千年王国
ぴちょん、と滴の音。
じゃらり、と鎖の響き。
凛と冷気張る地下牢に囚われ人ひとり。十年、百年、千年。見捨てられて久しい。
瞳は何もはねず、光は宿らない。
ぴちょん、とひとつ。
また、じゃらり。
決して、水が欲しいわけではない。なぜなら彼は、玉座を追われた後も統治しているのだから。地上では民意が偽りの統治で幸せと自由をもたらしているが、王家の血統はいわば契約書。彼が消えれば、すべてが闇に帰す。
ぴちょん、じゃらり。
彼はすでにからからに干からび、肌は硬い岩肌より冷たい。まどろんでいるだけなのか、すでに永眠しているのか。
ぴちょん、じゃらり。
彼のそばには、常に闇。寄り添うように、観察するかのように。はたして心配しているのか、あざ笑っているのか。
だから、鉄枷の音は止まない。
ぴちょん、じゃらり。
その時を待ちわびる闇がじれったそうに、ぐるりとひるがえる。
かつて王だったモノは今も、乾燥と湿潤による収縮を繰り返している。地上の民は、何も知らない。
おしまい
ふらっと、瀨川です。
自ブログに掲載した旧作品です。
王家の契約は今も生きているのかもしれず、破棄は迫っているのかもしれません。