百七十一話 寄生虫
偽ベータの本性がどんどん出てくる話です!
ああ、まだ戦いません。
戦闘は次の話でします。
「断る!いきなり喋りやがって撤退命令だと!?侮辱されたまま立ち去ってたまるか!」
「頼む。任せてくれ」
ウィリアムはまるで獣のような目つきで歯軋りをしながらリアムを睨む。
当然、寄生虫はその様子すらも肴にして嘲笑する。
紛うことなき外道中の外道、おそらく奴の死を悲しむの者は誰もいない。
それどころか死を今か今かと待ちわびる者の方が多いであろう。
「ウィリアム、撤退するぞ。あんた俺がギルドに入ったばかりの頃に言ってたよな『冷静さを欠いた者は格好の獲物だ』って。一度、狩人の視線から確認してみろ。どっちが獲物らしい獲物だ?」
「獲物ってこんなの仕留めても喰わねえし。てか生け捕りにして娘の前で殺した方が面白そうだから却下却下」
寄生虫は挑発するために話に割り込むがアーサーは魔法を放って黙らせる。
当たってはない寸での所で交わされたのだ。
「ちょっと黙ってろ蛆虫」
「やったー!寄生虫から蛆虫にランクアーップ!!」
「…そうだな。しくじるなよリアム」
まだ収まらぬ怒りと共に銃を強引にしまってウィリアムは寄生虫に背中を見せた。
寄生虫の始末を完全にリアムに託したのである。
「感謝する」
「ってかさ本気で逃げられるって思ってんのか?覚えてるよな実験のために無駄に生産していた人形共のこと。もう用済みだから魔力爆弾に変えて攻撃させっから頑張って廃棄処理しといてね~。後で殺りにいくから」
「…住民を爆弾に変えたのか!?」
「そ。解除手段なし、チクタクする前にボーンする即爆式のヤツね。要するに見殺しにするしかな~いの」
今まで何もせずに空気のように居たボルクスは怒りで息を荒げだした。
正直言ってボルクスは師匠のガイアと似て直感で動くタイプだ。
故に考えることが不得意で難しい会話には参加しないし、途中からも参加したがらない。
だけど積もりに積もった怒りがその戒めを解いた。
これだけは絶対に言わないと気が済まない。
そんな衝動からボルクスは言葉を発した。
「お前、救いようのない屑だな。生まれたての幼稚な悪意そのものだ。何か俺自身の道徳観が削れそうで言いたくないけど言うわ」
「え?何を言うのかなおバカさん?」
「生きる価値が見当たらない。さっさと死ね」
「…うわっ、超どうでもいい個人の願望ですね。私からの回答を教えましょう!お断りで~す!全力で生きますよ!」
ボルクスの言う『生まれたての幼稚な悪意』という表現は寄生虫に最も正しいものであろう。
悪意だけ持って生まれた者はどんな環境で育っても悪意を極めていく。
そもそも、寄生虫は道徳や人道といった人が決して捨ててはならないモノを知らないのだ。
「無視しろよボルクス」
「当たり前だ。先頭でなるべく全て受けるから支援よろしくな」
「むしろそっちが得意分野だ。で、おっさんは遭遇するまでには落ち着いとけよ。じゃあ、後は頼んだぞ序列四位」
三人はリアムに寄生虫の相手を任せると部屋から出ていった。
「お、マジで逃げたんだ。薄情者だな一人は残れよ面白くない」
「…いや、本能でわかるのであろう。『残れば命はない。巻き込まれる』とな。貴殿とて理解している筈だ。いかに貴殿が強者だとしても我々にはかなわない。そして死には抗えぬ。貴殿の運命はここで終わるのだ」
「で、要するに何?長ったらしいぞゴキブリ」
寄生虫は一蹴りでリアムの鎧を粉々に砕いた。
普通ならこのまま追撃を加えるが寄生虫はリアムの真の姿を見て引き下がる。
先ほどリアムが言った言葉の意味を理解したからである。
奴は正真正銘の怪物、いや、死という概念の塊だ。
「…ああ、外殻が剥がれたのは久ぶりだよ。我々はリアム・アレン、常に生きとして生ける全ての命の傍らで汝らを見守る死である!」
次回!リアムvs寄生虫!
前話にある通りに寄生虫は勝てない前提なのでほぼ無双します。
それではまた次の話で!