九十七話 運命の十年前①
十年前に~タイムスリップ!!
運命の出会い編です!
月影夜真砥、彼が今のようになったのは十年前のあの日、ギルドで運命の出会いをしたことがきっかけであろう。
もし彼があのギルドに行かなかったら彼は今のようにはならなかった。
昇格試合中だが十年前のあの日に戻るとしよう。
十歳の夜真砥は多くの国民に見送られ転生前からの願いである冒険に出た。
初めての外の世界、同行者の月夜は横で船酔いをして海に吐いている。
そして先行する船が上陸の合図を送った。
まずは小舟で向かい事情を話して船団を岸に近づける。
日の本水軍、合計五隻、東西南北にそれぞれ一隻ずつ配置され中央の夜真砥が乗っている船を守っている。
そして陸へと足を着けようとしている夜真砥の心臓は喜びのあまり破裂しそうだ。
日の本水軍は夜真砥を見送り国へと帰っていった。
「大丈夫か?月夜」
「大丈夫ですよ。主」
「おい、あの子誰だ?」
「日の本の国の第二王子らしい」
もちろん、港は見物人でごった返している。
一応、通り道は開いてるため支障にはならない。
「第二王子!?何でそんな身分の方がこんな港町にやってきてんだ!?隣の子も日の本の国の王族か?」
「いや、一人だけだ。護衛じゃないか?」
「まさかあんなちっちゃい子に護衛が務まるわけないだろ」
ようやく言葉がわかってきた。
言語理解という術が使えるようになったのかな?
「主、あいつら斬っていいですか?」
「ダメだ。それよりギルドというところに向かうぞ。何でも冒険家になるためにはそこに所属した方が得らしい」
「承知しました」
夜真砥と月夜はこの港町のギルドに向かった。
そしてこの二人も。
「なあ師匠、今日も依頼受けるのか?俺は筋肉痛だ」
「お主が弱いせいじゃ。鍛え方が足りん!」
当時、二百十一歳のリリムと十五歳のジャックである。
「ここがギルドか…」
ギルドの扉の前に立っていた夜真砥を後ろからジャックが押した。
「ガキそこを退け」
「お主もガキじゃ!」
そしてリリムがジャックの頭を杖で叩く。
「いって!」
「すまんな。ケガはないか?」
「はい」
「それは良かった」
ヤバい月夜の殺気がだだ漏れだ。
「主、あいつ殺していいですか?てか、殺したいです」
「ダメだ!」
夜真砥と月夜はギルド登録をしにカウンターに向かった。
偶然にもリリムとジャックは隣のカウンターだ。
「はい、それでは登録料で二人分、千グリアちょうだいします」
「…月夜もですか?」
「そうです」
月夜は精霊なんだけどなぁ。
「細かいのないですけどいいですか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、鑑定もしてください」
そう言って夜真砥は大きな金塊をリュックから取り出してカウンターの上に置いた。
やっと軽くなった。
何で親父は金塊を渡したのだろう?
(何かさっきのガキのリュックから金塊出てきた!?どこのボンボンだよ!)
「…金塊?」
「そうです」
なるほど印象を与えるためか。
「ちょっとあちらの席でお待ちください。…ギルドマスター!大変です!」
大事になってしまった。
その後、しばらくして夜真砥と月夜のギルド登録は終わった。
「おいガキ、お前はどこの貴族だ?」
さっきの悪ガキだ。
「貴族じゃない。王族だ」
「王族?何の冗談だ。そんなわけないだろ。王族なら護衛の一人はいるぞ。まさかこのちっちゃいのがお前の護衛か?」
妙に突っ掛かってくるな。
「主、殺していいですか?このガキ」
「まさか本当に護衛なのか?頼りなさそう」
「これ!何をしておる!すまんな。…ってお主は先ほどの」
「はい、先ほどの者です。何ですかこの不良は」
こいつの妹か?
でも、こいつをさっきから抑えてないか?
「儂の弟子じゃ」
弟子?
外の世界はおかしな人がいっぱいだな。
「おい!不良とはなんだ!俺はな騎士を目指しているんだ!不良とか言うんじゃねぇ!」
気づいていると思うがこの時のジャックは言動の全てが今とは真逆の人間であった。
騎士って王族とかを守る立派な職業だよな?
…どっちかって言うと退治される方じゃないか?
「いや、まずは自分の言動を見直してからそう言ったらどうだ?」
「もう限界だ!決闘だ!先輩としてお前にこの世界のことを叩き込んでやる!」
理不尽な申し出きた~。
「月夜、あれをボコりたいか?」
「ボコるというよりボコボコのボコにしたいです」
「わかった。後輩としてあんたに人間の常識を叩き込んでやります」
「…ジャック、今日の晩御飯は抜きじゃ。嫌なら森まで取りに行け」
「げっ!?」
こうして十歳の転生者、夜真砥と十五歳の不良少年、ジャックは決闘をすることになった。
次回、夜真砥VSジャック!
基本、ジャックはこの時間軸では不良少年です。
それではまた次の話で!