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勇者の弟子は魔王の娘?~魔王になれなかったので勇者の弟子になります!~  作者: 寅野宇宙
第八章 悪魔が住みし禁忌領域
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百六十九話 抗いの結果

今回はベータの過去を紐解く話です。

まあ、ついでに他の二人の過去も話しますがね。

「ここなら少しばかり、時間を稼げる」


「というか何の部屋だここ」


 四人が逃げ込んだのは大きさには似合わず車椅子が一つだけ置いてある部屋だった。

 無性に寂しげがあって、何故だかその車椅子を見るだけで胸が締め付けられる感覚に陥ってしまう。

 

「車椅子か?…ウィリアムのおっさん、この部屋でどれほど自由に動ける?」


「普段の半分、またはそれ以下だ。攻撃頻度も落ちるし、使えないと思ったら作戦から切り捨てろ」


「いや、俺も同じようなものだ。回復職なだけで一般の冒険者と変わらない」


 この四人はそれぞれ近距離職と遠距離職と二人に別れているため、一度でも作戦が瓦解すると立て直すことが難しくなる。

 なので四人は追撃せずにこの部屋に逃げ込んだのである。

 

「というか何で車椅子だ?あの野郎、どこか怪我でもしてたのか?」


「いやいや、あんな馬鹿げだけ身体能力を持ってる奴が車椅子を使うほどの怪我を負うか普通。それよりも何で車椅子だけ置いてあんだ」


「…考察は後だ!車椅子、後方の壁!来るぞ!」


 ウィリアムとボルクスが車椅子についてそれぞれの考えを話し合っていると車椅子の後方の壁が粉々に砕け散ってベータが現れた。

 立て直す前に戻ってきたほぼ想定外の出来事である。


「その車椅子、創造主が使ってたヤツでね。二百年ほど前に殺したんだ」


「親も同然な奴を殺すとか外道か貴様」


(ボルクスが車椅子の近くに居てくれて助かった。ウィリアムのおっさんさえ戻ればギリ立て直せる)


「…外道、確かに私はそう罵られても仕方がない。だがやりたくてやった訳じゃない!貴様等にわかるか!?無理矢理、体を乗っ取られ喋ること意識することのみを残された」


「何百年も操られているのか…」

 

「…今でも夢に出るよ。創造主を殺す瞬間がな。まずは首を絞めた。けど彼女は何とか逃げたが下半身が動かせないので車椅子で逃げるしかない。故に転かした。そして馬乗りになり、滅多刺しさ。お前らにわかるか!!創造主をこの手で無理矢理、殺させられる気持ちが!!…死のうとしても死なせてくれないんだよこいつは」


 ベータは自分に起きた出来事を攻撃の手を止めて、話し出した。

 そして一同は過去にそのような残酷な出来事があったのかと驚愕する。

 ベータの気持ちを理解する者は居ないと思われたがウィリアムが口を開く。

 彼もまたベータと同じことを味わった者である。


「わかるぞベータ!俺も妻を家に残して、娘と出かけて帰ってた時に妻が魔物に殺される瞬間を見て絶望した!怒り狂った!あの時、出かけなければ妻を守れたと何度、後悔したことか!」


「…わかってたまるかよ今更。早く殺してくれよ」


「ああ、望み通りにお前の能力を凌駕して殺してやるよ。あの世で創造主と仲良く暮らせ」


 互いの思いをぶつけたウィリアムとベータ、それを呆然と眺めるアーサーとボルクス。

 また、大声が止むと空間に甲冑が擦れあう音が響いていることに気づく。

 リアムがゆっくりと車椅子の方に歩み寄っているからだ。

 歩み寄るとリアムは車椅子の前に跪いて、騎士がお姫様の手の甲にキスをするような行動をした。

 そしてリアムはこの世の者とは思えない声で叫びだした。

 まるで地獄から響き渡る裁きの音、天国から響き渡る祝福の音のような表現しがたいどんな感情で表していいのかわからない音だ。


「同情するなウィリアム。奴は偽物だ」


「「「…リアムが喋った!?」」」


 三人は突然の出来事に驚きを隠せなかった。

 しかし、リアムの声は複数人が同時に喋っているようにも聞こえる。


「君、ベータが創造主を殺めた瞬間に侵入した人格だろ?」


「流石に怒るよ。証拠もなしにそんな戯れ言を」


「戯れ言じゃないわ。ベータはスーツなんて着ないぶっきらぼうな不良少年よ。口調は『俺』、そして私のことは『創造主』じゃなくて『お母さん』って呼んでたし」


 ベータは無論、リアムの言葉を否定する。

 だかリアムは雰囲気を一瞬に変えて、何と女の人の声を出し始めた。

 決して無理に作ってない正真正銘の女声である。


「ええ!?リアムって女性なの!?」


「ちょっと黙れボルクス!」


(何だこれは!?リアムの奴は夜真砥と違って不気味なオーラを醸し出していたがそういうことか!…リアム・アレンは幾つの魂で構成されてんだ!?)


「そうだぜ」


 そして今度は口調が荒い男声になった。


「俺はなそんな堅苦しい言葉使いはしないな!被害者を演じ狙撃手の感情まで弄びやがって…。いい加減、醜い正体を現せよ寄生虫野郎!!」


「…なるほどなるほど君って亡者の声の代弁者なんだね。ああ、そうかそうかこれはこれは手違いが起きたな」


「本当なのかおい…!」


 自分の感情を弄ばれたと知ってウィリアムは怒りで体中を震わせながら銃口をベータに向けた。


「落ち着けおっさん!理屈はわからんがリアムは正しい!奴は『意識すること喋ることのみを残された』と言った。ホムンクルスも構造上は人間だ。意識しないでどうやって複雑な思考実験を行えるってんだ!何より殺し方が変なんだよ!何故、恨みもない奴を滅多刺しにする!乗っ取られる前のベータは操り人形のような状態だったんだ!それに今の状況だって変だ。何故、先ほどまで間髪入れずに襲いかかってきた奴が何もせず俺らと喋ってんだよ!」


 アーサーは自分なりの推理をウィリアムに伝えた。

 当然、ウィリアムは必死でそれを否定する材料を探すが既に弾丸を放っていた。

 だが寄生虫は苦しそうに嘲笑い、弾丸を叩き落とす。


「アハッアハッ、ギャハハハハ!!ウヘハウヘウヘヒヒヒヒ!!もう無理、我慢の限界!やっべぇ今世紀最大のお間抜けさんじゃんね!嘘とも知らずに自分のくだらねぇ過去をペラペラペラペラ喋るとかバカなのおっさん!つーかたかが一人の人間だろ?何でそんなに悲しむの?時間の無駄無駄。…はぁ、予定変更だ。テメェら瞬殺してやるよ」


「腐れ外道が!!」


 ウィリアムは何発もの銃弾を寄生虫に浴びせるが一発も当たらない。

 魔法で防がれているのではなく、冷静さより怒りの方が勝っているからだ。


「ウィリアム、怒りで我を忘れた者に怨敵の命は奪えぬ。ここは私に任せてくれ。…奴はどんなモノにも代え難い絆を崩壊させた。尊厳ある命を弄んだ。よって我は奴に地獄へと招待する!」


次回は少し話は逸れてリアムの過去を語ります。

要するに過去語りですわ。

ちなみに会話文はありません。

それではまた次の話で!

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