百五十三話 人気のない街
北組です!
今回はある人が感情を高ぶらせます!
喜びではなく悪い意味で。
「で、おじさん達、どこに向かってんだ?」
「ああ、師匠曰わく『仲間と離れたらとりあえず内部に進め』ってことで合流目的で中央と向かっている」
「宛になるのか?誰もいなかったら解体するぞ」
「物騒なこと言うなよ…」
現在、北組はリアムを先頭に中央に向かって歩いている。
ウィリアムは背後の警戒、アーサーはバイタルチェック、ジャックが地図を見ながら。
(師匠は島の南側出身で北側の地図は曖昧だな。書いてあるのは地形、出没する魔物だけ。そしてこの先は未開の地、師匠ですら内部の状況は把握できていない)
ジャックは溜め息を付いて地図をしまい盾を構える。
「警戒を高める。この先から地図が使えなくなるから」
「じゃあ、おじさんがついでに書いてく?」
「良いんですか?」
「ああ、こんなの狩りの常識よ。知らない場所は地図書いて生息している獲物を書く」
ウィリアムは銃を背負って画板と大きめの紙を取り出した。
どうやら常時、こういう道具を持っているらしい。
一方で先行していたリアムは足を止める。
『ウィリアムさん、双眼鏡ありますか?』
「ああ、スコープのことね。あるけど魔物でも見つけたの?」
『前を見たらわかる』
「ドラゴンかな?どれどれ…」
ウィリアムはスコープを覗き込んで遠くを見た。
すると直ぐに目を離して手で擦った後、また覗き込む。
ウィリアムが見たものは魔物ではない。
けど魔物よりもっと恐ろしいモノである。
「なあ、ジャック」
「はい、何でしょうか?」
「お前、ギルドに黙ってこの島に支部でも建てたのか?」
「いやいや、こんな瘴気まみれの危険地帯に何で支部なんか。それに支部は建てる気ないですし法は犯しません」
「じゃあ、何だよ。このスコープで覗いたバカげた景色は!?アルカデミアの街の一部がこっちに転移したってのか!?」
ウィリアムは困惑しながらジャックにスコープではなく双眼鏡を渡した。
ジャックもウィリアムと同様の反応をした後に驚く。
三人が見た光景はアルカデミア島に建っている縦に長い建物であった。
しかも誰も住んでないと国際ギルドが断言していた島に建っていた。
ウィリアムの言葉を聞いたアーサーはジャックの反応を見た後に舌打ちをして何やら小さな魔導具を取り出した。
周辺一帯の瘴気の濃度を測る魔導具である。
そしてジャックに近づいて瘴気を遮断するための魔導具を強引に奪いジャックに命令する。
「何するんだ!?返せ!」
「おい!ジャック!深呼吸しろ!」
「深呼吸?…わかった」
ジャックは言われた通りに深呼吸をした。
「体調は?」
「…うん?何ともないけど」
「何で気づかなかったんだ!?ああ、この無能が!!腹立たしい!…何かあるぞこの島!瘴気がない!全くだ!下界の空気と大して変わんねぇよ!」
そしてアーサーは医者として気づけなかった自分を責める。
先ほどから何もせずにずっとメディカルチェックをしていた真っ先に瘴気がないことを気づけたはずの自分を。
「ウィリアムのおっさん!人は見えるか!」
「ああ、ちらほら見えるぞ」
「わかった。ジャック!俺が今から指揮を取るが良いな!?」
「えっ?」
突然のアーサーの言葉にジャックは余計に混乱する。
あれほど指揮を取りたくないと言っていたアーサーが自分から指揮を取ると言い出したからだ。
「良いな!?」
「あ、はい」
しかも荒くれ者の傭兵の如く脅し気味で。
ジャックは押し負けて指揮権を譲った。
そして直ぐさまアーサーは街の近くに移動させた。
「で、どうした急にやる気だして」
「ああ、ちょっと胸糞悪くなってな。…門がないってことは結界でも張ってるな」
「…侵入脱走を防止する結界だね。なら一部、解除して入れる」
「やるなジャックの坊主と言いたいがリアムの旦那に先を越されたぞ」
リアムは気配を絶ち結界の一部に穴を開けていた。
一応、序列四位なのでたいていの魔法に対する知識は持っている。
『急いで急いで』
「あっそ」
一行はリアムが開けた穴をリアム同様に気配を消して通り抜けて街に入った。
そしてアーサーは考えていたことが現実になったのか歯ぎしりをしている。
「おい、どうした?さっきから様子がおかしいぞアーサーの坊主」
「医者からの一言だ。こいつら人間じゃない」
次回も北組の方です。
もちろん、ミイナのこともありますしこの街の住人は作られた人です。
ああ、アルカデミアの建物とはビル群のことです。
それではまた次の話で!