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勇者の弟子は魔王の娘?~魔王になれなかったので勇者の弟子になります!~  作者: 寅野宇宙
第八章 悪魔が住みし禁忌領域
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百七十話 偽りなき騎士道と一途の愛

それでは開演。

語るは己の名前すら忘れ去った者の過去である。

なお、会話文はありませんm(_ _)m

物語というより、誰かの記憶という感じなので。

 リアム・アレン、この名は本名ではない。

 グラシエルがリアムを受け入れた時に付けた名前である。

 本名はあったが今は誰にもわからない。

 序列十位以内でシエルを抜いて、最高齢の人物はリリムではなく、リアムだ。

 また、リアムの種族は年齢からして、人族ではなく、長命種のエルフや魔族でもない。

 彼は亡霊、種族ではなく一種の亡者の集合体である。

 それを束ねているのがリアムということだ。

 だが何故、彼は亡霊なのか?何故、ギルドに所属しているのかという謎が残る。

 これを紐解くにはリアムが下界に再び降り立ったことから話さなければならない。




 彼は勇者グロリアが誕生する何百年も前に実在していた人物、彼は一国の騎士団長であり、その国の幼い頃からの友人であった姫様に忠誠を誓っていた。

 それは彼女が隣国の王子と結婚してからもだ。

 彼女は幸せだったけれども当時はお世辞にも平和とは程遠い世界であった。

 そして彼女が嫁いだ王子は争いの渦に巻き込まれていった。

 国を守るために反乱分子を処刑、不穏な国を早急に潰し、国を守ってきたがやり方が悪かった。

 王子は国民の怒りを買ってしまったのだ。

 国を守るため大切な人を戦地に送る。

 国を守るため重税をかける。

 挙げ句の果てにやったことは全て失敗に終わり、全ての責任を大臣達に押し付けるなどといった暴挙にも出てしまう。

 王子は産まれる地位、産まれる時代を間違えていた。

 反乱は失脚した大臣達の言葉で始まり、王子は直ぐに捕らえられて処刑、一方で姫様は騎士が連れ出して難を逃れた。

 王子が頼んだことである。

 だが数ヶ月ほどで敵国に捕まり、新国家となった国へと戻されて、国民の前で処刑、騎士は世界の運命を呪いながら生首になろうとも叫んでたという。

 王子は無論、地獄に落とされ、姫様も罪に加担したとして地獄に落とされた。

 一方で忠誠心を死ぬまで貫いた騎士は天国へ。

 神様が騎士の素晴らしき忠誠心に惚れて、『神に仕える聖騎士にならないか』と誘われたからだ。

 しかし、騎士は『見ていたのなら何故、助けなかった!?貴様等は傍観者だ!それに私の忠誠心は当にあの方に捧げている!論外だ!例え神でも断らせてもらう!』と怒り、何と自ら地獄に飛び降りた。



 天国から地獄に行くと通常では数秒のズレが出るだけだが飛び降りると数十年以上かかる。

 そして落ちている間に騎士はある疑問を抱いてしまった。

 自分は何故、騎士団長の任を譲り渡し、姫の騎士として隣国に行ったのか?

 何故、自分は王の最後の命令に異を唱えず、返答一つで姫を連れ出したのか?

 何故、自分は処刑される瞬間に叫んだのか?

 何故、姫の居る地獄へ飛び降りたのか?

 答えは直ぐにわかった。

 けどその答えは何度も何度も何度も拒絶をし続けて受け入れたのは地獄に降り立った時だった。

 騎士は姫に恋していたのだ。

 それは姫も同じであった。

 姫は『自分をどこか別の地へと連れ出してほしい』、『国の道具ではなく、あなたの家族になりたい』と願っていたのだ。

 地獄に降り立つと騎士は持ち前の行動力や交渉術で姫がどの階層に居るのか突き止めて、救い出した。

 だが姫は生前の姿をかろうじて維持している状態であり、ただれた皮膚からは蛆がわき、慣れてしまったが臓物が外側に出ている。

 それでもなお騎士は『今度こそあなたのそばを離れない。何人たりともあなたに指一本触れさせない』と誓い口づけをした。

 騎士と姫は何百年も連れ添った。


 一方で天国では何百年も騎士が『そこら辺にうじゃうじゃ居る女という生き物のために地獄に飛び降りたのか?』と話されていた。

 しかし、人の気持ちがわからない天国の連中にはわかる筈がない。

 故に神様は大天使グラシエルにこの答えを見つけるよう命じた。

 流石の天国一の頭脳と呼ばれたグラシエルも困り果てるだろうと思われたが何とグラシエルは答えを知る者を知っていたのだ。

 それは下界の様子を天国の湖から監視する任を与えられていたシエルであった。

 そしてシエルはグラシエルに謂いて曰わく『それは忠義などではなく愛ですグラシエル様。下界に生きる者はある特定の者に言葉では表せない感情を注ぐのです。故に彼の騎士は自ら地獄へ飛び降りたのです。己の内に秘めていた想いを伝えるために』と。

 これを聞いた天使や神様は急いで騎士と姫を地獄から救うよう命じる。

 シエルの答えを聞いて、五十年の月日が経った頃に地獄の端で、死霊に取り憑かれながらも仲むつまじくお互いを抱き寄せている骸骨と騎士を見つけ出した。


 天使達は急いで騎士と骸骨を天国に連れて行ったが騎士は地獄に長く居たため、多くの穢れを纏っており、天国に悪影響を与えること知る。

 天国に穢れを持ち込むことは無論、御法度。

 直ぐに騎士は地獄に送り返さなければならないが天国の者達には罪悪感があった『我々が人の気持ちをわかっておれば、この夫婦はこの様な運命にはならなかった』と。

 天国の者達は悩みに悩んだこの騎士と姫をどうするか?

 そこで騎士から提案があり、こう言われた『私を下界に戻してください。彼女が愛した世界をこの身で守りたいのです』と。

 だが天国の者達はこう返した『何故、あなたは下界に戻る?その姿で戻ったとしてもあなたは下界の住人に恐れられるであろう』と。

 確かに騎士は死霊や姫の魂と一体化して、もうこの世の者とは思えないほどの異形な姿に変貌している。

 けれども騎士は何の迷いもなく『彼女と決めたことだ。喜びはあるが恐れはない』と言う。

 これを聞いた天国の者達はこの提案に異を唱えることなく、一つ返事で承諾した。

 数年後、下界に降りる準備ができ騎士は聖なる力を込められた武具を纏って、グラシエルと共に下界に降り立った。

 彼が下界に降りた理由は騎士の行動のサポートと騎士に付いた穢れの監視である。

 そして騎士は勇者グロリアが魔王を討った後の世にできた冒険者ギルドに入り、姫と共に世界を守る旅に出た。 



 この騎士が後のリアム・アレン、遥か遠き日の時代に一途の愛と忠誠を貫いた世界の守護神である。

 もちろん、グラシエルはグランドマスターになったとさ。

 ちなみにタルタロスが造ったのはグラシエルである。

 さて、ここで話を戦闘に戻すがリアムが自分達だけで戦うことを宣言したということは寄生虫を世界の害悪として定めたからだ。

 要するに本気を出したリアムに寄生虫は勝てない。

グラシエルとリアムは昔からの協力者です。

友という関係ではありません。

ちなみにリアムの本来の名は決めておりません。

設定上、『名は誰からも忘れ去られた』なので。

それではまた次の話で!

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