部下に渡して拳で戦っていた。

 戦が終わり戦場を歩いていたがあの刀は見つからなかったつまり、あの刀に何か重大な秘密がある!


 「それでなぜ俺だと気づいた?」


 「単独での戦は黄泉神が最も嫌う戦法だ。なのに黄泉神は一切、この戦を止めにきなかった。それから導き出せる答えはこうだ。この戦事態が黄泉神の作戦だった」


 「作戦内容を言ってみろ」


 「まずは小規模の戦を起こして日の本に『バカが単独で攻めてきている。しばらく戦は起きない』と思い込ませその後、気が抜けた日の本の国にあらかじめ戦に参加させていたお前を侵入作戦にたけている手下を使って潜り込ませどっかの間抜けに握らせ内部から崩壊させる。これが作戦の全容だろ!」


 どうだ王族の頭脳なめるなよ。


 「正解だ!完璧すぎるよ!月影夜叉、やはりお前は殺しておくべきだ」


 「待て禍闇、俺はそんな事聞いてないぞ!俺の願いを叶えるのではなかったのか!」


 珍しいな禍闇に操られてまだ意識が残ってるとは。

 しぶとい奴だ。


 「嘘に決まってるだろ!間抜けにもほどがある!お前の役目は終わった消えろ」


 「待て!うわぁぁぁぁ!!」


 審判は断末魔を上げて死んでいきその体は抜け殻となった。

 その抜け殻に禍闇は乗り移った。


 「良い体だ。とても動きやすい」


 「俺がやる。鈴音は下がってろ」


 幹部を一人でむちゃだ!


 「私も戦う!」


 「王族の尻拭いってやつだよ」


 夜叉がカッコよく見える。


 「こい月夜!」


 「了解!」


 月夜は天月夜剣の姿になった。


 「守ってみろよ!月影夜叉!」


 「日の本の国次期国王月影夜叉推して参る!」


 夜叉は大きく息を吸い、目の前にいる哀れな国民の心をもてあそび国を滅ぼそうと企んだ下劣なやからに怒りの気持ちをあらわにしそう叫んだ。


 


 

  


次回!若き頃の夜叉が黄泉神幹部と激突!

そして鈴音の恋は急展開をむかえる!

次回は二話、同時更新です!

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