百六十六話 ベータ討伐作戦
ベータ戦開幕!
支配者討伐作戦が開始されて数秒後、ベータ討伐組は当初、攻め込む予定であった巨大な塔の前に転移した。
ウィリアムの目論見は当たっていたことになる。
「まさかウィリアムのおっさんの目論見が当たってるとはな。流石だと言いたいが…その肝心のウィリアムのおっさんはどこに行った?」
何故か転移して早々にウィリアムはこの場から消え去っていた。
「ああ、転移する前にアルファに別の場所に転移するよう頼んだらしいっすよ」
「別の場所って?」
「さあ?そこまで詳しくは聞いてないので。何せ盗み聞きでしたから」
どうやらウィリアムは別の場所に転移したらしい。
なのでアーサーは内心で少し苛ついている。
というのも無口なリアムとどう見ても脳筋ボルクスとベータが居座っている部屋まで移動しなければならないからだ。
まあ、リアムがあまり喋らないというか会話に参加しないので脳筋ボルクスが何度も何度も質問してくるのが癪に触るのである。
リアムには会話に参加できない理由があるのだが。
「ふーっ、アーサーの坊主には悪いがおっちゃんは無闇に目立ちたくないんでねぇ。何せ後衛を任せてる立場なんでね。『なら暗殺者に転職しろ』って言われそうだな。さて、三人は…」
ウィリアムは三人が転移した塔から少し離れた塔の屋上に転移した。
理由は遠距離からベータを狙撃するためである。
そしてスコープを覗き込んで三人の様子を確認する。
「おお、ちょうど入ってったな。さて、ボス戦に入るまでに準備でもしときますかねぇ。気配遮断、防音結界発動っと」
一方で三人は何事もなく順調にベータの元に向かっていた。
それを奇妙に感じたボルクスがアーサーに意見を訊こうとする。
「なあ、おかしくないか?」
「そうだな。リアム、いったん止まってくれ」
『了解』
「…誘われてるな。『遠慮なく来い』ってか?」
そう順調に彼らは進んでいるのである。
あれほどの監視システムを組み込んでいたベータが彼らの侵入に気づかない筈がない。
また、気づいたのなら撃退するために最初にこの地を訪れた際に現れたあの無機質な鉄の塊を送り込んでくる。
なのに彼らはそれに一切、遭遇せずに順調に進んでいるこれを『誘われている』と言わずに何と呼ぶ?
それに、
『何か来たよ』
「地点高速移動装置か。もう、自分から『誘ってる』と言ってるようなモンだぞ」
『乗る?』
「…普通なら乗らねぇな。けど乗るぞ。警戒は怠るなよ」
一方で地点高速移動装置に三人が乗ることを確認したウィリアムは直ぐにスコープで見て後を追う。
地点高速移動装置は最上階あたりで停止した。
「相手の人数は?」
『一人だけ。このまま直線で進めばぶつかる』
「リアム、先行してくれ。ボルクス、リアムの後ろに張り付け。俺は遅れて行く」
二人はアーサーの指示通りに動き出す。
ボルクスをリアムの後ろに張り付かせた理由は万が一、迎撃用の罠が発動した場合、リアムの盾でボルクスを守らせるためである。
ボルクスは近接戦闘に対応したタイプなのでアーサーのように遅れて行けないのである。
そしてリアムの言う通り、ベータが窓際に立っていた。
「…やあ、やっと来てくれたんだね。私を殺してくれる人よ」
窓際に立っていた男は見た目は二十代後半でガンマとは違いタキシードを着ている。
戦えそうな見た目ではないがリアムの背後からベータを確認したボルクスは師匠であるガイアに似た何かを感じていた。
(あいつ、温厚そうだがかなりの実力者だ。何となくだが魔法での戦闘はしてこないだろう)
「言われなくてもぶっ殺してやるよ!」
「アーサー!?遅れて来いよ!」
ベータとの戦闘が始まると思いきや突如、『遅れて行く』と言っていたアーサーが二人が着いて数秒もしない間に爆弾をベータの足元に投げつけた。
「というかやったのか!?」
『それあんまし言わない方が良いよ』
「これは驚いた!君、そんな物騒な物をいきなり投げないでくれよ」
『ほらね』
ベータは何と服すら焦がさずに無傷で崩れかけている床に立っていた。
(爆弾が爆発すると寸前で自ら窓を割って脱出して戻ってきたな)
「さて、さっきので死ねたら楽だったのに。ああ、不便だねこの体は。じゃあ、早急に私を殺せよ」
特になし_| ̄|○
それではまた次の話で!