百十八話 激震
予告通り、ヴォルカン島の怪物とバンが登場します!
それと後書きはアフターストーリーをやります!
なので!
それではまた次の話で!
倒れたフォクスはそのまま空を見上げていた。
考えていたのはどこで自分は道を間違ってしまったのかそれだけだ。
初めはギルドの依頼で先生をやって誰かに何かを教えるという面白さと嬉しさに取り憑かれて無我夢中で教師をしていた。
気がついたら学園長になってあの日の自分が最も嫌っていた生徒のことを一切、考えない守銭奴に成り下がっていた。
自分は教師じゃないただのバカだ。
「二つほど聞きたい。なぜ私の技を無傷で受けれた?」
「レイピアは槍よりも突く面積が狭いことは言うまでもなく知ってますよね。なのでそこを重点的に防御しました」
「あれほどの速さのをか?」
「自分からしたらまだまだ遅すぎます」
俺もレイピアを使ったことはあるが剣よりも腕が痛くなる。
だって突くだけの行為を永遠とするんだからな。
なのでいざという時にしか使いたくない。
「最後に…私はバカか?」
「ええ、バカですよ。生徒のことを何も考えずに自分のことを一方的に押し付けるセールスマン。何をしてるのか今になるまで気づかないどうしようもないバカです」
「やはりそうだよな」
「しかし、あなたの教え方に問題はありますが教えはあながち間違ってはいなかったと思います。マーシュ君の基盤を作ったのはおそらくあなたです。だから彼は今ここで戦うことができた。そして彼も」
夜真砥は収納箱からロックの手紙を出してまだ横たわっているフォクスに渡した。
「あなたの元教え子のロック・ボーデンからです」
フォクスは起き上がって手紙を読んだ。
フォクス・フェイザーズ様へ
どうもご無沙汰しております第八期卒業生のロック・ボーデンです。先生はいえ、今は学園長ですね。学園長は多忙で私のことなど忘れていると思うので特徴を述べますと周りのドワーフよりやたら身長が高かく不器用だったあいつです。学園長は昔も今も変わらずスパルタ教育をしてるんでしょうね。私はあの教育は嫌いでした。しかし、感謝していることもあります。今の私があるのも学園長のおかげだと言っても過言ではありません。私はドワーフなのに鍛治が一番苦手でした。周りのドワーフよりも劣っていていつもいじめられていた。だけど学園長はただ私に『周りの奴らにできてお前にできないことなどない。苦手なら死ぬほど努力しろ』と言いました。それにより私は気持ちを改めて卒業する頃には誰にも負けない鍛冶職人になってました。学園長はいつか報いを受けると思います。だけど教師をやめないでくださいあなたがいなければ私の人生は終わってました。あとすみません。おそらくあなたは今、この手紙を渡された人に完膚無きまでに叩きのめされているでしょう。今、私はヴォルカン島で世界最強の男の専属鍛冶職人をしております。突然のお手紙、申し訳ございません。いつかまたお会いしましょう。
第八期卒業生ロック・ボーデンより
「泣いてるですか?」
「…ありがとうございます。…私はまた過ちを犯すところだった」
「気づけたらいい。あとは前に進むだけです」
さてさて、あとはヴォルカン島の怪物とバンだけだな。
そういえば何でバンがここに来る必要があるんだ?
別に他の大陸でもいいはずでは…いや、そもそもなぜヴォルカン島の怪物がここに来ている。
たまたま…なわけないよな。
考えても仕方がないか。
夜真砥が生徒のところに戻ろうとした時、地面が大きく揺れて港の方から水爆発するような音が聞こえた。
「何だ!?地震か!」
「観客の皆様!急いで頭を保護してください!」
観客は言われた通り頭を保護する。
だが一部の観客は頭を保護せずに立ち上がってどこに隠してあったのか鎧を着だした。
「柘榴の炎竜団諸君!今こそ我らの大義を果たす時!我らの敵を討ち我らが主に忠誠を示せ!集え!バン・アリギエーテのもとに!柘榴の炎竜団出陣!!」
「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
バンの号令と共にアルカデミア島に潜伏していた柘榴の炎竜団が次々と現れた。
そして号令をかけたバンはまだ揺れるアルカデミア島を炎を纏った馬で駆け港へと団員達を先導する。
港の沖合の海水は蒸発して怪物が海中より現れる。
武者震いが止まれねぇ。
間違いない奴だ!
今度こそは倒してやるからな!
「ヴォルカン島の怪物さんよぉ」
これ遠くない未来の話。
ヴォルカン島の魔物がかなり排除されて居住区が増え学校ができた。
そこにある男が招かれた。
「お待ちしておりました!こっちに学校がありますので…。どうかしましたか?」
「…いや、悪いけど元教え子に会いに行く」
夜真砥が来た時と同様にドワーフの鍛冶職人の工房の奥から鉄を叩く音が聞こえてきた。
「…親方、客人です」
「今は忙しい後にしろ」
「それが…」
弟子は親方の耳元で客人の名前を言う。
「わかった。代わりにお前が叩け。ミスったらただじゃおかねぇからな!」
「ええ!?」
親方は弟子に鉄を任せて客人に会いに行った。
「…いらっしゃい。…お久しぶりです」
「ああ、元気そうでなによりだ。この島で厄介になる。よろしく頼むよ。ロック君」
「こちらこそ。ようこそヴォルカン島へ。フォクス先生」
久しぶりに再開した先生と生徒は握手を交わした。