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17 連携

 横道は、先ほど街道に比べるとかなり狭く、道の脇の大木の枝が、覆いかぶさるように伸びている。

 その枝の葉が、太陽の光を遮り、とても薄暗い。

 まるで、森のトンネルだ。


 その細くグネグネと曲がる、森のトンネルを電動バギー(ピェーピェー)が疾走する。


 前方に騎乗した人影が見えてきた。

 かなりの人数が、いる。

 全員が黒い革の鎧で武装し、黒いターバンのようなものを頭に巻いていた。


 電動バギー(ピェーピェー)の方がスピードが速いので、その集団に少しづつ追いついていく。

 前を走っている敵が、こちらに気が付いた。


 ピーと口笛の音がする。どうやら何かの指示のようだ。

 二騎が速度を落として、こちらに近づいてくるのが見える。

 その馬上の敵が持っている武器に、勇一の目が引かれた。


 弩(ボーガン)!!


 前方を走る馬の上から、二つの弩(ボーガン)がこちらに向けられている。

 その照準の先は、ピタリとニエスに合わせられていた。

 一目で電動バギー(ピェーピェー)を操っていると解るニエスを、完全に狙い撃ちにしてきている。


「くそ!」


 勇一はマントを翻し、包み込むようにニエスを横から抱きしめる。

 「きゃっ」と小さくニエスが悲鳴をあげるが、気にしていられない。

 ヒュッと、乾いた音ともに飛んできた矢が、マント越しに勇一の肩と背中に命中した。

 魔法のマントは、矢を貫通させない。

 衝撃も少しだけだが、吸収してくれる。激しい痛みはあるが、骨が折れたりすることはない。

 歯をくいしばり痛みをこらえてから、レーザー小銃(ゴーク)を構える。

 元の世界の弩(ボーガン)には明確な弱点があった。それは一度、矢を放つと、次の矢の装填に時間がかかる事だ。

 構えた勇一の視界に、急いで新たな矢を装填しようとしている敵の姿が映った。

 馬に乗り揺られながら弩(ボーガン)の装填の作業は、難しい。


「やっぱり! こっちの世界の弩(ボーガン)も同じだよな」


 明らかに手間取っている敵に、狙いを定める。

 もらった。

 完全に敵を捕らえていた。

 だが、引き金(トリガー)を引く指が、一瞬、止まる。

 覚悟決めたつもりだったのに、ギリギリの所で『人を撃つこと』を躊躇してしまった。

 そんな勇一をよそに、ディケーネが、レーザー小銃(ゴーク)を撃った。


 ヒュンという風きり音と共に、光の筋(レーザー)が、暗い森の中を奔る。

 が、まったく当たらない。

 電動バギー(ピェーピェー)の後ろに立ち乗りしている彼女は、片手で鉄パイプを握り体を固定し、片手でレーザー小銃(ゴーク)を撃っている。

 元々、射撃経験が殆ど無く、お世辞にも巧いともいえない彼女の射撃だ。

 そんな姿勢で撃っても、敵に当たるはずもない。


 装填の終わった弩(ボーガン)がこちらに向けられた。

 その照準の先は、またもピタリとニエスに向けられている。


「ちくしょう!!」

 マントを翻し、またも包み込むようにニエスを横から抱きしめる。

 飛んできた矢が、今度は、マント越しに肩と、側頭部に命中する。

 鈍い痛みが、勇一の意識を奪う。


「ユーイチ! しっかりしろ!」

 ディケーネの叫び声で、すぐさま意識を取り戻す。

 目を開けた、勇一の視界に、矢を装填し終わった敵の姿が映る。

 また、ニエスを狙おうとする。

 その敵に狙いを定め、勇一は、冷静に引き金(トリガー)を引いた。


 光の筋(レーザー)が、暗い森の中を切り裂き、敵に十字を刻みつける。


 すぐさま、もう一人の弩(ボーガン)を構える敵にも狙いを定め、引き金(トリガー)を引く。

 その敵もレーザーで、体に十字を刻まれ、転倒した。


「大丈夫かユーイチ?」

 後ろからディケーネが、声をかけてくれる。

「大丈夫ですか、御主人様?」

 ニエスが横から心配そうに声をかけてくれる。

『大丈夫でしょうか?』

 タッタまで、無線ごしに心配してくれる。


 少なくとも……今の俺は、一人じゃないな。

 ちいさく 深呼吸をする。

 そして、改めて覚悟を決める。


 レーザー小銃(ゴーク)をかまえ、街道の前方を走る、敵の集団に向かって狙いを定めた。

 引き金を引く。引く。引く。

 幾本もの光の筋(レーザー)が、数人の敵の背中に十字を刻みつける。

 十字を刻まれた敵は、次々と馬から転倒し、集団から脱落していく。


 目の前の敵の集団が、左右に分かれ、道からはずれた森のなかを走り始める。

 まずは、長距離から攻撃できる弩(ボーガン)を持った敵がまだ残っていたら、優先的につぶそう。

 そう思い、左右を見渡す。

 だが、巧く見つけることができない。

 それとは別に、森の中で、ポツンと、白い光が灯るのが見えた。


 なんだ?

 そう疑問に思った次の瞬間、火の球が飛んできた。


「弩《ボーガン》の次は、魔法か!」


 またも、マントを翻し、包み込むようにニエスを横から抱きしめようとする。

 ニエスは、勇一が抱きしめやすいようにと椅子から背を浮かせ、少し体を傾けてくれる。

 そのうえ抱きしめた瞬間、なぜかニエスがほっぺたに軽くキスしてくれた、が、反応している暇がない。

 背中にドンと重い衝撃が走る。

 マントを通して、熱が伝わってくるが、それ程の熱さでもない。

 すぐさまレーザー小銃(ゴーク)を構える。

 魔法を打ち終わった、魔術師が馬の上で無防備な状態になっているのが見えた。すぐさま打ち抜く。


 周りに目をやると、またも森の中で、光が灯る。

 ポツン、ポツン、ポツンと時間差で六つ。


 やばい! 一気にくる!

 集中しろ!

 呪文詠唱(タメ)の有る攻撃なんて、FPS(ゲーム)でも絶好のカモだろうが!


 自分自身に活をいれて、神経を集中する。

 狙いを定めレーザー小銃(ゴーク)を連射する。

 光の筋(レーザー)が奔り、灯った光を次々と打ち抜いていく。

 だが、五つ打ち抜いた所で、時間切れだった。


 最後の一つの光から、火の玉が飛んでくる。

 また、勇一はマントを翻し、包み込むようにニエスを横から抱きしめる。

 しかし、ギリギリまで射撃をしていた為に、タイミング遅れた。

 ニエスは完全に包みこんだものの、慌てたせいでレーザー小銃(ゴーク)をつかむ自分の手が上手くコートの中に隠れきれていない。

 ドンと肩の辺りに衝撃が来ると共に、コートからはみ出た左手の甲に、熱と鋭い痛みを感じる。


 痛みをなんとかこらえながらレーザー小銃(ゴーク)を構え、すぐさま敵に光の筋(レーザー)を打ち倒す。


 なんとか敵の攻撃を退けた。だが、上手く左手の力が入らない。

 チラッと左手の甲に目をやると、酷い火傷をおっていて、皮がベロリと剥けけている。

 すぐさま、続きの魔法攻撃が来たら、対応が難しい。

 それでなくても、六つ以上の攻撃が一斉にきたら、打ち崩せない。


 焦る勇一をよそに、次の魔法攻撃がこなかった。

 戦闘の最中だが、僅かに間(ま)ができた。

 その間(ま)に腰のバッグから薬瓶を取り出し回復薬(ポーション)を左手にかける。


 助かった。どうやら魔術師は、もういないのか。

 俺も、なかなか運が良いな。

 勇一の知らぬことだが、馬を巧く操り全力疾走させながら魔術を使える、そんな器用な魔術師は数が少ないのだ。

 十人程も揃えている、この集団の方が異常なくらいだった。


 ピー、ピーー

 また口笛が聞こえた、と思うと同時に、一気に敵が迫ってくる。

 疾走する電動バギー(ピェーピェー)に平行して走りながら、左から三騎、右から三騎。

 剣や斧を手に襲い掛かってきた。


 左の三人へ向かって三連射。

 三本の光の筋(レーザー)が奔る。三騎の胸に、それぞれ十字を刻みつけて、打ち倒す。

 だが。右から迫る敵への対応が、まったく間に合わない。

 敵が手にする剣が振り上げられ、ニエスに迫る。


 ヒュンと空気を切る音が響いた。

 光の剣と化した光の筋(レーザー)が、振り上げられた剣を腕ごと切り落とす。

 それは、ディケーネの手によって光の剣と化したレーザー拳銃(レイニー)による攻撃だった。

 フッ!

 ディケーネが、短く息を吐く。

 さらに、右から迫ってきていた三騎の敵を、光の剣が切り刻む。

 敵が、一瞬でズタズタの肉塊と化す。


 間髪いれずに、すぐにまた敵が迫る。

 ニエスが運転する電動バギー(ピェーピェー)に平行に走りながら敵が襲ってくる。

 だが、少し距離が有る内に、勇一のレーザー小銃(ゴーク)が次々と敵に、十字を刻み、打ち倒す。

 その隙をついて、近づいてきた敵を、光の剣と化したディケーネのレーザー拳銃(レイニー)が、切り刻む。

 見事なまでの連携で、襲いくる敵を次々と屠っていった。

 

 それでも、やはり敵は諦めない。

 怒涛の勢いで次々と、まわりの森の中から敵が飛び出して襲い掛かってくる。

 一手でも間違えて、突破されたら、それはすぐさま死に繋がる。

 神経を集中して、次々に敵を屠っていく。

 勇一達は、現状を維持するだけで手がいっぱいだ。

 だが、敵にも決めてがない。

 若干の膠着状態に陥った。

 

 するとまた、ピィーーと、口笛が森の中に響くのが聞こえた。

 嫌な予感しかしない。

 そう思うと同時に、すぐ目の前に、二騎が飛び出してきた。

 すぐさま、レーザー小銃(ゴーク)打ち抜く。


 あ、しまった。やられた。


 打ち抜いた二人の敵と、地面に倒れた二匹の馬がもつれ合っって、行く手を塞ぐ。

 完全に撃たれることを覚悟のうえで、道を塞ぐ為に飛び出してきたのだ。


「避けます!」


 ニエスが声を上げて、右にハンドルを大きく切り、前方の障害物をなんとか避ける。

 車体が大きく傾いて揺れる。

 特に、後ろに立ち乗りしていたディケーネはバランスを崩してしまった。

 其の隙を相手が見逃すはずがない。

 右から大男が両手の武器を捨てて、電動バギー(ピェーピェー)へと飛び掛かってきた

 電動バギー(ピェーピェー)の鉄パイプをつかみ、腕の力だけで車体の側面にすがりつく。


 好機と判断した敵が、更に襲い掛かってくる。

 ディケーネがバランスを崩しながら、後ろから迫る敵と対峙する。

 勇一はレーザー小銃(ゴーク)を連射して、左右から迫り来る敵に次々と十字を刻み、打ち倒す。

 その僅かな間に、大男が鉄パイプをつかむ腕に力をいれて体を引き上げ、車体に足を架けた。

 大男の手が、助手席のニエスに迫ってくる。


 勇一が、すぐさま、車体の右側に取り付いた大男へレーザー小銃(ゴーク)を向けようとする。

 だが、ニエスが間にいるために巧くねらえない。

 下手に撃つとニエスに当たってしまう。いや、レーザー光線は僅かにカスるだけでも、皮をはぎ肉をえぐってしまう。

 相手も、それがわかっているらしく、ニエスに隠れるように体を動かす。


 さらに左から、別の敵が襲い掛かってきた。

 同時に、大男の手がニエスの首元へと伸びる。ニエスが、片手で運転して、片手でその手を払いのけようとするが巧くいかない。

 レーザー小銃(ゴーク)で大男を狙うが、間にいるニエスも動いてしまうので、やはり危険で引き金がひけない。

 左から迫る敵の長剣が振り上げられ、勇一の頭上でギラリと鈍く光る。

 大男の太い指が、ニエスの細い首に触れるようとする。


「ダアアアア!!」

 勇一が雄たけびを上げる。

 右手一本で、レーザー小銃(ゴーク)を使って、大男を殴りつける。

 左手で、無理矢理に腰からレーザー拳銃(レイニー)ぬく。と、同時に、長剣を振り上げた敵の腕を、光の筋(レーザー)で切りつけた。


 肘から先の部分を光の筋(レーザー)に切断された敵が、バランスを崩し馬から転げ落ちていく。

 殴られた大男はうめき声を上げて、手を引っ込めたが、まだ車体にはへばりついたままだ。


 その大男の手を、周りを屠り終わったディケーネのレーザー拳銃(レイニー)が、切りつける。

 車体にパイプにしがみついていた大男は地面に落ち、一度大きくバウンドした後に、はるか後方へとゴロゴロと地面を転がっていった。


やっと レーザーライフルが火を噴きました。

ここまで読んで下さった皆様本当に有り難うございます。


まだまだここからですので、宜しくお願いいたします。


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