14 十字
意気揚々と、外に出たまではいいが、外はすでに夕方で日が傾き始めていた。
夜の森の中を移動するのは危険だ。
ちょうど森の中に若干開けた場所があったので、そこに装甲指揮車を止めてキャンプをすることにした。
薪をあつめて焚き火の準備をしていると、ドローン『タツタ』が、フワリと寄ってきた。
「もし、ここで一晩過ごす予定でしたら、まずは装甲指揮車を待機モードに変更し小型核融合原動機で発電、及び他の機器への充電を行うことを推奨いたします。
また、別途ご命令いただければ、周辺監視を強化する処置を取ることも可能です」
「お、なるほど。発電と、電動バギーへの充電をやっておかないといかんよな。あと周辺監視って、どんな感じで行うんだ?」
「本来は衛星軌道上の監視衛星と連携をとり、広範囲かつ詳細な監視が可能でしたが現状ではそれらの多くの機能は使用不能となっております。
そのため熱画像計測装置とレーダー波を使っての簡易な周囲監視のみが可能です。周辺監視を行いますか?」
「やってくれ」
たとえ簡易的でも周辺の監視が行えるってのは、かなり嬉しい。
外でキャンプをする場合、夜の闇の中からいつ魔物が来るかと不安になりながら行う夜の番はかなり神経をすりへらす。
勇一はもちろんだが、かなり熟練の冒険者が注意していても、眠気で注意が散漫になり、闇に乗じて近づいてくる魔物を見落としてしまう可能性がある。
その危険性が少しでも減らせるだけで、かなり大きなメリットだ。
すべてのキャンプ準備を終えても、まだ日は落ちきっておらず、周囲はまだ明るかった。
「よし、では、やりたかった アレをやろう」
アレとは、もちろん『試し撃ち』だ。
レーザー小銃とレーザー拳銃を両手に持つ。
思わず頬ずりしたくなる。
実は勇一は、VRFPS こと、バーチャルファーストパーソンビューシューティングのゲーマーだ。
VRゴーグルと、銃型操作機を使って、近未来を模して作られたバーチャルの世界の中で撃ち合いをするゲーム『オーバーテクノロジーウォッチ』のヘビーゲーマーだった。
ある理由で部活を止めて以来、殆ど毎晩、バーチャルな戦場を駆け回ってきた。
ゲーム内のランキングで、日本十位に入ったこともある。
そんな勇一が、レーザー小銃を撃つ事に対して、ワクワクしないはずが無い。
「もう、ぶっちゃけて言っちゃうとさあ、
異世界とか魔法よりも、こっちのほうがワクワクするんだよね!!」
まずはレーザー拳銃を持ち出して試してみる。
ディケーネと、ニエスも興味深々で、その様子を見ていた。
レーザー拳銃の見た目の印象は、『とにかく短い!』だ。
いわゆる銃身と言われる部分が非常に短い。
普通の拳銃は、弾丸の軌道を安定させるために、ある程度の銃身の長さが必要になるのだが、レーザー拳銃には、その長さが必要ない為だろう。
手に握るグリップの部分の長さに比べ、極端に銃身が短いため、全体のシルエットは縦にながい。
そのうえ、トリガーガードが、人差し指部分だけでなく手の甲を全体をつつむような形になっている。
パッと見た目、ナックルガードか、何かの様に見えなくも無い。
「なあタッタ。これって普通に引き金を引けば、レーザーが出るんだよな」
すぐ近くでフワフワと浮いているドローン『タツタ』に聞いてみる。
「はい、こちらの四菱CDI社製のレーザーピストル『LB-P-02式』は、安全装置を解除後に、トリガーを引くことによって、銃口より10ミュウのレーザー光線が射出されます。
またレーザー光線の射出時間はモードによって変更可能です。『短射モード』では0.012秒間、『長射モード』では0.256秒間の射出が行われます。
有効射程距離は『短射モード』で100m、『長射モード』で40m、十分な攻撃力を発揮する射程範囲は18m程になります。
レーザー光線の焦点距離が比較的短く設定されている為、攻撃対象物から距離が離れると、極端に威力が低下しますのでご注意ください。」
「よく解らんが、とりあえず、やってみるか」
まずは、安全装置をはずす。
両足を肩幅に開いてから、効き足を少し引いて半身に構える。右手でレーザー拳銃構え、さらにその上に左手をそえて、固定する。
ウィーバースタイルと呼ばれる、拳銃を撃つ際の基本中の基本の構えだ。
勇一は軍事オタクと言える程の知識はないが、それでもこれぐらいは知っていた。
其の姿勢で、近くの直径で3メートルぐらいありそうな大木に向かって、狙いをつける。
トリガーを引く。
ヒュンと言う風切り音と共に、ほんの一瞬だけ、銃口から光線が射出される。
光線が大木に小さな黒い穴が穿つが、貫通できていない。
どのくらい深い所まで穴を開けたのかは、見た目からは解らなかった。
「ほう」
「離れた場所に、穴を開ける道具なんですね」
ディケーネと、ニエスが関心している。
だが、正直に言って、さっき初めて電動バギーに乗ったときに比べて明らかに感動の度合いが低い。
まあ、見た目だと、"木に小さな黒い点を空けただけ"だからなあ。
正直、こりゃ、微妙だ。
これって、もし魔物の手足に当てたとしても、小さな穴が開くだけだよな。
たとえ貫通しても大きなダメージを与えるとは、言いがたいぞ。
至近距離から、ピンポイントで 頭を打ち抜くぐらいしないと、魔物を倒すことは不可能なんじゃないか?
普通の拳銃とかの方が、魔物に対しては有効なんじゃないか?
最新鋭の武器がいいとは限らないって事かあ。
「あ、そういえばタッタ。さっき射撃モードでどうのこうの、射出時間が変化するとかって言ってたけど、それってどうやって使いわけるんだ?」
「今、お使いした『短射モード』は、レーザー光線の射出時間が0.012秒間で、攻撃面がほぼ点になります。
『長射モード』は射出時間0.256秒間になりますので、射出時にレーザーピストル本体を意図して動かすことによって、攻撃面を広げることが可能です。ただ、その分、射程距離等が低下しますのでご注意ください」
なるほど。
本体をわざと動かして、敵を傷つけるのか。
今度は『長射モード』に切り替えて、銃口を大木に向ける。
トリガーを引く瞬間に、レーザー拳銃本体を、わざと左から右にずらすように動かしてみた。
ヒュンと先ほどと同じわずかな風きり音と共に、今度は動かした分だけ横に幅広い光線が走る。
大木は、小さな穴ではなくて、光線の幅の分だけ刻まれる。
「おおお、すごいな」
「これは、すごいですね」
大木についた切り傷を見て、二人もさっきより明らかに感心している。
まあ、さっきは見た目は、単なる小さな穴だったからな。
こっちの方が小さな穴にくらべて、見た目でどれだけのダメージを相手にあたえられる攻撃力があるのか解り易い。
それにしても、レーザー拳銃は、こうやって使うのか。納得した。
魔物に対して使う場合は、『長射モード』で使用した方が、攻撃能力が高そうだな。
その後も、何度か銃身を動かしながら大木の表面に切り込みをつける。
しかし、何だかどうもしっくりとこない。
・両手でしっかり固定して狙いをつける。
・トリガーを引くのとほぼ同時に、本体を動かす。
この二つの動きが、基本的に相反する動きで、正確にすばやく行うのが非常に難しい。
何度も繰り返すその様子を、ディケーネがじっと見つめてくる。
とても何か言いたそうな表情を浮かべている。
「ディケーネ。見ていて、なんか気がついたことでもあるのか?」
「うむ、ユーイチ。
その道具の使い方だが、間違っているのではないか?」
なんか、いきなり"間違っている"と、駄目だしされてしまったぞ。
いや、もちろん俺だって本物の銃の撃ち方なんてネットの中の知識でしか知らないが。
それでも、まさか、銃を始めてみる異世界の人にレーザー拳銃の使い方を、駄目だしされるとはおもわなかったぜ!
ゲームの中のバーチャル世界の話ではあるが、射撃に関しては、かなりの腕前だった。
レーザー拳銃を撃つ姿勢も、ウィーバースタンスと呼ばれる拳銃を撃つ際の、『基本中の基本』の姿勢だ。
これを間違いだと言われても、正直納得がいかない。
「じゃあ、試しに使ってみてくれよ」
ディケーネにレーザー拳銃を渡す。
と、すぐさまドローン『タツタ』が横槍を入れてきた。
「他者が、レーザー拳銃を使用する際は、管理者権限を持つイオキベ ユウイチの許可の基で、『使用者権限』を設定する必要あります。
なお『使用者権限』の設定は各機器個別で行う必要がありますのでご注意ください。
レーザー拳銃への『使用者権限』の設定をおこないますか?」
「解った解った。設定してくれ」
「了解しました。レーザー拳銃へのディケーネ・ファン・バルシュコールの『使用者権限』を設定いたしました。
すでにディケーネは生体登録はすんでいるので、使用設定自体はすぐに済んだ。
レーザー拳銃を受け取ったディケーネは、形状やトリガーを確認する。
勇一とニエスから、少し離れた所に歩いていく。
そして安全装置をはずし『長射モード』にしてから、右手にしっかりとレーザーピストルを握る。
そして、おもむろに天に向かって右手を伸ばした。
レーザー拳銃の銃口は、そろそろうす暗くなり一番星が光はじめた空に向いている。
「何だ、そりゃ?」
思わず、勇一がそうつぶやいた、その時--
ディケーネが右手を、斜めに振り下ろす。と、同時に引き金を引いた。
射出されたレーザー光線はその瞬間、まるで光の剣と化し、前方にある細めの樹木を見事に断ち切った。
切断された樹木はゆっくりと倒れていく。
樹木が切断された衝撃で、数十枚の葉っぱが空中を舞う。
さらにディケーネは、目にも止まらぬ速さでレーザー拳銃を左右に振り回しながら数回トリガーを引く。
ヒュンヒュンと風きり音と共に、光の剣と化したレーザー光線が次々に空中を舞う葉を切り裂いていった。
「すげーー! かっこいい!」
「すごいです!」
勇一とニエスが、思わず見とれる程のすばらしい攻撃だった。
「ユーイチ、この武器はたぶんこうやって使う物だと思うぞ」
いやいや、元の世界の常識では、俺の使い方が正しいと思うぞ!
だが、確かに、ディケーネ程の剣術の能力を有する者ならば、この使用方法のほうが明らかに有効的だ。
勇一はレーザーピストルをあくまで弾丸がレーザーに変わっただけの拳銃の延長線上の物だという考え方にしばられていた。
何の予備知識もなく、純粋に武器として使用する方法を考えたら、こうなるのかもしれない。
それでも、勇一は、一つだけ気になることがある。
「その使い方だとレーザーの出る方向が違うから、使いにくくないか?」
「方向が違う? 何のことだ?」
勇一は、レーザー拳銃を受け取る。
グリップを握り、右手をまっすぐ前に向けて伸ばす。
この状態だと、もちろん銃口は前方を向いている。
「この状態で、前に向かってレーザー光線が出るのは使いにくくないか?
剣の様に使うなら、グリップを握った状態で、そこから上に向かってレーザー光線がでた方が使い安いんじゃないかと思ってさ」
元の世界のビームサーベルやライ○セーバーなどは、グリップを握った状態で、そこから上に向かってレーザーっぽいものを射出して、光の剣が形成されていた。
剣の様に扱うなら、見た目からしても剣に近い、そっちのほうが使いやすいんではないだろうか。
「何を馬鹿な事を言ってるんだ。剣の刃先方向に向かって攻撃できたほうが便利に決まってるいるだろう。
ユーイチは剣術になれていないから、その道具の使い方が解っていないのだ」
完全に俺の方が間違ってるっぽい、言い方だ。
うーん、そうなのか?
なんか納得しずらいぞ。
「ユーイチよ、試しに何度か振ってみれば解ると思うぞ。」
ディケーネに言われるままに、レーザー拳銃を振り下ろしたり、左右に振ったりして使ってみる。
「あ、なるほど。そういうことか。」
やってみると、すぐに納得。
もし、ビームサーベルの様なグリップから上にむかってレーザー光線がでる形状だと、剣のように最後まで"振りきる"動作を行わないと、前方に攻撃できないのだ。
自重や振る勢いを利用して、たたきつける様に切る剣ならば、確かに"振り切る"動作が必要になる。
でも、レーザー光線には、そんな大きな動きは必要ない。"振り切る"動作をせずに前方に攻撃しようと思うと、前方にレーザー光線を向けるためには、わざわざ手首を曲げないといけないのだ。
それに対して、レーザーピストルの形状だと、少し振り下ろす動きをするだけで、前方に切りつける様に攻撃できる。
実際にレーザー拳銃を持たなくてもいい。
剣などをイメージして拳をふり回してから、前方に出るレーザー光線で切り裂くイメージをして拳をふりまわしてみると、すぐに実感できる。
アニメや映画にでてくる、ビームサーベルやライト○ーバーのイメージが頭に定着しすぎていたが、絶対にこっちの方が使いやすい。
元の世界のライト○ーバーとかって、あれは多分、見た目のかっこよさ重視なんだよな。
なんか『目から鱗』な気分だった。
続けて、レーザー小銃を試してみる。
見た目は、これまたライフルと言う名前から想像する形と比べて銃身がかなり短い。
短めの突撃小銃と言うより、大き目の短機関銃といった感じだ。
そして、見た目以上に軽く、扱いやすい。
「タッタ、これも普通に引き金引けば、撃てるんだよな」
「はい、こちらの四菱CDI社製のレーザー小銃『LB-R-59式』は、安全装置を解除後にトリガーを引くことによって、銃口より18ミュウのレーザー光線が射出されます。
またレーザー小銃は、『短射モード』と『バーストモード』の二種類になります。
有効射程距離はそれぞれ、『短射モード』で600m、『バーストモード』で180m程になります」
うん、やっぱり聞いても良くわからん。
とりあえず撃ってみることにする。
まずは『短射モード』にして、近くの大木に向かって、試し撃ちしてみる。
レーザー拳銃に比べると、威力が大きい分、大木に穿たれた穴も大きい。
50m程離れた距離にある大木に向けて試し撃ちしてみると、ほぼ同じサイズの穴が穿たれた。
威力が強く、射程距離が長いが、根本的にはレーザー拳銃と、あまり変わらない。
「うーん。やっぱり今ひとつだな。
いや、そういえば、もう一つモードがあるっていってたじゃないか。
タッタ。もう一つのモードってなんだったっけ?」
「レーザー小銃にある、もう一つのモードは『バーストモード』になります。
『バーストモード』は、一般的な銃器の複数弾丸の発射機構と同じ名前を使っていますが、内容はまったく別の物となります。
引き金を引くとレーザーを0.128秒間射出します。それと同時に、射出している0.128秒の間、本体は静止したまま、銃口のみを自動的に、僅かに上下左右へと振る動きを行います。この動きによって攻撃面を広げ、殺傷能力を向上させます」
説明だけ聞くと、どんな感じなのか想像しずらい。
ただ、"殺傷能力を向上"と、いう言葉の響きから、なんだかえげつない感じは受ける。
とりあえず、勇一はやってみることにする。
レーザー小銃を『バーストモード』に切り替えてから、しっかりと固定して大木に狙いを定める。
トリガーを引く。
レーザー光線が空気を切り裂き、大木を傷つけた。
なんだこれ?
これってブラックジョークか、なんかなのか?
大木についた傷をみた勇一は、思わず、笑ってしまった。
『パーストモード』では射出中に自動で銃口を上下左右に振る動きをしている。
その動きにによって大木についた傷は、縦に4cm、横に4cm程の二本の直線が組み合わせた形になる。
そう、大木にきざまれた傷は まるで"十字架"の様な形をしていたのだ。
「これって真面目につくった結果なんだろうけど……。
いや、いや、絶対に作成した人の中に、ちょっと中二病的な人がいて、狙ってつくってるだろ、これ」
試しに、近くの大木を狙って引き金を引くときに、おどけて叫んでみる。
「我の聖なる力、光の十字架を受けてみるがいい! くらえ! ライトニングクロス!!」
銃口からレーザーが奔り、大木に見事な十字が刻まれた。
横でディケーネが『何を言ってるんだ、お前は』的な目で見ていて、ちょっと恥ずかしくなってきた。
たぶん、もう2度と叫んだりしない。
とりあえず、三人とも腰にホルスターを付けて、レーザー拳銃と、予備のバッテリーを常時携帯することにする。
レーザー小銃とに関しては、勇一とディケーネは、肩紐を使って肩に掛けておく事にした。
ニエスは運転の邪魔になるので、携帯しない。
迷彩服等もあったので持ってきていたが、女性陣にはかっこ悪いと大不評だった。
自分も魔法のローブのほうが、性能がいいので着るのを止めた。
だが、勇一は暗視ゴーグルだけは、首にかける。
見た目はスキーやスノーボードで使うような大き目のゴーグルにそっくりだ。
暗視だけでなく、熱反応探知や、望遠機能、録画機能もついているので、どこかで使う機会があるだろうと思い、とりあえず首にかけておくことにした。
他には、細かいが、三人とも無線機を取り付けた。
超小型のテレビのアナウンサーなんかが使っている集音マイクにそっくりの見た目で、服の襟元に取り付けている。
本来は、中継衛星を使って数百キロ離れた距離の相手とも話しが出来るという凄い代物なのだそうだが、現時点では、|装甲指揮車を中心に半径数キロくらいでしか使えないらしい。
それでも、無いよりはずっといいので、使用することにした。
「ユーイチ、もう、くどくどと、これらの魔法具について詳しく説明しろとは言わない。
ただ、指示を受けたりする場合にも困るので、ちゃんと各魔法具の名前くらいは教えてくれ」
む、確かにそうだな。
各機器についての正式名称で呼ぶと、どれもこれも長すぎるので、愛称が有る物はその愛称で呼び、無い物は決めていくことにする。
まずは装甲指揮車だ。ちなみに、これはすでに正式な愛称があるので、そのまま使うことにした。
「このでっかい鉄の車の名は『クーガースリー』だ」
「スリーは三代目とかそんな意味だろうからいいが…クーガー? クーガーってピューマの別名だろう? この大きくて鈍重そうな乗り物の名がピューマなのか?」
「クーガーって言うより、ビッグトータスとか、アイアンヒポポタマスとかの方が似合いそうですよねー。なんでクーガーなんです?」
いや、俺に聞かれても困る。
名づけた奴に聞いてくれ。
非常に不評だったが、とにかく、呼び名は装甲指揮車に決まった。
次にレーザー拳銃と、レーザー小銃だ。
「なあ、タッタ。この二つって愛称ってあるのか?」
「レーザーピストルは正式名称『LB-P-02式』に対して、現場では『02』と呼ばれていました。
レーザーライフルは正式名称『LB-R-59式』に対して、現場では『59』と呼ばれていました。
なるほど。
勇一が、ディケーネとニエスに説明をする。
「こっちの小さいほうが、『02』で、長くてでかいほうが、『59』だ」
「この光の剣のほうが『レイニー』で、十字を刻むボウガンのほうが『ゴーク』だな」
「『レイニー』と『ゴーク』ですね。覚えました」
うーん。発音がかなり違う気がするが、こっちの異世界の言葉の発音だと、そうなってしまうんだろう。
まあ、こっちの人の発音に合わせるか。
そんな訳で『レーザー拳銃』 と 『レーザー小銃』に決まる。
そして、電動バギー、電動バイク、電動ジャイロらには、タツタの説明では"愛称が無い"との事だった。
「電動バギーとか呼ぶのもなんだし、なんか愛称つけるかな」
「はいはい、御主人様。この"馬無しで走る馬車"には、私が名前付けたいです」
ニエスが電動バギーを指差しながら、そういってきた。
電動バギーを一番長い時間運転しているのがニエスなので、もうすでにけっこうな愛着があるようだ。
「じゃあ、ニエスに名づけてもらおうかな。」
「やったー。それでは、私が名前つけますね。どんな名前がいいですかねー」
ニエスは電動バギーに近くで、腕を組んでちょっと悩む。
「決めました。 彼の名前は『ピェーピェー』ちゃんです!」
失敗した!
まさかニエスのネーミングセンスがこんなに特殊だとは思わなかった!
勇一は思わず頭を抱えるが、嬉しそうに『これからも、宜しくねピェーピェーちゃん』と、話しかけているニエスを見ると、いまさら駄目だとも言うわけにはいかない。
電動バギーに決定してしまったのだった。
残りの電動バイクと電動ジャイロは、勇一があわてて適当に名づける。
電動バイクは、バイクと言ったらこの名前しか思いつかなかった 電動バイクにして、
電動ジャイロは、もう単にインスピレーションにしたがって 電動ジャイロとした。
他にも機器はあることあるが、とりあえずこれだけ決めれば問題ないだろう。




