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勇者の弟子は魔王の娘?~魔王になれなかったので勇者の弟子になります!~  作者: 寅野宇宙
第二章 チートキャラは王都魔法闘技会に出場してください!
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17話 帝国の真実

前書きは特にないですね…。

今回は大会後の余韻的ね話です。

 気が付くと俺は身に覚えがないのにベッドで寝ていた。

 恐らく優勝商品を受け取る直後に魔力切れを起こして気絶したからだろう。

 そこら辺は朧気だが記憶に残っている。

 それにしても重いな…。

 何か布団の上にあるのか?


「起きろ!」


 俺は布団の上に寝てた何かに拳骨を落とした。


「痛い!」


 掛け布団の上でツクヨが寝ていた。

 道理で重たい訳だ、ツクヨの体重は…おっとこれは止めとこ。


「おはようございますマスター」


「何でここで寝てんだ!」


「寝るとこがなかったので」


「ティナのベッドは?それか剣に戻るか…」


「両方とも嫌です」


 …俺も二人が諍いを起こすの嫌なんだけど。

 まあ、関係は徐々に良好になると願っておこう。

 そんなティナなんだが勢いよくドアを開けて泣きじゃくっている。

 

「ヤマト~!」


「心配かけたな。でも、そう簡単に死にはしないから安心しておけ。さて、王宮の図書館に行くぞ。ちょっと調べなきゃなんねぇことができたからな」


 俺達は王宮を出る準備を済ませてメイドの案内により王宮の巨大図書館にやってきた。

 数年前に来たことあるが相変わらずデカいな。

 この感じだとまた増築を繰り返したな。


「この本棚の本を全部机の上に置いてくれ」


「『アルジア大陸の歴史』?何でこの大陸の歴史を読むんですか?しかも全部」


 この大陸はアルジア大陸と呼称されている。

 大陸の中で三番目あたりの大きさをしている。


「全部だ」


知識の泉(ちしきのいずみ)を使うんだ」


 知識の泉(ちしきのいずみ)、高速で本を読んだり、知識を溜め込むスキルだ。

 しかし、溜め込んだ知識は三日ほどで消滅するので本当に緊急時にしか役に立たない。

 さてと取り出した本に浮遊(ふゆう)念力(ねんりき)を付与して全ての本を同時に高速で捲る。

 こうすれば知識の泉(ちしきのいずみ)をフル活用できる。


「違うな…これも違う…。この大陸財政危機多いな…。こんな魔物いたのか…。うん?なんだこれ魔法だな」


 ヤマトはある頁の一部に偽装魔法が施されておるのを発見した。

 それを解除して今度は手に取って長々と読み込んだ。


「これだ!」


「何を見つけたの?…『アルジア大陸王族家系図』?」


「嘘だろ…じゃあまさかこの大会は…何やってんだ!?こいつ本当に王族か!」


 ヤマトが激しく本を閉じた。

 かなり怒っている。


「魔法で何かしてるように見えたけど何したのマスター」


「この国の真実を炙り出した…。バトラー!!ふんぞり返ってそこで待ってろ!」


 ヤマトが転移の穴(ワープホール)を開いて何処かに転移した。

 私とツクヨさんは戸惑いながら転移の穴(ワープホール)に飛び込んだ。

 転移先ではヤマトが怒号を上げていた。


「何発かぶん殴らせろ!バトラー!」


 ヤマトがバトラー陛下を殴ろうとしていた。


「ヤマト、何やってんの!?」


「止まれ!」


 ヤマトはバトラーの周囲で待機していた騎士に槍を向けられる。


「よい!下がれ!」


 だがバトラーは護衛の騎士を下げた。


「ヤマトどうしたんじゃ?」


 玉座の間の隅からギルドマスターのネレウスが出てきた。


「どうやらこの国の真実を掴んだらしい」


「そうか…。どうするんじゃ?」


「ヤマト、そなたが辿り着いた、この国の真実を申すがよい」


「ヤマト、この国の真実ってどういうことですか!」


「ジュダの家名だよ。あいつは王国の関係者だったんだ。で、その家名はバトラーと同じサルディアだ!何故ならバトラーの実弟だからな!これはどういうことだバトラー!」


「…十年前の話だ」


 そう言いバトラーは昔話を始めた。

 その年は確か…サルディア事変が起きている!

 王都が崩壊しかけた大規模クーデターだ!


「余には優秀な弟がいた。とても優しい弟だ。次期皇帝とも言われていたほどだ。だがある日、そいつはクーデターを引き起こした。理由は『この生活に飽きたから』だ。何とか無事に鎮圧をして余は弟を国外追放した。それがジュダ・サルディアだ」


「そしてあんたは自分の弟を大会のルールに則り監獄に入れようとした!要するに、この大会はジュダを牢獄に入れる大会だった!違うか!」


「ああ、あっているとも」


「…いくら相手が悪くても兄弟よ。慈悲はないの?」


「気が済むまで殴りたまえ!余は正しいことをしたまでだ!」


 俺は拳を振り上げて全力でバトラーの顔を殴った。

 周りの騎士がまた槍を向けようとするがバトラーはまたそれを下げさせる。


「何が正しいことだ!実の弟を公には公表せずに牢獄に入れることがお前の正しいことなのか!?他に方法はなかったのか!」


 ヤマトはバトラーの胸座を掴み聞き出そうとする。


「ないな!あんな化け物、被害を出さずに捕まえることがお主にできるのか!犠牲を出して奴を捕まえることがお主の正しいことか!それこそ愚案だ!」


 俺はバトラーに何を言っても無駄だと思い手を離した。

 長年の付き合いだが今回ばかりは賛同できない。


「王宮の鍛冶屋借りるぞ。夕方にはこの国を出る」


「好きにしろ」


「ヤマトよ…そうムキになるなよ」


 ヤマトは転移の穴(ワープホール)を使わずに扉から出て行った。


 扉が閉まった後に分かったことだがバトラーは泣いていた。

 恐らく、本心では『他に何か方法はなかったのか』『十年前に弟をなぜ止めれなかったのか』、そんな事を考えて泣いているんだろう。


 玉座の間を出たヤマト達は庭にある鍛冶場にやってきた。


「さてとアダマンタイトの加工をしますか。ティナ、あっちいってろ。それとお前の剣置いていけ」


「はーい」


 さあ、道具も用意したことだしアダマンタイトを剣にするか。


「まさかあの豚がゴミ虫の弟だったなんてね」


「ああ、そうだな」


「でも、マスターも少し怒りすぎじゃない?」


「そうだな」


 ツクヨへの弁当が雑になっているのはヤマトがアダマンタイトを切断して溶解炉に入れているからだ。

 アダマンタイトは最高峰の硬度が特徴のため切断にすらも様々な技術を要する。

 更には剣を作成するための分量を調整しながら切断しなければならない。

 そのため外に意識を向ける訳にはいかないので自然と返答が雑になってしまうのだ。


「ちゃんと返答して」


「ツクヨもあっちいってろ」


「…わかりましたよ。…久々に再会したんだし近くに居ても」


「…何か言ったか?」


「何でもないわよ!マスターのばーかばーか!ゴミ置き場で野垂れ死ね!」


 不機嫌になったツクヨは怒りを撒き散らしながら王宮に戻っていった。

 だがヤマトは彼女が何故、怒ったのか理解していない。

 何故なら剣を作成しながら考え事をしていたからだ。

 自分がもしバトラーだったらどうしていたのかを。

 軍を出して捕らえようとしたか、話し合いで解決しようとしたか、そんなことを考えた。

 だが最終的には何かしらの方法で誘き寄せる。

 そして捕縛というバトラーと同じ方法に納得してしまう。

 例え名案があってもそれをできるのか、捕まえるのは実の弟、そんなことできる筈がない。

 バトラーは心の何処かで悲しみ同時に自分の不甲斐なさを痛感していたに違いない。


「…うん、完成だ。…残りは防具にしてやるか」


 ヤマトが剣を完成させて次は防具の作成に移ろうとしていた。

 その同時刻、サルディア帝国の北端の山の牢獄で一人の老人が別の牢獄に護送されようとしていた。

 護送される牢獄の名前はタルタロス、S級以上の犯罪者や危険人物等が収監される絶対脱獄不可能な巨大監獄である。

 そこで言い渡されるのは終身刑、だがそこで五年生きたものは殆ど居ない。

 理由は超危険な魔物が牢獄内を彷徨いているからだ。

 そんなタルタロスは天使が管理している。


「さっさと乗れ!」


 護送する騎士が老人を無理やり馬車に乗せる。


「光栄に思えタルタロス行きだ」


「精々、頑張って生きることだな」


 護送する騎士は四名は全員ベテランである。

 まあ、行き先がタルタロスなので当然だ。


「大会準優勝者でも犯罪を犯してたらこうなるわな」


「ハッハッハ!そうじゃなタルタロスが楽しみだわい!」


 老人は快晴の空に向かって大声で笑った。


「おい!タルタロスに連絡してこい」


「はっ!」


 一人の騎士が後輩の騎士にタルタロスに護送の連絡するように命じた。


「元気じゃのう…。後輩かね?」


「お前に教える義理はない」


「ところで騎士さん、儂の身動きを止めたければ両足も縛っておけ」


 老人は馬車から飛び降りて近く騎士の首に両足を絡み付けた。

 そして器用に体を強引に倒させて起き上がりの反動で首を折った。


「…そこを動くな!!」


 もう一人の騎士は老人に槍を向ける。

 だが老人は先に倒した騎士の剣を足の指先で掴んで持ち上げて体を捻るように跳び跳ねる。

 老人に槍を向けていた騎士の首は地面に落とされた。

 

「たっ助けてえぇぇぇ!!」


 三人目の騎士は老人から逃走した。


「騎士が逃げるとか恥ずかしいのう」


 今度は素早く足を前に突き出して握っていた剣を背中に突き刺した。

 そして運が良いのか悪いのか致命傷を免れていた。

 然れども劣勢には変わりない。

 老人は突き刺した剣に乗って傷口を強引に広げて絶命させた。


「先輩、連絡しておき…」


「それはご苦労様」


 電話をかけ終えた騎士が戻ってきた。

 だが血の海に変貌した光景を見て即座に逃走する。


「うわぁぁぁぁ!」


 けど老人は騎士を逃がすまいと前方に飛び出して蹴り倒す。

 次いで騎士の頭に足を置いて立ち上がれないようにした。


「お前さん、儂の手錠の鍵持ってないか?」


「持っていたとしても渡すか!」


「そうかぁ…。仕方がない死体漁りをするか」


「わっ渡します!だから助け」


 老人は容赦なく騎士の頭を踏み潰した。

 恐らく初めの騎士を倒した時から魔法で身体能力を強化していたのだろう。


「…しかし、これぐらいの手錠は壊せば問題ないな」


 老人は力を入れて手錠を壊した。

 この者、騎士を倒さなくても脱獄は容易かったのだ。


「…さて、定刻通りではないが始めるとしよう」


 老人はボロ布を被ると山を降りて街の中に入っていった。

 以上、老人はたった数分程度で悲惨な現場を作り上げた。


さてさて、脱獄した老人は誰でしょうか?

ではまた次回に。

  

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