百三話 卒業生対抗試合 前夜
次回から卒業生対抗試合が始まります!
今回はその前夜の話です!
就寝前に夜真砥は生徒達を集めて特別講義をしていた。
「いよいよ明日は卒業生対抗試合だ。…まあ、お前たちはよくやった方だ。優勝できるのかと聞かれたら五分五分と答える。というか気を抜くな。俺はお前ら以外の生徒のことは全く知らないので対策のしようがない。冒険だってぶっつけ本番、狩る予定だった魔物とは別の魔物が出てくるのもよくある話だ。負けても悔やむな。明日の糧にしろ。勝って自惚れるな。一発、ぶん殴りに行ってやるからな。今まで先生方や家族、友人、この島に教えてもらったこと全てを発揮し出し切ってこい!次のステージでお前たちに会えるのを楽しみにている。約三週間お疲れ様!悔いのない戦いをしろよな!」
「はい!」
生徒達は夜真砥の激励に元気よく返事した。
「というわけでティナもお疲れさん。お前は試合に出ないからな」
「はい?」
何のことだろう?
「いや、仮在席のことだよ」
「あぁ~それのことか~」
「まさかテメェ、俺の唯一の弟子だっていうこと忘れてたじゃねぇだろうな?」
さすがに忘れるわけねぇよな。
何ヶ月も一緒にいるんだから。
「すみません。…忘れてました」
「こん中で俺の弟子になりたい奴はいるか~」
「破門しないでください~!」
「いいか!次、ど忘れしてたらマジで破門させるからな!」
「はい」
胸の奥底に深く刻んでおこう。
「それと最後に一つ、謝らないといけないことがある」
「謝ること?」
「何のことだろう?エレン、何か知っている?」
「何で俺に聞く。知らん」
逆にエレンが知っていたらあの場にいたことになるな。
でも、勘のいい奴はすでに察しているだろう。
「もしかすると卒業生対抗試合は中止または延期になるかもしれない。理由は三週間ほど前にオルストリア大陸からタルタロスに護送中の飛行艇から脱獄したジュダ・サルディアの仲間のバン・アリギエーテがこの島に潜伏している。そいつがもし卒業生対抗試合中に現れたらお前らに危険が及ぶかもしれない」
「別にいいぜ。どうせ先生が何とかしてくれるんだろ?」
「そうそう、だから信じているよ先生!」
意外な返答がきたな。
てっきり俺は罵倒の嵐が巻き起こるのかと思っていた。
まさか罵倒ではなく期待の嵐が起こるとはな。
…これは負けたら顔向けできねぇな。
「おう!任せておけ!ファゼル先生も頑張ってください!」
「あなたは生徒だけではなく私も育ててくれました。三週間、あなたのそばで見て学んだことを活かしていき生徒達を必ず勝利に導きます」
「そうだ!円陣組もうぜ!」
「いいね!」
エレンの提案により一同は円陣を組んだ。
「絶対に優勝して卒業するぞおぉぉぉぉ!!」
「おおぉぉぉぉ!!」
明日に備えるため一同は寝床についた。
一方、その頃、アルカデミア島の地下深くの空洞。
「シャバで吸う煙草は一味違うね~」
「バン様、出陣の準備を」
「おう。悪いなお前らこんなことに巻き込んでしまって」
「何を言いますか。真の世界を取り戻すためなら私達は地獄にだってついて行きます」
アルカデミア島には元サルディア帝国騎士団の団員が集まっていた。
全員、サルディア事変により居場所を失い各地に散らばっていた者達である。
「そうか素晴らしい部下を持てて我は幸せだ」
「それと例の魔物はすでに近海にいます。あと想定外のことなんですが一部の指名手配犯がこの島にやってくるという情報が入ってきました」
「そいつらもついでになき払えばいいことだ。…元サルディア帝国騎士団所属、柘榴の炎竜団団長、バン・アリギエーテ以下所属団員、出陣!」
(王子、あなたの夢、この柘榴の炎竜団が必ず叶えてみせます!)
柘榴の炎竜団の団員達は胸にガーネットが埋め込まれた年季の入った鎧を装着した。
まあ、確定でバン達、柘榴の炎竜団はやってきます。
なぜ柘榴なのかというとガーネットの日本語での呼び方が柘榴石だからです。
それではまた次の話で!




