14話 反撃の刃そして閉廷
準決勝後編!
シエルVSヤマトの試合、さあ勝ってハデスと戦うのはどっちだ!
「終わりです!ヤマト、天に召されなさい!」
正義執行が地面に着弾と同時に光と爆音が会場全体を覆い尽くす。
そして観客の視界と聴覚を一瞬にして奪い去った。
爆風によって生じた煙が晴れ闘技場内が見えるようになった。
当然だがヤマトが立っていた場所は崩落していた。
「実況判定を」
勝利を確信したシエルが地面に降り立った。
「勝者シエ」
「ちょっと待てよ実況」
ミスターナレーターが判定を下そうととした瞬間に崩落した所から声がした。
「なんで無傷でいるのよヤマト!」
シエルが怒り混じりの声を上げる。
ミスターナレーターの判定を止めたのはヤマトだった。
それも無傷の姿であの魔法から生還したのだ。
「これは失礼しました。ヤマト選手無事です!試合続行!」
「なんで無傷かって?それは…確かこの辺に…あった」
ヤマトは不適な笑みを浮かべ服の中に隠していたペンダントを取り出した。
「それはまさか魔導具革命の誓い!!」
「正解だ!相手の放ってきた魔法の魔力を吸収して自分の魔法を強化する魔導具革命の誓いだ!」
「しかし、それは一度でも使用すると吸収してきた魔力を全て放出してしまう。でも、あんたは水竜の息吹きを使った後も私の魔法を斬ったりして…。ああ!!」
シエルはヤマトの策にまんまとハマっていたのだ。
ヤマトは水竜の息吹きを使用してから魔法を一回も使用していない!
そしてシエルは先ほどの違和感にも気づく。
「まさか浮遊を使わなかったのも!…いや、それよりもいつ出したのよ!そんな素振りなんて一度も…。まさか最初の大掛かりな魔法はこのために!?」
「当たり前だろ。火竜の衣を着用するための条件をワザと作ったんだよ」
ヤマトの作戦を説明するとこうだ。
最初に火竜の衣を着用するために自分をも巻き込む広範囲の炎属性魔法を放つ。
そして衣と同時に革命の誓いを首に掛けて素早く服に入れて隠す。
ここまでが第一作戦だ。
「じゃあ、水竜の息吹きを詠唱で使ったのは…」
「そう。お前にこの作戦を悟らせないため」
これがヤマトの第二作戦。
どんな魔法でもいいから詠唱してから使用する。
詠唱は底上げされた魔法の威力をごまかすためだ。
仮に無詠唱ならば詠唱した魔法と同威力の魔法になっていただろう。
「なんとスゴい作戦だ!シエル選手はヤマト選手の掌の上で踊らされていただけなのか!?」
「終わるのはお前だシエル」
シエルは動揺して後ろに退く。
だが突如として地面に倒れ込んだ。
「倍増した重力!?」
「お前、昔から自分にとってヤバい状況になると後退するからな」
「まさかこれも!」
「第三作戦、シエルの昔からの癖を信じろ!」
これがヤマトの最後の作戦だ。
シエルの背後に無属性のトラップ魔法重力強化を展開させておくことだ。
何度もシエルと交戦していたからこそ気づけた癖である。
「異議あり!」
シエルは専用防御魔法異議ありを使用した。
これはどんな高威力の魔法でも一度なら防ぐという能力を持っている。
「だが所詮は正面に張る魔法だろ!!」
(何度も戦ったし普通はバレてるよね!?けど移動しようにも動けない!どんだけ魔力を込めたのよ!ありえる可能性からして広範囲魔法!避けなきゃ負ける!)
「汝の息吹は世界に幕を下ろす!遍くは幾千の煌炎!響き渡るは安寧の晩鐘!日輪と代わりて天空に座する者よ!」
(というか詠唱してるんですけど!?何なの!余計に倍増させるつもり!?)
「大いなる怒りを引き連れ来訪せよ!月光豪雨!!」
月光豪雨、上空から闇属性の光線を大量に降らす無差別広範囲魔法だ!
観客席には当たらないよう闘技場のシステムが働いてるから安心してシエルだけを狙えるな!
まあ、こんぐらいで転移されるような柔な鍛え方はしてないだろ。
「…表現できないほど強烈な攻撃でしたね。ミスターナレーターさん」
「リコ君、半分ぐらい引いてないか?…いや、それよりもシエル選手は無事なのか!?」
月光豪雨によって生じた砂埃が晴れてうつ伏せで倒れているシエルが現れた。
反撃できないように全力で残った吸収魔力を使い押さえつけているからな。
「降参で~す。さすがにこの状態からの反撃は無理ですよ~」
「勝者ヤマト選手!!」
準決勝第二試合はヤマトの勝利で幕を閉じた。
そしてヤマトは敗者であるシエルに近づく。
「で、まだティナに関して何か言うか?文句があるなら試合関係なく叩き潰すぞ」
「ありませんよ。私がムキになってただけです…」
「ムキになってただけ?」
「…少しは本気でした。すみません。私だってわかってますよ。滅すべき魔族は一部だけって。というか早いとこ戻ったらどうです?何か騒いでますよあの子」
確かに聞き取れないが何か騒ぎ立てているな。
ああ、決勝戦でも策が通じるような試合だといいんだが。
だけどあの感じじゃ不可能に近いだろうな。
その後、観客の退場と共に二人も闘技場の外に出た。
「決勝戦は夜から。なので休むために王宮に戻るぞ。先に言っておくが俺は今から寝る」
「お疲れ様です。ごゆっくりお休みしてください!そういえばシエルさんとはどういう関係なんですか?」
シエルと俺の関係性だと?
序列上位者は言うまでもないが念のために伝えるとして…。
やっぱり、あっちの方が印象深いな。
「序列上位者のとストーカーという変な関係だ」
「え?!ヤマト、ストーカーしてるんですか?」
「してねぇよ!俺がストーカーされてたんだ!」
「そうよ。私がヤマトのストーカーをしてたの」
いつの間にかシエルはヤマトの背後に立っていた。
当然だがヤマトは近づく前から気づいている。
「シエルさん、ヤマトに何で惚れたんですか?」
「天界で人間を見てたらヤマトを見つけて一目惚れしたの!そして神様に下界に降りていいですか?って相談したらオーケーもらったの!」
「二千歳越えの婆に惚れられたくないな!」
「ヤマトと同じ二十歳よ!」
「人間基準で数えんな!」
天使の年齢を人間基準で数えるとゼロを二つ取れば人間基準の年齢になる。
要は一歳になるのに百年も歳月を費やす。
「それでも恋愛がしたいの!」
シエルがヤマトに抱きつこうとする。
しかし、ヤマトは試合以上の速さで回避した。
そしてシエルは勢い余って地面に飛び込む。
「抱きつこうとするな!それに年齢関係なく俺はお前が嫌いだ!」
「というかあの子は?」
「…寝てる」
「そう。珍しいわね。それじゃあねヤマト!また会いましょ!」
その後、シエルは王都から立ち去った。
これでも序列三位のため色々と激務に追われる日々を送っているのだ。
だが大半はシエルの種族としての性格が招いた仕事だ。
「あんな美少女なのに何で付き合わないんですか?」
「あいつが俺のこと殺そうとしてる理由が知りたいか?」
そういえばなんで好きなのに殺そうとしてんだろ?
「知りたい!」
「殺して死なないようにして付き合うんだとさ。要は魂のみにするってことだ。『死んだら天界に逝くから大丈夫!だから私から一生離れることはできない!』とか言って殺そうとするんだ。だったら不老不死のスキル教えればいいだろ。頭のネジどっか外れてんだよ」
昔の話になる、砂漠で旅をしてたら何の前触れもなく上空から剣を構えて降ってきたんだ
そして俺に攻撃してきたので問答無用で蹴散らしてやった。
そんで理由を訊いたら『あなたに一目惚れしたからです!』と言いやがる。
更に『捕まえたのも私を犯すためですよね!』とバカみたいなセリフを吐いてきた。
もちろん、特大の拳骨を喰らわして砂漠の大岩に結びつけて放置してきた。
その後も何度も強くなって求婚しにくるが返り討ちにしてやった。
たまに負けそうになった時もあったぐらいにな。
まあ、感謝したくないが『後半はあの脳内ピンクのおかげで強くなれた』と言っても過言ではない。
「それは断りたくなりますね」
「だろ」
「なら不老不死教えてくれてたら付き合ってたんですか?」
「それでも絶対ないな」
その後ヤマト達は王宮に戻り夜に向け一休みすることになった。
決勝の相手はハデス、約束通りヤマトは決勝戦まで進んだ。。
「もし、ピンチになったら頼むぞ」
「なんか言いましたか?」
「何でもない」
次回は決勝戦あの化け物ハデス戦!
そしてあの子とは誰?ヤマトが頼んでた相手は誰?
一応、これフラグ、ハデス戦後編で出てきます!
それではまた次の話で!