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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

本当は泣いてしまいたかった。

作者: 十叶 夕海

完全突発小説。

雰囲気で読んでください。

独白です。



  -『私に罪をかぶせて、この戦争を終わらせろ。』


  -『そして、わが国の禍根も断ち国を亡くしてくれ。』



 私は、とある国の王家の流れを汲む将軍家に生まれた。

 曾爺様がその当時の王の弟だったとか。

 そこの長男として生まれた。

 異母弟なんかもいたな。

 同母弟も勿論。

 黒い髪に赤茶の瞳と国では珍しくない髪と瞳だった。

 何の気負いもなく、武術の腕を磨き、学問に勤しみ育った。

 十四で初陣を飾り、十五で慣例通り放浪の旅に出た。

 うちの国は、一定以上の身分のは、初陣の後、成人してそれから一年~十年旅にでる慣例があるんだ。

 尚武の国のせいでもあり、隣国と結構戦争してるせいもありな。

 私の場合、山賊を倒したり、獅子を倒したり、用心棒をしたり、まぁ、退屈はしない旅だった。

 中立の海洋国家のある港町で、一人の年下の少女とであった。

 私が十八で、彼女が十五だったか。

 ふわふわの薄い青み帯びた髪と子猫のような印象だった。

 明るくて、口が立って笑うと大輪の花のような少女だった。

 ・・・胸元のボリュームはなかったけれどな。

 エラハラ・・・普段は、エラと呼んでいた。

 結果だけを言えば、彼女と出会って数年はその港町で二人で暮らした。

 後々を思えば、私の人生で幼少期を除けば、一番平穏な日々だった。

 そして、この時に子を一人でもしておけば変わったかも知れぬな。

 私が、二十歳を幾らか越えた頃、王子やほとんどの王女が一網打尽に死ぬ事故があった。

 と言っても、偶然と言うべきだろうな。

 雨が続いた後に、鍛錬の一つとして狩りに出掛けた。

 年がら年中と言うわけではないが、王女とて戦場に立つこともある国柄か女であっても武術は必修になる。

 一番小さく、次の戦で初陣の十一歳の末王子も連れての狩り。

 それで、山津波に飲み込まれてのことだった。

 生き残ったのは、狩りに出なかった幼い姫数人と私より一つ下の予知姫だけだった。

 だから、私が連れ戻された。

 基本的に、二十五までに妻を連れて返れ、というものだから、それでエラを連れて変えるつもりだった。

 彼女は、国から連絡が来ると同時に居なくなってしまったのだが。

 予知姫ことマハスティ様は、美しい方だろう。

 母が北方から買われてきた高級奴隷だったせいか、白い肌と色素の薄い瞳にエラを思い出す。

 髪質は違っていて、マハスティ様は直髪であり、艶めかしいとは思う。

 ざっくりと言うならば、私とマハスティ様が結婚し、次の跡継ぎになった。

 王族や王族に連なる連中の歴々の中で、マハスティ様とが近く、武勇すさまじい私が選ばれた。

 一応は、多少年上のはとこ殿(マハスティ様にはいとこにあたる)や年下の又いとこ殿がいたのだけれど。

 後々、暗殺されそうになったり、暗殺したり。

 二年が過ぎる頃には、反対するものはいなくなった。

 同時に結婚から同じぐらいが過ぎていた。

 ・・・ついでに言うならば、隣国の宗教国家に新しい女王が截ったのもこの頃だったか。

 隣国は、王を現人神とした宗教国家で、頭に「狂」のつくほどの国だ。

 元々、うちの国はもう少し西の方にあったんだが、今の土地に移動してきた。

 偶々その土地が、連中の大事な土地(開祖の生まれ故郷だとか)でしょっちゅう戦争をしている。

 その頃には、マハスティを呼び捨てにしていて、普通の貴族夫婦程度には仲は悪くなかった。

 お互い、そっちには淡白だったのか浮気もしなかった上に、私もマハスティ以外の室は取らなかった。

 いつだったか、多分この頃に、マハスティがぽつりと言った。


 -『誰かに譲位なさいませ』


 -『このままでは、貴方様は死を願うほどの後悔をなさります。』


 したいこともなかった。

 一応、エラの行方を捜したのだが、見つからなかった。

 別れてから十年近く経っている、ならば死んだのだろう。

 ならば、彼女が願っていた『豊かな国』を目指そうと思ったのだ。

 だから、マハスティの言葉には、驚いたがなにもそれ以上は言わない。

 ・・・私がこの言葉を理解したのは更に二年が過ぎたころだった。

 数年ぶりに、隣国が攻めて来た。

 此処百年の中で最大規模・・・これで攻め切れねば向こうが倒れるほどの人数。

 後先を考えぬ怒涛にして苛烈な攻め方だった。

 狂信に麻薬をまぶした様な、自らをも省みない攻撃。

 それは、女王陛下自らが戦闘の先頭に截っていたからだろうな。

 ・・・望まなかったとは言え立場故か、私が直接彼女を見たのは、王都まで攻め上られた時だった。

 炎と人が燃えるにおいが王都に満ちた。

 そんな中でさいかいしたのだ。

 ふわふわの薄い青み帯びた髪の雌獅子のような印象の女王。

 十年の月日を重ねていたが、エラだった。


 -『私に罪をかぶせて、この戦争を終わらせろ。』


 -『そして、わが国の禍根も断ち国を亡くしてくれ。』


 此処から先はどうでもいい。

 翌日、私は両軍から良く見える場所で彼女の首を断ち、身体だけを向こうに引き渡した。

 彼女が最後に書かせた手紙として、講和条件を書いた手紙とともに。

 それから、数十年。

 彼の国は我が国と一緒になり、大陸一の大国となった。

 今は、彼の国だった場所を彼女の息子が治めている。

 そして、私も直に彼女のところに逝くだろう。

 自慢の息子の話を土産にして。







 


簡易人物紹介。


『私』

武人系の不器用青年。

良くも悪くも王の器ではない。


 エラ、或いは、女王。

ペルシャ系の名前で女王を意味する『エラハー』から名前。

肉付けしてないけど、多分先代末っ子とかだったけど、神託で女王になることになって逃げた。

一人生んだ息子は、『私』との子。


 マハラスティ

 先代の姫にして『私』の正室。

 一応子どもはいた。名前は、ペルシャ語の「月」から。

 名前どおりの優しい人だった。



 『息子』

 父親不明だが、祖国では珍しい色合い(=『私』に似た色合い)の為、隣国の人間ではないか程度は思ってる。

 クソ真面目。



 イスラム入る前の中東辺りが特に好きなのです。

 ちなみに、あの辺りだと『太陽=冷酷』『月=慈悲深い』な印象なのです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 運命のいたずらといいますか……。 でも、どうしようもないですからね……。 あの世で二人が幸せになることを祈ります。
[一言]  人間の無力さを感じられる作品でした。主人公の『私』は一体どんな思いでエラを殺したんだろうなと思います。  エラはエラで女王になってどんな風に変わっていたのだろうかなど考えると悲しいですね。…
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