九十四話 月帝VS女帝③
リリムの召喚獣登場!
てか、もう出たことあります。
リリムはトンと杖の末端を地面に着けて魔法陣を出現させた。 そこから五匹の黒猫が出てきて大きなあくびをする。
観客は目を丸くしてその子猫を見て『可愛い』、『拍子抜けだな』などの感想を述べた。
しかし、夜真砥はその子猫が出てきた瞬間、身構えて距離を取った。
そして実況席のディラウスは汗を垂らす。
「何ですかね。あの子猫は?」
「ミスターナレーター、あれはただの子猫じゃない。…逃げろ夜真砥!リリムは本気で王座を取りに来てるぞ!」
逃げる?
冗談言うなよディラウス。
「逃げてたまるか!例え相手が不吉を呼ぶ黒き災いだとしてもな!」
「その意志、見事だ。さすが儂の弟子」
夜真砥がリリムの召喚獣の名を叫んだ瞬間、会場にいるベテラン冒険家やそれに携わる仕事をしている者が騒ぎ出した。
「先生、不吉を呼ぶ黒き災いって何ですか?」
「不吉を呼ぶ黒き災い、かつて古に存在した悪しき魔女が使役していた使い魔のことだ。それは五匹の黒い子猫で構成されておりそれぞれ火、水、風、雷、土の属性を持っておりその子猫を媒介としてその属性を持っている子猫から魔法を放つことができる。伝承ではある街に一匹の子猫が現れ一夜にしてその街を灰にしたと」
「あんな子猫が!?」
…あの時の子猫ちゃんだよね!?
そんなに恐ろしい召喚獣だったの!!
「…行け不吉を呼ぶ黒き災い!」
不吉を呼ぶ黒き災いは夜真砥の周りを縦横無尽に飛び回り魔法を放って妨害を始めた。
リリムの奴、こいつらを利用して詠唱を始めやがった。
しかも星落つる終焉の日かよ!
星落つる終焉の日、重力で相手の動きを止めて宇宙からマジもんの隕石を引き寄せて相手に叩きつける。
しかも魔法で加速や強化をするので通常の隕石より威力が高くなる。
土属性の魔力は一切、使用していないので極無属性魔法になる。
なお夜真砥は宇宙まで魔力を飛ばせないのでできない。
「えっとディラウスさん、観客を避難させた方がいいのでは?」
「…まあ、隕石ごときで壊れるほど柔な造りはしてないからね。大丈夫でしょ」
「だそうです」
さてどうする。
魔法で隕石を破壊しようにもそこまで届かないかと言って詠唱して距離を伸ばそうにもこの猫が邪魔で詠唱できない。
それに狙える場所に来た時点で破壊できないのは目に見えてる。
「夜真砥よ!もう、詠唱は終わったぞ。打開策がないのなら倒れるがいい!星落つる終焉の日!!」
避けようも無理だな。
こりゃあ運命の神様とやらに願掛けするか。
…あ、隕石なんて軽くぶった斬れるあいつがいた。
でも、月夜がすねるから極力、呼び出したくないんだよなぁ。
だけど!今、月夜は下水道にインしてるからな!
呼び出すとしますか!
「あれは…来たああぁぁぁぁぁぁぁ!!特大の隕石、マジで降ってきたあぁぁぁぁ!!」
「…こりゃあマズいかも」
「グランドマスターからマズいの御言葉、出ました!」
「戻れ不吉を呼ぶ黒き災い!!」
リリムは攻撃に巻き込まれないように子猫達を呼び戻す。
「…体が動かねぇ」
「終わったな夜真砥!」
「このままでは負ける!…なんてな。まだ王座を譲る気はないぞリリム!久々の出番だぜ!」
「おや?何か空中要塞のようなものが浮かんでますよ」
「そんな要請した覚えはないんだが…。まさか夜真砥の召喚獣か?」
召喚獣ちゃ召喚獣なんだけど召喚獣じゃないな。
意志はあるけど生物としての構造がほとんどないんだよなぁ。
一言で言うのなら召喚要塞だ。
「ぶった斬れ!」
「ギョイ」
宙に浮かぶ巨大な召喚獣は隕石を粉々にした。
「全くお主は何ちゅう召喚獣を使役しているんだ」
「あんたに言われたくねぇな。行くぞ剣の要塞」
「ギョイ」
ソードフォートレスは巨大な剣のようなものだと想像してください。
それではまた次の話で!