第13話 育成と完成
今日は午後から育成授業がある。
昨日から今朝までの
徹夜の原因となったそれだ。
肩には重いものがのしかかっている。
もし育成授業で能力を使う場面があれば
無能力、
つまりは無能であることが露呈するためだ。
「祈るしかできないなんて
今の時代あり得ない解決方法だ…亅
しかし、無情にも時は過ぎ去ってゆく。
そうして迎えたのが昼休みだ。
「なぁ、佐山、今日の育成授業は
どうなるかな?亅
少し前に聞いたばかりの言葉に
若干既視感を覚えつつ、質問返しをする。
「そういう拓真は
どうなると思ってるんだ?亅
「いやー、先輩から聞いたところによると
育成授業は能力で色々するみたいだ亅
「そ、そうか(色々ってなんだ!?)亅
「色々は色々さ亅
しまった、心の声が漏れていた…
「ところで昨日のことだけどさぁ…ん?
佐山、少し顔色悪いけどどうした?
おお!?大丈夫か!?亅
「何故かお腹が痛いんだ亅
「トイレに急ぐんだ!GO!佐山!亅
「そういうことじゃない…亅
「あ、俺、用事思い出した!
次の授業までにしっかり行っとけよな!
じゃ!亅
そういって風のように鞘木は去っていった。
「何だったんだ亅
とりあえず昼食をたいらげたあと、
学校から少し離れたところにある
センター別館へ向かった。
するとそこにはすでに多くの
クラスメイトと共にタンニンがいた。
整列を済ませる前の
人の輪の中に急いで走っていく。
「おぉーい、遅いぞ、佐山!
どうかしたのか?亅
「いえ、何でもありません亅
「そうか、次からは少し早めにな。
じゃ、整列!体育委員は点呼よろしく!亅
「一、二…三十ハ、全員います!亅
「よし、始めるぞ亅
タンニンはどこからか取り出した機械を
弄り始めた。
すると部屋の周りから別の機械が
幾つか現れる。
「今から能力を使い、
協力してゲームをクリアしてもらう亅
「(お、おぉ…)亅
「内容は様々だがこれにも難易度がある。
ざっと☆1〜☆5 まであるが星の数が多い
ほどそれだけ難易度も上がる仕組みだ亅
「(どういう仕組みなんだ、それは)亅
「協力、討伐などがあるがクリアするまでは
出てくることは出来ないから気をつけろ亅
「先生、それって授業中にクリア出来ないこ
ともありますか?亅
「(止めるんだ、それはフラグだ…!)亅
「仕様だからないことはないだろう。
だが今まで一度もそういったことはない!
だから安心して取り組んでいい。
それに基本は☆3までしか
現れないからな亅
「わかりました!亅
「(これは立っただろうな…
覚悟を決めておこう…)亅
「それで一応だが
この腕輪をまた使う。
今度はどちらでも構わないが
一人一つはめてもらう亅
「あの腕輪か…亅
「そうだ、佐山!
これはこの前使っていたものではないが
そのときのデータが入っている。
授業での能力の進捗状況を
確認するため終わったあとに回収するぞ亅
「よし、説明はここまでにするぞ。
あとは機械の上から行くだけだ!
………さあ、佐山、行ってこい!亅
「俺からですか!?亅
「あぁ、佐山からだ!亅
「わかりました。
ただ一つ聞いてもいいですか?亅
「ん、なんだ?亅
「これはチームですか、個人ですか?亅
「行けば分かる!さあ行くんだ、佐山!亅
「そ、そうですか…亅
これ以上は聞いても仕方がないと思い、
素直に機械の上に立つ。
「よし、腕輪を撫でろ、佐山!亅
真っ赤な腕輪を撫でると視界が一瞬
視界が暗くなりすぐに開ける。
「ここは…どこだ?亅
「先生、
佐山くんはどこに行ったのですか?亅
ある女生徒が言った。
「先生にももちろんわからないことはある。
ただ移動はうまくいったようだ。
皆も行っていいぞ!亅
何人かが一斉に
散らばって機械に向かっていく。
「よっしゃ、行くぞ!亅
「また向こうで会えるといいな!亅
「ああ!亅
「うーん、行こうかな?亅
「ほら、行こうよ亅
各々が移動し、ほぼ全員がいなくなった頃
そこにはタンニンと鞘木がいた。
「鞘木、佐山を頼んだぞ亅
意味有りげに話しかけるタンニンに
鞘木は首を縦に動かす。
「分かってますよ、先生亅
機械の上で腕輪を撫でた瞬間、
最後の生徒が宙に消えた。
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「ま…また一人亅
都合がいいといえばいい、
しかし皆の能力を見てみたいといえば
それも然りなのだ。
ここは無人島のようなところだ。
後ろには見たこともない木々、
目の前には白い砂浜と青く澄んだ海。
バカンスもいいところだ。
凶悪な課題を覚悟していただけに
少しばかり肩をすくめる。
しかし、なぜか頭でじんわりとした警告音が
鳴っている。
ふと腕輪を思い出した。
やはりそこには電子パネルが
展開されていた。
もちろんあの電子娘も。
「あ、アー、漸く気づきましたか。
まぁ、構いませんけどね。亅
「キャロ、今回もよろしく。
ところで聞きたいことがあるのだけど亅
「どうぞ、答えられる範囲で答えます亅
「今回、前回と気づくと展開していたけど
もし起動していなかったときは
どうすれば起動するんだ?亅
「電子パネルのオン、オフについてですね。
これは一つの動作をしてもらうことで
機能します。腕輪をオン、オフを
意識して撫でることです。
確かにこれまでこちらから
起動させましたが次からは
お願いしますね亅
「了解、ありがとうキャロ亅
「それで今回は育成授業の一つですね亅
「そう、なんだけど
全くわけが分からない状況で亅
「困っている、と。
今回は育成授業の課題ですが
その前にこのようにチュートリアルの
時間が設けられているようですね。
本来はその一つとして
私と能力をリンクさせて
能力の効果を上昇させたりすることも
できますが、あなたにはありません亅
「そ、そうか…亅
ガックリと肩を落としてしまう。
「ですから課題を確認しましょう。
あなたの課題は
[難易度☆1、万寿蔓の採集] ですね亅
「万寿蔓とは?亅
「ワラビのような形をした
20cmほどの紫と緑色の混じった植物です亅
難易度が易しくて助かった。
これならすぐに戻れそうだ。
「よし、早速採りに行こう!亅
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その頃、鞘木は軽く困惑していた。
本来佐山と同じエリアで同じ課題をこなす
はずだったのだ。
これは先生の指名でもある。
しかし、
やはりそううまくはいかなかったらしい。
ここは無人島、ではなく
ヒルク村の付近だった。
「なぁ、ノーマン、どういうことなんだ
これは?亅
「こちらとしてもわからない亅
「ノーマンでもわからないなら
仕方ないか。なら、さっさとクリアして
先生に報告するしかないな亅
「その通りだな。
ところで今回の難易度は☆3だ亅
「何をすればいい?亅
「村の田んぼの水を取り戻す、とだけある亅
「大雑把なのがきたなぁ、
まぁ、それに☆3くらいなら
なんてことはない亅
鞘木はヒルム村を超えて、
ヒライク山に向かった。




