私に害を与えるなら容赦しないよ?
「紅狛か。我を犬扱いするとはな」
「え?嫌なの?でも、契約しちゃったしなー」
「名は気に入っておるわ。ツバキにしては良い名を思いついたな」
あれれ。
人型だからわかるんだろうけどちょっとだけ照れてる…のかな?
『ねぇ、照れてると思う?』
『さすがに照れてるだろうぜ』
『お主らは阿保か?』
「え?なんでベルとの会話に入れるわけ?」
「我とツバキは契約をしただろう。契約するということは精神を相手に見せることだ。召喚士の場合ならば精神は同化しているというのが正しいがな」
紅狛はあきれたようにため息をついた。
「仕方ないじゃん。だってこの世界じゃ生まれて一日も経ってないんだしさ。知らないことのほうが圧倒的に多いわけよ」
「それを助けるためにラファエルがついているんだがな…」
なんか紅狛がすっごい苦労人にみえてきた。
人型だと感情が豊かにでもなるんだろうか?
そんなことはどうでもいいんだけれど話をそらして確かめなくちゃいけないことがあるしね。
さっきの紅狛を縛りたくないだとか意味の分からない感情。
あれは絶対私のものではなかった。
あれは何かに感情を操作されていたに違いない。
確証はない。
これは私の勘だ。
けれど、前世から私は勘の鋭いほうだった。
自分の勘を信じて行動を起こせば失敗はなかった。
今の私の勘が前世のものと変わらないのであればこれはかなりまずい。
私を操ろうとしたのは神様ではないだろう。
神様だったのならば今、私がこんな思考をすることなんて出来てないだろうし、そもそも自覚症状なんてものは皆無なはずだ。
だったら、魔族か?
もし魔族ならばあの魔王がやっていることになる。
でもその確率はかなり低い。
あの魔王のことだ、かなり短い時間しか接していないとはいえあの魔王が私に何かしているとは考えにくい。
この考えを裏付けるのは簡単だろうね。
ラファエルさんとベルが危険だと言わなかった。
これだけで信用するに足りる。
信頼はしないけどね。
さて、なら人間サイドの誰かさんってことになるけど…
心当たりなんて有りすぎてわからないような、無さすぎるような微妙なラインだしねぇ。
「ツバキ、精神が同化しているといったであろう?」
「なに?もしかして考えてることも駄々漏れなわけ?」
「当たり前だ。あまり気にするでない。ツバキが操られたのならば我が救えばよいだけであろう」
あらやだ、この子すっごくカッコイイわ。
そうだよね。
今ウジウジ考えてたってわからないものはわからないし。
こういうのは専門家に任せるのに限るしね!
『てことで、ラファエルさんや。私に精神干渉しようとした馬鹿を見つけ出して―』
『はぁ。ツバキよ、お前は分かっていないだけかもしれないがそういう事はベルに任せたほうがいいぞ。私はお前にどのような術を使って干渉したのかは調べることはできる。がしかし、人物を特定することまではできんだろうな』
『そうそう。俺ってば表じゃ怠惰だけど、本性は……』
『我が知っている知識では復讐だったはずだ』
あー。なんか知ってるかも。
確か復讐が終わって執着するものが無くなって堕落していって怠惰になっちゃったんだっけ?
なるほどね。
今までベルって役立たずかもとか思ってたけど人探しには持って来いってわけだ。
いやぁ、舐めてたわ。