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41 絶望

 廊下の先。

 廊下の左に並ぶ窓から差し込む月明かりで、猫の腐乱死体を抱えた少女の死霊(ゾンビ)が、空(うつ)ろに手を上下させている姿がくっきりと浮かびあがっている。


「ふむ、どうしてくれようかな」

 アドリアーンは少々思案にくれる。 

 最初に見たときは、驚いたものの、別に少女の死霊に用事などない。

 いちいち死霊の相手をしていても仕方ない。

 とりあえず無視するか。

「おい、とにかく四階へと上がる階段を探せ」

 アドリアーンは、振り返って、後ろにいるムトゥー、ライ、ルッカに指示をだす。


 だが、反応が無い。三人が、動かない。

 三人共、アドリアーンを見ずに、別の方向に眼を奪われている。


 不意に、周囲が暗く(・・)なった。

 廊下が、闇に包まれる。

 満月が雲に翳ったか?

 アドリアーンがそう思っていると、ルッカのうめくような声が聞こえきた。


「ああ、窓に、窓に……」


 窓?  

 廊下の左側に並ぶ窓に眼をやる。

 暗くなった理由は 満月が雲に翳った訳ではなかった。

 窓に大量の"何か"が張り付いている。


 それは顔だった。

 濁った眼でこちらを見つめる顔

 絶望の表情でこちらを見つめる顔

 悲しみに崩れたままこちらを見つめる顔

 すべてに恨み憎しみに染まりきってこちらを見つめる顔 寂しそうに仲間を求めこちらを見つめる顔

 生への執着でゆがみきってこちらをみつめる顔、肉への渇望に染まりきってこちらを見る顔

 苦しみに歪みきったままこちらを見つめる顔、欲望に塗れた笑顔でこちらを見つめる顔

 こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔

 こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔

 こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔

 こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔

 こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔

 こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔、こちらをみつめる顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔

 顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔


 窓にへばりついた、無数の顔が、じっとこちらを見つめている。


 ピシっと窓に嵌められた硝子にヒビがはいった。


 次の瞬間。

 全ての窓ガラスが割れ、窓から覗き込んでいた大量の死霊(ゾンビ)達が、廊下に雪崩れ込んで来た。

 その数は、十や二十ではない。数百人はいようかと思われる大量の数の死霊達。

 その数があまりに多すぎて、窓から雪崩込む際にかなりの数の死霊が、別の死霊の下敷きになって潰れ、肉片と化している。

 だが、そんな些細な事を死霊達は、まるで気にしていない。

 怒涛の勢いで死霊達は迫る。


 左側の窓だけではなかった。

 右側のドアというドアが全て開き、そこからも死霊が大量に溢れ出して来る。

 あまりの勢いに、足が腐ったりちぎれかけていたりしている死霊は途中で転倒し、別の死霊にぐちゃぐちゃと踏み潰される。

 そして、もちろんそんな微々たる事を死霊達は、まるで気にしていない。

 数百人もの死霊達が、波の様に押し寄せてくる。

 前からだけではない。

 廊下の反対側、後ろからも同じように大量の死霊が押し寄せて来ている。


「円陣を組め!」

 アドリアーンの叫びにすぐさま反応して、メンバー達が円陣を組む。

 組まれたその円陣の形は、一般的な円陣の形で無く『紫檀(したん)の風』の独特な形だった。


 アドリアーンのみ、一人だけで前方へ向けて大剣を構える。

 そして、そのアドリアーンに背をあわせるようにして、他のムトゥー、ライ、ルッカの、三人が後方へと武器を構えた。

 その独特な、偏った円陣へ大量の死霊が迫る。


 フン!

 気合と共にアドリアーンが大剣を振るう。

 右から左へと、無造作に横に振りぬいただけに見える、剣捌きだった。

 だがその一撃で、集団の先頭にいた十人あまりもの死霊が、吹き飛ばされるかのように、切り裂かれる。

 すぐさま返す刀で、左から右へと剣を振るう。

 またも十人程の死霊が、吹き飛ばされるかのように、切り裂かれる。

 無造作に左右に剣を振り回す。そして死霊を切り裂いていく。

 あまりにも稚拙で荒っぽく、技とは言えないような剣捌きでいて、それでいて強烈無比な攻撃。


 "爆風"のアドリアーン

 彼のもつ、普通の剣士の枠には入りきらない程の"純粋な強さ"による攻撃だった。

 数百人という数で襲い掛かってくる死霊の進行を、たった一人で押し止めてしまう。


 そのアドリアーンの背中あわせに立ってる他の『紫檀(したん)の風』のメンバー、ムトゥー、ライ、ルッカも武器を振るう。

 ムトゥーは星球式鎚矛(モーニングスター)を振り回し、ライは曲刀を振り、ルッカは二本の短剣を巧みに操る。

 数百人の死霊の進行を、三人がかりで押しとどめる。

 

 死霊の一人一人は、弱い。

 『紫檀(したん)の風』にとっては、弱すぎる程の相手だ。

 だが、いくら吹き飛ばされようとも、切られようとも、踏みつけられようとも、肉片と化そうとも、別の死霊が次々と襲い掛かってくる。


 最初に綻びを見せたのは短剣使いのルッカだった。

 もともとルッカは、素早く動き回り相手の攻撃をよけつつ、狙いを定めて急所を一突きするような攻撃が得意な剣士だ。

 足を止めて襲いくる大量の敵を迎え撃つ戦い方は、彼の長所をすべて殺すような戦い方だった。

 あまりに大量の死霊が襲い来るので、段々と攻撃が追いつかなくなってくる。

 切り殺した死霊の後ろから、さらに現れる死霊の攻撃をギリギリでかわしながら反撃する。

 いつもの癖で、心臓を一突きしてしまった。

 だが、死霊は、そんな攻撃をものともしない。

 心臓をついた短剣を握るルッカの腕をつかみかかり、そのまま噛り付いた。


「ぐッ!」

 ルッカが、痛みで思わず声を漏らす。

 うでに齧り付いた死霊を振り払おうとする動きのせいで、まわりへの攻撃が止まってしまう。

 その隙をついて、別の死霊達が襲い掛かる。

 無数の手が伸びてルッカにまとわりつき動きを奪い、そして噛り付いた。

 手に肩に、無数の死霊がまとわりつき、噛り付く。

「ぐわぁ、がああぁぁああああ!」

 振り払おうともがくルッカに、更に死霊が噛り付いていく。

 肩に脇腹に太股に腰に足首に、そして顔に噛り付かれていく。

「た、たすけ……」

 ルッカが床に崩れ落ちる。

 その身体の上に、無数の死霊が殺到して、小さな死霊の山が出来上がっていった。


 その様子を、ムトゥーもライも、横目で見ていた。

 だが、眼の前の死霊に対応するのに、いっぱいで、助ける余裕などまったく無い。

 このままでは死霊に貪り食われるルッカの姿は、数十秒先には自分の姿になるだけだ。


「右前方へ移動する!

 一番近い、扉の中へ押し入るぞ」


 アドリアーンが指示を出す。

 無茶言わないでくれ。

 ムトゥーもライも心の中でさけぶ。押寄せる死霊相手に生き延びるだけでも手がいっぱいだ。

 移動など、まして前に移動するなど想像することすらできない。


 フン!

 渾身の力をこめてアドリアーンが大剣をふるった。

 襲い来る死霊達の最前列が吹き飛び、目の前に僅かな空間が開く。

 そこへ、一歩、足を踏み出した。

 アドリアーンは、何百という死霊が襲いかかってくるのを切り倒し、力づくで押しとどめるだけなく、なんと、前へと一歩踏みだしたのだった。


 更に大剣をふる。

 その豪快な一撃で開いた空間へと、また一歩、前へ出る。

 更に大剣をふる。

 右前の扉を目指し、一歩、一歩と進んでいく。

 背を会わせる様に立っているムトゥーとライは、その歩調にあわせるようにして、眼の前にいる死霊から、一歩ずつ後退していく。

 

 眼の前に扉が迫る。

 その扉からも、まるで滝の水のように死霊が、溢れ出てきている。

 だが、アドリアーンは、前へと進む。

 滝を登る竜のごとく、前から流れ出てくる死霊の群れを断ち切り、その流れを逆流する。

 強引に、扉の中へと押し入っていく。

 部屋の中にも、もちろん溢れかえるように死霊がいる。

 だが、その死霊達を、次々と吹き飛ばし、切り倒していく。

 

「部屋に入ったら、扉を閉めろ!」

 アドリアーンの指示が飛ぶ。

 ムトゥーが部屋へと飛び込む。

 ついでライが部屋へと、飛びこもうとする。


 だが、扉の一歩手前で、ライが死霊に捕まった。

 死霊達の何十本という手がライの身体に纏わりつく。

 部屋の中に入ったムトゥーが振り返る。

 開いた扉を挟んで、ライと、ムトゥーの眼があう。

 死霊に纏わりつかれ、体中に齧り付かれながら、ライが懇願する。


「まっ 待ってくれ! 閉めないでくれ! 扉を閉めな……

 バタン(・・・)と音をたてて、ライの目の前で、扉は閉じられた。


 アドリアーンは剣をふるう。

 部屋の中の死霊をすべて打ち倒す。

 パリンと、高い音をたて、窓が割れた。

 息つく暇もなく、割れた窓から、濁流が押寄せるかのように死霊がなだれ込んで来る。

 だが、アドリアーンは、それすらも打ち倒しつつ、前進して窓へと近づいた。


「窓から外へ出る。一旦ひくぞ!」

 アドリアーンの指示に、反応が無い。


 ちらりと、後方に眼をやる。

 閉じたはずのドアは押寄せる大量の死霊の波に、僅か数秒も保たずに崩壊していた。

 ドアから部屋へとなだれ込んできた死霊が、地面に転がったムトゥーの身体に覆い被さり、貪るように食らっている。


 窓からは、死霊が更に押寄せてくる。

 開いたドアからも、死霊が続々と流れこんでくる。


 たった一人。

 狭い部屋の中で周りをすべてを死霊に囲まれた、アドリアーン。


 「なかなか、愉しくなってきたじゃないか」

 絶望だけが渦巻く部屋の中で、彼は唇を歪めてニヤリと笑った。

 そんなアドリアーンに、何百という死霊達が周囲から一斉に襲い掛かる。


 大剣が死霊を吹き飛ばす。

 アルフォニア王国内でもっとも強い剣士の十人である、『十傑』。

 その『十傑』に選ばれるに足る、本物の剣士だけが持つ強さを発揮する。

 肩幅にひらいた両足を踏ん張り、全身を使って大剣を振り回し、次々に死霊を吹き飛ばす。

 アドリアーンを中心に次々と死霊が吹き飛ばされるその姿は、まさに"爆風"だった。


 だが、どれだけ強い力を発揮し剣技をふるって、殺しても屠っても叩き潰しても、死霊の攻撃は収まらない。


 次々と襲い掛かってくる死霊の攻撃に対して、連続して大剣を振ちつづけているうちに肺の中に二酸化炭素が溜まってきた。

 肺の中の空気を無理矢理に吐きだす。呼吸が乱れ、僅かな隙ができる。

 その僅かな隙にも、途切れることなく死霊の手が伸びてくる。

 大剣を振りつつ、それとは別の方向から纏わりついてくる死霊の手を、身体をねじって振りほどく。

 アドリアーンの身体が僅かにバランス崩れて、よろける。

 足元をみると、上半身だけとなった死霊が這いよってきて、足にすがり付こうとしている。太い足を振り上げ、頭を踏み潰す。グシャリと嫌な音を立て、床の染みとなる。

 反対の足に、また死霊がすがり付こうする。その頭を蹴り飛ばす。蹴玉のように頭が吹っ飛び、壁の染みになる。

 足元の敵に対処している間、少しだけ剣を降る手が鈍る。背中から何本もの死霊の手が纏わりついてくる。振り向きざまに大剣を振るう。

 足元の死霊の死体を踏んでしまい、また身体のバランスが崩れる。何十本という腕が身体に纏わりついてくる。バランスを崩した身体で無理矢理に大剣をふるう。纏わりついてくる死霊、すべてをなぎ払う事ができない。攻撃をかわした死霊達が襲い掛かる。他の死霊達の身体を乗り越え、頭の上からも死霊が襲い掛かる。

 足元には、上半身だけの死霊達がズルズルと身体を引きづりながら迫ってくる。大剣をふるう。死霊を吹き飛ばす。それでも死霊は迫ってくる。大剣をふるう。死霊を吹き飛ばしきれない。死霊が、すべての方向から波の様の押寄せる。それでもアドリアーンは大剣をふるう。大剣をふるう事に縋りつくかの様に、ただひたすらに大剣を振るい続ける。だが何百本と言う腐った死霊の腕が、身体に纏わりついてくる。


 アドリアーンは、死霊達の永遠に続く猛攻の前に、ゆっくりと、だが確実に、押しつぶされていく。

 


 ――――――


 『水と炎の旅団』は、見事なまでの逃げ足で、大魔法使い『グリン・グラン』から逃亡する。

 依頼(クエスト)の目的であるエイシャ様はすでに手に入れている。

 戦略的な撤退だ。


 一番先頭をエイシャ様を抱えたグルキュフが走る。

 その両脇を守るように、リィとルゥが併走し、一番後ろからクラウディアが追走する。

 廊下から階段へと入り、下の階へと降りようとした。


「なに?」

 眼の前の光景に、思わず、先頭を走っていたグルキュフは、足を止める。


 下の階から、無数の死霊が押し寄せてきている。

 まるで、大量の水の水位が、迫り上がってくるかのように、無数の死霊が下の階から押し寄せて来た。

 僅かに見える三階は、もうすでに死霊で埋め尽くされている。


「下は無理だ。上へ!」

 叫ぶと同時に、グルキュフは階段を駆け上がる。他のメンバーも後を追う。

 その、すぐ後ろを死霊の大群が、追いかけてくる。

 殿(しんがり)を努めるクラウディアが、一度ふりかえり、死霊の大群へと切りかかる。

 一撃で、三~四人の死霊を切り裂いた。

 だが、別の死霊がその死体を押し分け、踏みつぶし、クラウディアに襲い掛かかってくる。

 襲いかかってくる死霊を切り裂く。だが、また別の死霊が襲い掛かってくる。

 きりが無い。


 グルキュフが、階段を上がりきると、すぐ眼の前に木の扉が見えた。

 ドアを蹴り開けて、躊躇無く飛び込む。

 

 ドアの向こうには、月が浮かぶ黒い夜空が広がっていた。

 そこは建物の屋上だった。

 グルキュフに続いてリィ、ルゥ、そして殿(しんがり)を務めていたクラウディアも屋上へと飛び出す。


「クラウディア、扉を閉じろ!

 リィ、ルゥ。封印の魔法を掛けろ!」


 指示に反応して、すぐさま扉が閉じられ、封印の魔法が掛けられる。

 魔法によって閉じられたドアに、反対から死霊がぶつかる音が、ドガンドガンと響く。

 とりあえず魔法で封印したとはいえ、この木のドアでは、僅かの時間しか稼ぐ事ができないだろう。


 グルキュフは、屋上の端まで近づいていく。

 端から顔を出し、下の風景を確認した。


「なっ?!!」

 グルキュフは思わず驚嘆の叫びを上げる。


「? グルキュフ、どうした?」

 近くに寄ってきたクラウディア、そしてリィとルゥも、端から顔を出し下の光景を覗き込んだ。


「!!?」

 全員が、言葉を失う。


ぐぅうぉぉおおぉぉおおぉぉぉおおおあ ぐわえええ うぉおおぉぉぉぉおおお あぁああああああ おおおおぉおおおおお うがぁああああ ぐぐぁぐううぅうう ぎぃやぁああああああああ ぎぃあああああぁあ うぉおおおおぉおおん ぢぃあぁぁああ おぉあぉぉおおおおおおおおおぐぎぃいいいぎいいいいい うぁあああ がぁああぁぁあぁああああああぁああ う゛ぁやああぁぁああぁぁぁぁあああ いいぃやああぃいいいいいいああああぁぁあああああああ うぉわぁあああああああ うおおぉおぉぉぉぉおおおぉぉおおぉぉぉぉおおぉぉぉおおぉぉお ぎぃいいいいああぁああいいいぃいいい がぁああ ぐぉおおおおおぉおぉぉぉぉおおおおお びぃやぁあああああぁああぁぁぁあ おっおぉおぉおおおおぉおお ぐぎぃぃいぎぃぎいいいいい あびゃゃびゃびゃあああぁぁああぁああ うぉうぉうぉおおぉぉおおお ぎぎぎぎぃいいぎぃいいいいいいぃぃ びゃああぉおおお う゛ぁやああああああああ いいぃやああぃいいいいいいい ぎぃやぁああああああああ ぎぃあああああぁあ うぉおおおおぉおおん ぢぃあぁぁああ おぉあぉぉおおおおお ひゃあぁぁああああ びゃびゃびゃああああぁぁぁぁああああああ


 何百、いや何千、いや下手すると何万もの死霊達。

 それらが、怨念に満ちた狂おしい叫びを上げながら、建物をぐるりと取り囲んでいた。

 まるで何かを求めるように、あるいは狂信者が神を崇拝するかのように、何万本もの腐った手が、建物の上にいるグルキュフ達にむけて掲げられる。


 その光景は、まさに"絶望"そのものだった。


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