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76 十三


「俺は、姫様を護る」


 アリファ姫との話をおえて部屋に帰ってきた勇一は、たった一言だけ、そう宣言した。


 その宣言を聞いたダフネ隊長は、唇の端を歪めてニヤリと笑う。

 ユーイチ殿が姫様と二人で、いったいどんな話をしたのか、解らんが……

 どうやら、我々に都合の良い方(・・・・・・)に転がってくれたようだな。


 ディケーネとニエスは、たった一言だけ宣言した勇一の姿に、内心ではちょっと首をかしげる。

 いつも一緒にいる二人は、いきなり部屋に入ってきて断言をした勇一の行動に、違和感を感じて、少し不思議に思ったのだ。

 だが、最初から勇一が決めた事には従うことに決めていた二人は、別に何も言わない。

 ただ肯定の意味を込めて、力強く頷いた。


『ユーイチ殿がそう決めたのでしたら、私も従いますよ』

 アマウリにも伝えると、マイクの向こうから、爽やかな声で了解してくれた。


「よし、ではユーイチ殿、これから宜しく頼むぞ。

 一応確認しておくが、指揮権は私とユーイチ殿は同格扱い。今までどうり、『名無き者(ネームレス)』と穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊は、別の指揮系統を維持する。それで良いかい?」


 序列で言うならば、いくら強いとは言え単なる冒険者で傭兵的な立場である『名無き者(ネームレス)』が下位で、姫様の親衛隊である穢れなきバラ(ホワイトローズ)が上位になる。

 そして、指揮系統は統一しないと、混乱を生む。

 ダフネが全権を持ち、勇一達もダフネの指示に従うのが、本来の形であろう。

 だが、ダフネが勇一に出来る限りの敬意を払い、また、その戦力を最大限に発揮してもらう事を考えて、この形を提案したのだった。


 勇一にも、もちろん異論はない。

「ああ、それで構わない」


「よし、それではユーイチ殿。さっそくだが、脱出の経路について談義したい。

 まずは白亜宮をでて、王都を脱出しなければならないないのだが、王都内及び王都周辺の敵がどのように配置しているかまったく不明だ。例の勇一殿の探知魔法(サーチ)で、周辺を探ることは出来ないか?

 特に、正統皇帝国軍7万の軍勢が、王都のどの辺りまで来ているか知りたいのだが」


「了解した。

 タッタ、王都周辺の帝国軍の動きはわかるか?」


装甲指揮車(クーガースリー)のレーダーでは無理です。

 ですが、現在、白亜宮の上空に待機中の遠隔攻撃型ドローンの高度を上げて広範囲の索敵を行う事は方法があります。

 なお、ドローンは都市部では国際法で高度500メートルまでと制限がありますが、許可さえ頂ければ、性能的に1200メートルまで上昇が可能です。

 1000メートル以上の高度まで上昇すると、戦場及び都市全体を俯瞰する事が可能となります。

 ただその際は、個体レベルでの数や動きを把握すること等は不能となり、部隊レベルでの動きの把握が限界です。

 かなり情報の質は落ちることとなります』


「全体図の動きが把握できれば、それでいいさ。

 国際法も、今はもう残ってないだろう。さっそく1000メートルまで、上昇して調べてくれ」


『了解しました。

 上昇するまで、五分程お待ちください』


 タツタへの指示を終えた勇一はダフネへと、向き直る。

「ダフネさん。今、俺のドローンに調べさせていますから、五分ほど待ってください」

「ああ、もちろん待たせてもらうよ」


 何もすることなく、ただ時間の経過を待つ。


「御主人様、お茶でも入れますよ」

 ボーっと待っていたら、ニエスが気を効かして、そんな事を言ってくれた。


 ニエスが部屋の隅に置いてあったお湯と道具で、入れてくれたお茶を飲む。

 ちなみにこの異世界のお茶は、元の世界の紅茶と、ほぼ同じ味なので、勇一にも違和感はない。

 でも、抹茶や麦茶や緑茶など、いわゆる和風の"お茶"は無い。

 元々緑茶好きだった勇一には、内心、若干だが寂しいものがある。

 その間にも、タツタが遠隔操作する、遠隔攻撃型ドローンはぐんぐん高度を上昇させる。

 

『報告します。

 現状ではまだ王都内部での大規模な戦闘は行われていない模様です。王城の炎上も鎮火の方向へと向かっています。

 ですが、王都の西側に3万の集団が布陣し、西門を守る王都側の人の反応と戦闘がちょうど開始されたところです。

 また、王都を回り込む様に移動した2万の集団が、南門の前で布陣を展開中。

 別途、2万の集団が、王都の南側を通り越して、東門の前で布陣を展開中です』


 その内容を、そのままダフネへと伝える。


「ふむ。

 もともと王都の北側は湖に面していて、兵が展開できない。と、同時に逃げ道もない。

 西門前で帝国軍3万と、王都守備隊と交戦を開始していて。

 南門前と東門前でそれぞれ帝国軍2万が、布陣展開中か」


 ダフネが、唇の端を歪めてニヤリと笑う。 

 西から来た帝国軍が、完全に周囲を包囲する前に戦闘を始めてるのか。

 内部で同時に武力政変(クーデター)を起こさせてるから、その混乱から立ち直る前に一気に王都を落としたくて向こうもかなり慌ててるようだ。

 まあ、帝国軍にしてはみれば無理に包囲殲滅にこだわる必要も無いのか。

 下手したら、混乱して逃げ出す兵がいたら逃がしてやった方が、楽に王都を支配できるくらいだからな。


 だがそれでも、王族や貴族の王都からの脱出を、許す事は無いだろう。


「まあ、一旦、東へ向かうしか選択しは無いな。

 東の正面門はもちろん閉じられているだろうがな」

 ダフネ隊長の言葉に、勇一も頷く。


「脱出する前に、一つやっておきたい事があります。俺達は一度、宿によって電動バギー(ピェーピェー)を取って来たいんです」

電動バギー(ピェーピェー)……、あの"馬なし馬車"か。確かにあれは必要かも知れんな」


「時間の問題もあるので、もし場所が遠いようだったら、先に俺達だけ宿に向かって取って来ようかと思います」

「ああ、心配いらん。あの宿ならここのすぐ近くだ。

 それに東側にあるから、脱出する際に途中で寄っても、全然問題ない」


 場所を確認してみると、この白亜宮と、勇一達の宿は本当に物凄く近くに建っていた。

 勇一達の泊まっている宿は、エイシャ様のような貴族が上階に泊まり、下階にその護衛やお付の者などが泊まるつくりになっている、貴族ご用達の宿だ。

 そして、そういった貴族用の宿と、来賓を歓待する為の施設であるこの白亜宮は、同じ"貴族向け地域"に建っているのだった。

 ちなみに、ブレッヒェに会うために最初に訪れたハルミア商会本部などは、商業地域に建っているのでかなり離れた所にある。勇一達は、この白亜宮へと訪れる際は、馬車に乗ってぐるっと無駄に遠回りして来ていた。

 さほど寄り道になる訳では無いことが解り、一度、宿によって電動バギー(ピェーピェー)を取りに行くことに決まった。


『それでは私も、王都の東側へ向かいます。外で合流しますので、宜しくお願いします』

 マイクの向こうから、アマウリがそう言ってきた。


「アマウリさん。それでは、王都の東側で合流しましょう。

 ところで、そちらは大丈夫なんですか? 帝国軍とか居ないんですか?」

『ご心配いりません。こちらは、何も問題ありませんよ』


 もちろん、アマウリの言葉は嘘である。

 実際のアマウリ達の現状は、帝国軍に囲まれていて、非常に危険な状態だった。

 しかし、ここでそんな事を言っても、話を混乱させるだけだし、下手にアマウリを心配して勇一達が危険な行動を取ってしまうことこそアマウリにとっては好ましくない。

 そう判断したアマウリが嘘をついているのだった。


「さて、それでは……

 一応、我々の最終目的地を設定しておく」

 テーブルの上に広げられたこの異世界の地図の一点をダフネ隊長が指差した。


「南方の『アイル六都市同盟国』だ」

 元の世界では、ベトナム、マレーシアの辺りに当たる場所にある国だ。かなり遠い。

 だが、逆賊の娘という立場になってしまったアリファ姫には、国内に逃げる先は無く、国外へ逃亡せざるを得ない。


「一つ聞いていいですか? なぜ、北の『キエル・ルーシ大公国』じゃ無いんです?

 西から来てる帝国軍から逃げるなら、北東に逃げたほうが逃げやすいじゃないですか」


 勇一の質問に、ダフネ隊長が唇の端を歪めて苦笑いする。


「政情の問題だ。

 『キエル・ルーシ大公国』と、アルフォニア王国の関係は微妙でな。別に隠す気は無いが、詳しく話すと長くなる。

 今はあまりゆっくり話している時ではないので、できれば、別の機会に説明させて頂きたい」


「了解しました。ちゃんと理由があるのなら問題ないです」

 勇一としても、不思議に思っただけで、元から異論がある訳ではない。

 了解する。


 勇一とダフネ隊長のやり取りを、ディケーネとニエスは黙って聞いていた。

 別に何も言わないが、内心では二人共、思う事はある。


 ユーイチが、なにか、変わった。

 御主人様が、なんか、変。


 電動バギー(ピェーピェー)を取りにいくと言い出した事といい、目的地について質問したりと、妙に自分の意見を前面に出している。

 具体的に、何が変わった、とか、何が変、とかは言えない。だが、確実に何か違いを感じる。


 ニエスがこっそりと小声で、ディケーネに話しかけた。

「御主人様、なんか、いつもと違う感じじゃないですか?

 なぜか、顔もキリリと引き締まって、ちょっと良い男にみえますよ」

「ユーイチは元々、良い男だろう。まあ、それは置いておいて。

 確かにちょっと変化を感じるな。アリファ姫と、何かあったのだろうか」


「ひょっとしてアレですかね? アレ」

「アレとは何だ?」


「アレはアレですよ! 恋ですよ、恋!

 御主人様が、アリファ姫に一目惚れしてしまったんじゃないですか?」


 ニエスのその言葉に、ディケーネが露骨に顔をしかめる。

「ニエス。どうしてお前は、すぐに"恋愛"に結びつけようとするんだ?

 まったく、若い娘は、何でもかんでも恋愛に結び付けて考えるきらいがあるな」


「ええええ、今回も私の意見、却下ですか?!

 てかディケーネさん、なんでまたそんなオバサンくさい事、言ってるんですかー?!

 それにですよ。もし、本当に私の意見が当たっていて、御主人様がアリファ姫に恋しちゃってたら……

 ディケーネさんは、どうするんですか?!」

「別に、私がどうするもこうするも無いだろう。私は勇一の奴隷で、忠誠を誓っているのだから」


 そんなやり取りをしている所で、部屋の扉が開く。

「だ、脱出の準備が、と、整いました」

 リュウド副隊長が報告を伝えに来たのだった。

 かなり急いで脱出の準備を行い、呼びにきたのだろう。

 いつも落ち着いた雰囲気のあるリュウド副隊長の息が上がり、うわずっている。


「ご苦労! よし、では、『名無き者(ネームレス)』の諸君、行くとするか」

 ダフネ隊長と共に、早足に部屋をでて白亜宮の建物の外へと移動する。


 建物の前には、結構な量の荷物を整理して載せた馬達と、姫様が乗るための馬車が並べられていた。

 馬車にも、もちろん荷物が乗せ込んである。

 長期間の逃避行になるかもしれない為、ある程度の準備を行わないと、生存率が下がってしまう。


 そしてすでにアリファ姫と共に脱出する予定の穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊のメンバーが整列している。

 穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊は、いつもの白い重装鎧(フルプレートアーマ)ではなく、胸や肩など、急所だけを守る軽鎧(ライトアーマ)を着ている。

 重すぎる重装鎧では、馬に負担を掛けてしまうので逃避行には向かない。その為の処置だろう。

 良く見ると、別の鎧を準備したわけでなく穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊の重装鎧(フルプレートアーマ)を、分解し、一部を軽鎧ライトアーマとして使っている。

 元から、そのような使い方ができる設計になっていたようだ。

 ようするに、穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊の鎧は、元から"このような事態を想定して作られた鎧"だったのだ。


 怪我の状態が酷い穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊のメンバーや 多くのメイドや召使達は、連れて行っても、戦闘に巻き込まれて死者を増やすだけの結果になってしまうので、ここで分かれる事となっている。

 残る者達も整列して並んでいる。


「ユーイチ殿達は、其方に」

 指示されて、勇一達も列に加わり、最後にダフネ隊長自身も列に加わった。


 それと、ほぼ同時に白亜宮のドアが開く。

 アリファ姫様が、ブレッヒェを従えて姿を現した。

 二人も迎賓会用の豪華なドレスから、豪華ながらも動きやすそうな服に着替えている。


 ダフネ隊長の声が響く。

「出立前に、姫様にお言葉を頂く、心して聞くように!」

 

 帝国軍が差し迫った状況で、この様な儀式的な行為を、時間の無駄だと思う者もいるかも知れない。

 だが、死が迫る戦いの前や、旅立ちの前。

 そのような状況で、守るべき者や先頭に立つ者の発する言葉が、兵の戦意や決意を大きく向上させる。

 そういった事が、生死のギリギリの所で違いを生み、戦局を大きく左右したりもするものなのだ。


 アリファ姫が、皆の前へ一歩進み出る。

 

「正直に言いましょう。

 いつかこの様な日が来ることは解っておりました。

 そして、この日が来てしまった以上は、私に出来る事は、姫として最後まで威厳を保ち、皆と共に見事に散ることだけです」


 そこで、一度言葉を切る。

 姫は穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊やメイドたちを見渡す。

 誰も、アリファ姫の言葉に異論など無い。

 ここにいる誰もが、もうすでに死を決意している。

  

「そう思っておりました。つい、さっきまでは。

 しかし、今、この瞬間。

 私は、諦めておりません!

 必ずや、生き延びてみせる! そう思っております。

 ですから、皆さんも無駄死にせず、生き延びる事を優先してください。

 此処で分かれる皆さん。今まで本当に有難うございました。

 そして、共に旅立つ皆さん。

 目指す安住の地は遙か遠く、長い旅路になるやも知れませんが、宜しくお願いいたします」

 そう言って、アリファ姫が頭を下げた。


 一瞬、周りの人が固まる。

 勇一には、何が起こったか解らなかったが、周りの人はすべて驚愕の表情を浮かべていた。

 王族が、自分の部下に頭を下げるなんて本来なら決して無い事だった。

 アリファ姫の言葉が終わっても、すぐには誰も何も反応できない。

 もちろん、姫の言葉に安っぽい拍手をするような愚か者もいない。


「アリファ姫に、剣を捧げよ!」

 ダフネ隊長の号令で、金縛りにあったかのように動けなかった親衛隊の全員が、すぐさま腰の剣を抜き、天にかざす。


「そして、我らは捧ぐ!」

 ダフネ隊長の叫びに続き、隊員全員が復唱する。

『我らは捧ぐ!!』


「永遠!」『永遠!!』

「絶対!」『絶対!!』

「無二!」『無二!!』

「穢れ無き三つの忠誠を!」『穢れ無き三つの忠誠を!!!』


 親衛隊全員が剣を天に振り上げながら、心から叫ぶ。

 隊員達だけでなく、剣を持たぬメイドたちも、右手を上げて、心から叫んでいた。

 その叫びに対して、アリファ姫は、この世の物とは思えない天使のような深い笑顔を浮かべ、軽く手をふってから馬車へと乗り込んだ。


「全員騎乗!」

 ダフネ隊長の号令と共に皆も馬に乗り、隊列を組む。




 先陣は東階段を生き残った穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊の精鋭達五人


  先頭を行くのは"最後の門番ラストゲートキーパー"親衛隊隊長

  親衛隊序列一位 

  ダフネ・ド・コスター


  髪を短く切り、スラリと背が高く手足も長い親衛隊副隊長

  親衛隊序列二位 

  リュウド・ウッドビレッジ


  黒髪をオールバックで後ろに流し、宝塚の男役が似合いそうな麗人の女騎士

  親衛隊序列六位

  ユーヒ・サン・ソーラパゥワ


  前下がりボブで、やたらとキツイ目つきの左下に泣きボクロがある女騎士

  親衛隊序列七位

  ビュル・オージェ

  

  褐色の肌、官能的な肉体、やや垂れ眼な瞳、濡れた唇。やたらと色っぽい女剣士

  親衛隊序列十位 

  デリシャ・ホット・マートン


 列の真ん中の馬車。そこには、三人が乗り込んでいる。


  王位継承権最上位の姫

  そして『逆賊の娘』として王国に追われる姫。

  アリファ・フェルスナ・フォン・アルフォニア姫


  零れ落ちそうな、たわわな胸元が眼を引くメイド長兼女執事

  ブレッヒェ・カイネン・ゾ・ハルミア


  長めの前髪が両目を覆い隠していて、表情すら解らない魔法使い

  親衛隊序列十四位

  クワイ・ニー

  ちなみに、彼女が馬車を操る御者を担当している。



 そして馬車の後ろ、後陣に西階段を生き残った雛鳥達が五人


  雛鳥(キューケン)達の世話役を任された女騎士

  親衛隊序列十八位

  ロルダグルク・ボルフサス 

   

  オレンジ色の髪のかわいらしい少女

  親衛隊序列無し

  アンディー・ブート 

 

  白い肌に長い黒髪の美少女

  親衛隊序列無し 

  カミラ・フォルヘッケ 


  蜂蜜色したクルクルのくせっ毛の少女

  親衛隊序列無し

  フレヤ・ル・クルトワ


  茶色の髪を短く刈り上げた、少年の様な少女

  親衛隊序列無し

  エッダ・トリコロール


 総勢13名。


 13人か……

 名無き者(ネームレス)の三人は、ダフネ隊長の横。ほぼ先頭の場所にいる。

 後ろをふりかえりながら、その人数を見て勇一はふと思う。


 13って不吉な番号だって言うよな。

 確か、13人目の男が『裏切り者(・・・・)のユダ』だから。

 でも、それってキリスト教の話か。この世界はキリスト教が無いから関係ないか。

 姫に忠誠を誓って、この白亜宮でも死闘を演じた穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊のメンバーの中に ユダみたいな裏切り者(・・・・)がいるとは考えずらいしな。


 ちなみに勇一は馬を操れないので、ディケーネの後ろに乗っている。

 ピッタリと体を密着させているので、普段なら色々とモヤモヤしそうな所だが、今はそんな事も感じられない雰囲気だ。


 13人と『名無き者(ネームレス)』が、ここに残る者達に見送られながら白亜宮の庭をすすむ。

 門の前にたどり着いた所で、一度歩みを止める。


「いいか、よく聞け」

 そこでダフネ隊長が改めて叫ぶ。

「この門を出たら最後、周りの者はすべて敵だと思え!

 決して気を抜くな!

 そして、決して諦めるな!

 姫様も言われたように、生き残る努力をしろ!」

「はい!」

 親衛隊の皆が、決意を込めて叫ぶ。

 

「では、開門!」

 ダフネ隊長の指示で門が開かれた。


 そして、穢れなきバラ(ホワイトローズ)親衛隊の一団は白亜宮を出て、王都へと奔りだした。



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