百二十話 百人斬り
百人斬り!
斬りはしませんが百人まとめて倒します!
「たかが一人だ!こっちは百人だ!まとめてかかったら序列一位でも」
「じゃあ、やってみるか?かかってこいよ」
何か思いついたのかメルウィスは大声を出した。
「生徒共!序列一位の特別授業だ!遠慮なく学がよい!」
「何言ってんだ?俺の戦い方から学ぶもんなんてないぞ」
まあ、学べるものなら学んでみろ。
今回は体力と魔力をあまり使わない戦闘でいく。
その代わりに頭をフル回転しないといけないが。
「かかれ!」
指揮系統はちゃんとしてるな。
けど実戦経験はないと見た。
ならこのやり方で行ける。
十人が武器を持って突撃してくる。
夜真砥はそれを無視して奥にいる魔導士を倒しにいく。
「無視してんじゃねぇよ!」
「無視はしていない。もう、倒したから無視したんだよ。動くなよ。切れやすいから」
(これは蜘蛛の巣?…いや!魔糸か!)
時すでに遅し。
突撃した十人は魔糸で捕縛され吊り上げられた。
「残り九十!」
魔導士の集団は広範囲の攻撃で薙ぎ倒す!
「打て打て!」
「叢雲流剣技大瀑布!!」
大瀑布、勢いよく落ちる滝のように相手を薙ぎ倒す剣技だ。
個人対集団にしか使われない。
理由は広範囲攻撃のため味方を巻き込む可能性があるから。
「バカな!?二十人いるんだぞ!」
次は盾役と行きたいが鳥人族もいるのか合計で十五人ね。
なら、盾役を利用する!
夜真砥は人が一人、踏み台として使えそうな盾を持つ盾役の方に走り、その盾を魔糸で真っ直ぐ水平にして踏み台にして鳥人族のところまで跳んだ。
「ここまで跳べるのか!?」
「空中戦がお前らの専売特許じゃねぇんだよ」
魔糸を付けたナイフを飛ばして刺す!
そして取れないようにして地面に叩き落とす!
「落ちろ!」
夜真砥は十五人いる鳥人族をまるで鞭を地面に叩きつけるように落とした。
「何て怪力だ!」
「まだこれからだ!」
そしてそれをハンマー投げのように振り回して密集していた盾役の方に投げる。
衝撃で立てず固まった鳥人族と盾役に近づいて氷属性魔法で凍らせて捕縛した。
「ざっと見て残り四十五!」
「残り全員で一斉に攻撃するぞ!」
そう来るか!
なら、ちょっくら本気出す!
「ようこそ摩訶不思議な舞台へ。幕は上がり緞帳の向こうより現れるのは暗黒の闇なり。闇よ我が観客を飲み込め!観客達よ!絶望せよ!舞台は整った!お待たせいたしました!開演でございます!暗黒の開幕!!」
魔法を発動させると辺りに黒い霧のようなものが広がった。
それは残った犯罪者達を飲み込んでいく。
事前に夜真砥が張った結界により逃げてきた客や生徒は無事だ。
そして黒い霧の奥からは犯罪者達の叫び声などが聞こえる。
時折、見える魔法の光、黒い霧から出てくる血、犯罪者達を攻撃してるのは夜真砥ではない。
夜真砥は学園エリアの門の方にいる。
暗黒の開幕、広範囲の精神破壊系の極闇属性魔法である。
受けた者は過去の記憶や自分の身に起きた最大の恐怖を心の奥底から強引に引き出されて、それをさらに恐ろしくした精神世界に放り込まれる。
精神が破壊されて発狂して自ら死のうとするもの辺り構わず攻撃する者も出てくる。
対策方法は一つだけ精神を鍛え打ち勝つしかない。
「この先はモラル的にヤバいので終幕」
夜真砥が魔法をとくと先ほどまで闘志があふれていた四十四名の犯罪者達が倒れていた。
一人、リーダー格の男を除いて。
しかし、その男も体を震わせて今にでも倒れそうだ。
「よく耐えたな。五秒ほど発動させたんだが」
「五秒?体感では何日のような気がした」
そんな魔法だからな。
これには体感時間を狂わす効果もある。
というか維持に魔力を継続的に使うので最大でも十秒しか保たないのが欠点だ。
「メルウィス、フォクス、拘束しといてくれ」
「まだ、リーダー格の男を倒して」
「…失禁している。これ以上は胸糞悪いだけだ」
夜真砥は去り際にリーダー格の男に耳打ちする。
「先ほど言ったがモラル的にヤバいから止めただけだ。俺は犯罪者を絶対に許さない性格でなやりすぎることがよくあるんだ。良かったな観客がいて」
それは完全に脅し、忠告など生半可なものではない。
これは後の話だが男はこの時に囁かれた言葉が耳から離れなく牢屋で夜な夜な暗黒の開幕で起きた場面を悪夢で見てるのだという。
次回、バンと戦います。
おそらく最後にσ(^_^;
まあ、最後でしょうね。