八十八話 ウチの弟子は相変わらずポンコツです?
ポンコツの前にドM側から始めます。
夜真砥がティナ側の様子を見に行く頃と同時刻、下水道から悲鳴が聞こえてきた。
月夜である。
「いやあぁぁぁぁぁぁ!!何か背中に落ちてきた!」
「ただの水滴よ。そこネズミの死骸あるから触れないでね」
「もうやだ!」
下水道、それは月夜の精神状態を不安定にさせる場所の一つである。
月夜は汚い場所が嫌いなのだ。
「…デカいゴキブリ」
「すぐに倒して~!」
「自分でやれば」
「無理無理!精神状態が不安定だから魔法が撃てない!」
魔法と精神状態は関係性がある。
精神状態が不安定だと魔法が撃てなくなり逆に精神状態が安定していると普段より威力の高い魔法が撃てるのだ。
(何か月夜がこうだと気分が悪い)
下水道という環境は二人の立ち位置を逆転させたのであった。
一方、地上では、
「そうやってテントは張るの」
「テントってこんなに早く張れるものなんだな」
「あんたはいったいどんなやり方してたの」
「家、建ててた」
夜真砥に言われたことを生かしてティナがヴァルト、ルーを指導していた。
場所もティナが決めて食料調達もできて安全な場所だ。
そして夜真砥は、
ティナが指導してる!?
バカな!?毒キノコでも食ったのか!?
今すぐ病院に連れて行かないと!
ティナがチームを指揮をしてるのを見て混乱してた。
でも、よく成長できたな。
しかしよく考えたら普通のことだけどな!
「じゃあ、私は食料調達してるからルーちゃんとヴァルト君はテントと他のことをしといて」
ティナが食料調達をしにいこうと立ち上がった時、立ち眩みでヴァルトにもたれかかってしまった。
「ごめん!ヴァルト君、大丈夫?」
「あ、ああ、ティナこそ大丈夫か?」
ヴァルトの奴、赤面してないか?
…ほう、度胸があるな。
「うん!大丈夫だよ」
「本当に大丈夫なのか!?あたしが行こうか?」
「大丈夫だって。じゃあ、行ってくるね!」
ティナは食料調達に行った。
…別に熱があるという訳じゃねぇし本人の言うとおり大丈夫だろう。
だけど別のことはやっておくか。
「ヴァルト、ちょっと飲み水取りに行って」
「おう」
「どうしたの?」
「何でもねぇよ」
チャンス到来!
ヴァルトは飲み水を取るため川辺に行った。
そして夜真砥も。
「…ああ、ティナちゃん、天使みたいだったなぁ。…告白しようかな」
「動くな」
夜真砥はヴァルトの後ろに回り首筋に刃を当てた。
「…夜真砥先生!?何やってんですか!?」
「お前に俺の弟子はやらんぞ」
そして夜真砥はまるで娘ラブのお父さんが言いそうな『俺の娘はやらんぞ』という言葉を言った。
夜真砥は転生前と転生後の年齢を合わせると四十八である。
つまり、人間年齢で十八歳のティナを娘のように思っても仕方がないのだ。
「…は、はい」
「よろしい」
夜真砥は影に溶け込むようにその場を去った。
そしてヴァルトの恋も消え去ったのであった。
夜真砥の脅し怖すぎます((((;゜Д゜))))
それではまた次の話で!