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12 真実

「足元に気をつけながら、ついて来い」


 ディケーネはダンジョン用に準備した盾をかまえ、後ろの二人にそう言ってから、地下へと続く階段へと踏み込んでいった。


「奥からは、何も聞こえませんねえ」


 後ろをニエスが、肩まである茶色髪の頭のの上にちょこんとのっている"耳"をヒクヒクさせる。

 半人半猫種のニアスは音や光に非常に敏感なのだが、そんな彼女でも何も感じ無いらしい。


 勇一は、黙って二人についていく。


 ディケーネは、勇一に対して違和感を感じていた。

 初めてのダンジョンで緊張している、と言った訳ではなさそうだ。

 少し青い顔をしてこの霊廟につく少し前から、何かを考えこむようにずっと押し黙っている。

 そんな様子の勇一が、心配になってくる。


「それにしても、このダンジョンってすごく変ですよねえ。

 壁も他のダンジョンと違うし、空っぽですし、ここまで結局魔物も一匹も出会わなかったですよ」


 ディケーネの考え事を、遮るようにニエスが聞いてきた。

 今はダンジョンの中なんだ。余計な事を考えて注意散漫になってはいけない。

 前方に改めて意識を集中して、振り返らずに答える。


「確かにこの『嘆きの霊廟』は、他のダンジョンとは色々と違うな。

 空っぽなのは、この『嘆きの霊廟』が発見されてからすでに三百年程経っていて、粗方の物は持ち出された後だからだ。発見された当時は非常に珍しい品々が大量に見つかって話題になったと今でも語り告がれているぞ。さらに、一つの部屋あつめられた大量の遺骨も見つかったため、ここは滅んだ古代神を祭る神殿か、あるいは霊廟だったんじゃないかと推測されているらしい」


「だから、このダンジョンは、通称『嘆き霊廟』と呼ばれているんですね。

 でも、霊廟ってお墓のことですよね。えっと、お墓とかを荒らしたら、呪いとかあるんじゃないですか?」


「何をいまさら。もともと"墓荒らし"なんて冒険家の得意分野だ」



 そんな会話をしていると、階段を折りきった先に巨大な鉄の扉が行き手を塞いでいるのが見えてきた。

 少し手前で、ディケーネが足を止めた。


「あれが最深部だ。この『嘆きの霊廟』には、お宝と共に、古代の邪神が眠っているとも言われている。もし本当に古代の邪神が眠っているのなら、あの鉄の扉の向こうだろうな」


「じゃ…邪神がいるんですか?!」


 ニエスが怯える。

 いままで一番後ろで二人の会話を聞いていた勇一が、唐突に歩きだし、鉄の扉に近づいた。


「まて! まだ見つかってない罠があるかも知れん、不用意に近づくな!」


 ディケーネの注意を無視して、勇一が鉄の扉に近づいていく。

 すると、侵入者を阻むように、鉄の扉が周辺が赤く光りだした。

 それを無視して、勇一が鉄の扉の横で、財布から市民カードを取り出して、ドアの横のスリットに通そうとする。

 危険を感じたディケーネが走り寄り、制止しようとする。


「今までも何度か挑戦して、この扉は簡単には開かないことが解ってるんだ。無茶をせず、慎重に行動するんだ!」


 それでも、無視して、自分の作業を続ける。

 勇一が、扉の横にあるスリットに市民カードを通すと、いきなり鉄の扉が、音も無く開いた。


「開いた? どういうことだ?」


 鉄の扉の奥は暗闇だった。何も見えない。

 混乱するディケーネを置いて、勇一がその闇の中へ入っていく。


「だから、危ないと言っているだろうだろう!」


 言っても無駄だと悟ったディケーネは、あきらめて勇一を追って、闇の中へと入る。

 中では、まったく何も見えない。自分の手さえ見えないくらいの完璧な暗闇だ。


 ふいに強烈な光が灯る。

 光は一つだけでなく、どんどんとその数を増やしていく。

 先ほどまでは闇に慣れていた目が、あまりに強い光に視界を奪われて、真っ白にそまっていく。


「魔法攻撃?! まずい」


 視力をほぼ失った状態でディケーネは即座に判断する。

 盾を捨て、近くにいるであろう勇一を手探りで探す。

 指先が触れる。

 左手で庇うように抱きしめ、右手の剣を襲いくるであろう敵に備えて構えた。




 ………


 そのままの状態で、さらに十数秒が経つ。

 少しづつ目が慣れてきて、周りを見ることができた。

 そこは広い空間だった。闘技場くらいの広さがあるだろうか。

 何に使うのかまったく解らない不思議な物体がいくつも置いてある。

 その空間の奥のほう方で"何か"が動いた。

 ふわりと浮かび上がった"何か"は、空中を漂うようにゆっくりと近づいてくる。


「あれって、何でしょう?」

 入り口から恐る恐るはいってきたニエスが聞いてくる。


「魔物……と、言うよりは、ここを守る精霊か何かみたいだな」

 ディケーネが、警戒をくずさず剣をそちらに向けている。

 ゆっくりと近づいてきた"何か"は空中で停止した。


「○@ニ△ワ」


 いきなり、"何か"が話しかけてきた。

 人間の女性のような声だ。

 ディケーネが警戒して剣をむけるが、それを無視して"何か"は喋り続ける。


「△ン○@@△レバ、@○セク○@¥ハ、○○△FF@@ジ□ウ○#@シ、~よう#@@せん。○◇¥>、カいじょ○△△△F!ゲンzM#@*?マ ○△ア~_!◆○¥¥◇○・?>。○◇|・「:◇○○@?」


「なんて言ってるんですかね?」

「解らない。聞いたことない言葉だ。敵意は無いらしいけど、これでは交渉のしようもないわね」

二人は途方にくれる。


 勇一が空中に浮かぶ"何か"に向かって、一歩前に進み出る。

 そして、『日本語』で問いかけた。


「おまえは 何なんだ?」

「ここの機器の管理を任された、人工知能登搭載非戦闘型ドローンの『タツタ』です」


「ここにある機器、全部が使用可能なのか?」

「はい。使用可能です。

 先ほども言わせていただきましたが、現在これらの機器の使用禁止処置は解除されております。

 また、この空間は完全密閉されていた為、経年劣化による故障等もほぼゼロで、すぐに使用可能な状態です」


 勇一と、ドローン『タツタ』は、『日本語』で会話をしている。

 『日本語』が解らないディケーネと、ニエスは、訳がわからないとポカーンとしている。


 勇一が、頭にかぶっていたフードを取る。


「ここの機器は、何がどれだけ残っているんだ?」


「主要機器のリストを読み上げます。


 装甲指揮車         1台

 電動バイク         2台

 電動バギー         2台

 電動小型ジャイロ      2台


 電動強化外骨格       2式

 遠隔攻撃型ドローン     2台 


 レーザーライフル      24丁

 レーザーピストル      24丁

 電気ロッド         24本

 部隊標準兵装        24式

 電子式小型破壊装置     512個


 その他に、六十四種の試作品と、各種兵装交換部品及び、予備部品等があります。」    


「ここの機器は、なにで動くんだ? ガソリンなんかが必要なのか?」


「ガソリン等の燃焼系燃料は一切必要ありません。

 装甲指揮車は小型核融合原動機を搭載し、本体のみで理論上は半永久的に稼動可能となります。

 装甲指揮車以外の機器は、すべて電気によって稼動いたします。」


「ガソリンとかは必要ないのか。

 電気の供給はどうなってるんだ?」


「ここよりさらに地下に、核融合発電施設を有しております。

 起動後は、理論上半永久的に電力の提供が可能です。

 また、装甲指揮車には簡易的な発電機器も搭載しております。

 装甲指揮車自身の稼動を停止中であれば、発電機を動かすことによって、他の機器の充電を行うことも可能です」


「こいつは、思っていた以上にすごいな。って、いうか、すごすぎる!!」


 ずっと黙りこんでいたのが嘘のように、勇一は興奮気味に、大きな声をだしてしまう。

 ついさっきまで、この自衛隊のシェルターの存在を知った勇一は、色々と考えこんでいた。

 『ここを異世界だと思っていたけど、違うのか?』『俺は未来にきたのか? 猿の惑星?』『いや、よく似た異世界とか、平行した違う可能性の未来とか』『未来だとしたら、元の世界文明はどうなったんだ?』

 そんな事がグルグルと頭の中を回っていた。

 だが、ここの機器をみたら、あまりの興奮に、そんな"悩んでも答えが出ないこと"なんて、頭の隅に追いやってしまった。


 その様子をディケーネと、ニエスの二人が、微妙な表情で見つめていた。

 特にディケーネは、興奮する勇一を見て、『さっきまで黙り込んでいる様子を、心配していた自分はなんだったんだろう』と、余計に微妙な表情だ。

 さらに、勇一とタツタの会話が理解できない。

 まったく状況のわからない二人は、説明して欲しそうな目で勇一をみるのだが、その勇一は興奮していて二人の視線に気づいていない。


 それから、勇一は、ふと思いついた事を質問してみた。


「そう言えば、ここってどのくらいの間、封鎖されていたんだ?」


「前管理者であるイトウコウヘイ准佐が、ここの活動を停止し封印してからの経過時間は……」


 ドローン『タツタ』は変わらない淡々とした口調で、サラリと言った。


「49万8993年6ヶ月12日と、14時間13分になります」


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