百六十四話 開錠
さて、何が開錠するんでしょうか?
それはそうとシエルが魔法を発動させます!
シエルを守りつつガンマと戦うソフィアに限界が近づいていた。
身体的限界ではなく精神的限界である。
ガンマ、一人の戦闘能力、耐久力はたいして高くはないが人数が一人で相手するには限界の量となっている。
故に精神的限界、例え身体がまだ限界ではないとしても『この数では負ける』と心で思っている。
また、敵を殺しても死なずに増えるという逃れられない連鎖もある。
けれどソフィアは自分を奮い立たせるために叫んだ。
「まだよ!この世から貴様を消すまで私は死ねない!不倶戴天よ!もっと力を寄越しなさい!」
「無駄さ。僕は死なない」
「そう死なない」
「死なない」
ガンマは言葉でソフィアを倒そうとするがいくら言葉を発してもソフィアを止まらない。
そしてソフィアは喋り続けるガンマを殴る。
「うるさい!拳技百鬼繚乱!!」
襲いかかるガンマを次々と目にも目にも留まらぬ速さで敵を打ち砕く百鬼繚乱で倒す。
辺りに血や臓物が巻き散らかる中、シエルは目を開けた。
「ソフィア!後は任せて!」
「はい!」
ソフィアはシエルの合図を受けると足場を砕いた後にシエルの後ろに下がった。
シエルが放つ魔法に巻き込まれると思ったからだ。
けどシエルが放つ魔法はこの場に居る全員を巻き込むがガンマにしか影響は及ばない。
不死者、それは半永久的に動く者、それに近しいのは決して消えぬことなき存在、ならばその存在を支えるモノを消せばよい。
シエルは魔法の構築のためにこれほどの時間を要したのではない。
ガンマをあるモノに仕立て上げるために要したのである。
「神の信託を告げる者!天からの執行者!ありとあらゆる罪を裁く者!大天使シエル・セラフィムが我らが大いなる父と母から賜りし言葉を告げる!喜べガンマ!貴様を神に昇華する!」
神!?今、あの天使、神って言った!?
確かに世界中の神話の中には人から神になった者は居る。
けどあいつを神にした時点で何の意味もない!
いや、神にすればガンマを倒せるのだから…。
もしかして!
「あんたガンマの存在を言葉通り消す気なの!?」
「なるほどそれなら倒せるわね」
「どういうこと?」
どうやら朧とソフィアはシエルがやろうとしていることを理解したらしい。
しかし、雫はまだ理解できていないようだ。
「僕達を神にしたら倒せる?おかしいこと言うね僕」
「そうだね僕。神になったらもっと究極の生物、いや、究極の存在になれるのに」
「確かに神は死ねないよ。けどある意味『死んだ』と同じ状態にすることができる。じゃあ、死ぬ準備はできた?」
ガンマ達はシエルの不適な笑みを見て後退りした。
不死者なのに自分が今から『死ぬ』という感覚に襲われたからだ。
頭では理解できていないのに本能が理解している。
そしてシエルは詠唱を開始した。
「閉ざされし理想郷の門、廃り果てた天上への門よ!再び開錠せよ!その先はかつての理想郷、ただ過ぎ去りしあの日の残滓のみが残る世界」
さらに詠唱開始と同時に空間が光る。
「何なのこれ!?」
「空間構成魔法よ!」
「故に何も無き虚ろの世界、全ての事象から切り離された世界なり。…ごめんなさい。また、あなたを汚してしまうわ。けど死なない者を殺せる場所はここしかないの」
シエルは詠唱が終わる直前に誰かに謝罪した。
その誰かはシエルの謝罪を受け止めたのか一同を光で飲み込み招待する。
誰かとは廃れた理想郷、遠い昔、神々が住んでいた今は閉ざされし場所、神の時代を終わらせた世界である。
「…あれ?場所が変わっている」
一同の目の前に広がったのは木々や草花が生い茂り、水の流れる音が聞こえるだけの世界であった。
「空間構成魔法じゃない…。私達を別の空間に転移させた」
(というかこんなの魔法じゃない!)
「汝の名は理想郷。ようこそ神殺しの楽園へ。ここは神代が終わった場所です。また多くの神々が眠る墓場」
詠唱を終えたシエルはただ泣いていた。
「ガンマは神になった。そして神が消える方法は忘れ去られることです。あなたは誰からも信仰されていない。故に殺すことができます。また、ここは先ほど説明した通り、神殺しの楽園。信仰を無くした神なら必ず殺せる場所でもあります。…では神殺しを始めます」
シエルは涙を拭うと一人のガンマを両断した。
今まで通りならガンマは二人に増えるはずがガンマは増えなかった。
不死者ガンマが初めて死んだ瞬間である。
次回!ガンマ戦、長引かなかったら決着します(-ω-;)
今の段階ではまだわからないのでσ(^_^;
それではまた次の話で!