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サイバーグラス・シンドローム  作者: 真先
4.スクール・シューティング
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4.スクール・シューティング(3)

 四時間目終了のチャイムが鳴った。

 退屈な地学の授業を終え、サイファは学食に向かった。

 オープンテラスではA.Jの島根県講座が待ちかまえている。

 知ったところでなんの役にも立たない地球の構造を学んだ後に、おそらく一生訪れることの無い山陰地方の風習について学習するのだ――うんざりする。


 幸いなことに地学実習室のある特別教室棟は学食から離れた場所にある。

 可能な限りゆっくりとした足取りで学食に向かう。

 大勢の生徒たちが行き交う昇降口の前に差し掛かる。

 単位制の伯陵学園では生徒たちの意志で、授業時間を自由に設定できる。

 半日で授業を切り上げた生徒たちが次々と下校してゆく姿を見ると、サイファもこのまま学校から逃げ出したくなってくる。

 退屈な授業から開放された生徒たちは、つかの間の自由を満喫していた。

 笑顔で行き交う生徒たちの中、サイファは奇妙な集団に出くわした。


(……あれは)


 神妙な面持ちでたたずむ四人の女性徒。

 先日、社会科準備室で出会った校内安全研究会のメンバーだ。


 電脳管理委員会の解散を願う彼女達は、サイファにとって敵であり、あまり顔を合わせたくない相手だ。

 とりあえず近くの物陰に身を潜める。

 何かの打ち合わせをしているらしく、彼女達の表情は真剣そのものであった。

 最後に四人は一斉にうなずくと、四方に散っていった。

 彼女達のうち一人――金髪をツインテールに束ねた少女にサイファは注目した。

 社会科準備室では見かけなかったが、彼女も内安全研究会のメンバーなのだろう。

 高校生には見えない小柄な体躯のその少女は、昇降口をくぐり校門へと向かってゆく。


 彼女の姿に奇妙な既視感を覚えた。

 それほど遠くない昔、どこかで会ったことがあるような気がする。

 記憶をたどるが出てこない。

 あれほど目立つ容貌ならば、一度見たら忘れないはず。

 思い出せないということはそれほど重要な人物ではないのかもしれない。

 誰かに似た人物と混同しているのかも、と納得して、サイファはその場を後にした。

 

 ▽▲▽

 

「……この辺でいいかな」


 フェンスの向こうに見える校舎を見つめ、芽衣耶はつぶやいた。

 校門から歩いて百メートル。芽衣耶は愛用の単眼鏡型サイバー・グラスを起動した。


 その瞬間、天童芽衣耶はコマンダー・メイベルへと生まれ変わる。

 眼前に浮かぶレーザー・キーボードを操り、ネットワークの彼方に存在する『メイベルの兵隊』達を呼び出す。

 忠実な兵隊達はメイベルの呼びかけに応じて、通学路に光のノイズと共に一両の装甲車が姿を現した。


 M1128ストライカーMGS。


 105mm砲を搭載したストライカー装甲車の火力支援型。

 耐久力こそ劣るが、戦車とも互角に渡り合える火力を要している。


 メイベルの単眼鏡に戦車砲のレティクルが表示される。

 キーボードで主砲を旋回し、狙いをつける。

 重量約二十トンの鋼鉄の塊に向けて、小柄な女子高生が叫ぶ。


「主砲発射!」


 ストライカー装甲車は命令を速やかに実行した。

 轟音と共に、主砲が火を噴いた。

 放たれた砲弾が校舎に命中。

 教室棟の五階部分が崩れた。


 続けて二発目を発射。

 今度は屋上付近に命中した。

 三発目を放とうとしたその時、ようやく敵が現れた。

 アスファルトを削る履帯の音と共に、校門から一台の戦車が姿を現す。


 レオパルド2A6。


 電脳管理委員会の委員長、エイブルが操る戦車ユニットだ。


 通学路に躍り出たレオパルドは校門前の通学路を切り返し、ストライカー装甲車を車体前面に納めた。

 レオパルドがスイッチバックしている隙に、ストライカーの機動砲はすで旋回を終えていた。


 既に三発目を装填済みだった105mm砲を発砲。

 砲弾はレオパルドの前面装甲に命中した。

 着弾と同時にレオパルドが爆煙に包まれる。


 もうもうと立ち込める煙が晴れると、そこには依然として通学路に立ちふさがるレオパルドの雄姿があった。

 レオパルドはメイの予想通り、傷ひとつ付いてない。

 105mm砲の砲弾ではレオパルドの正面装甲を貫くことは出来ないことは承知している。

 正面から砲弾を撃ち込んだ愚か者に対し、レオパルドはすぐに報復を開始した。

 120mm滑空砲をストライカーに向けて発射。

 HEAT(対戦車榴弾)の直撃を受けたストライカー装甲車は、爆発炎上。

 一撃で破壊された。


 戦車砲を載せているとは言えストライカーは装甲車、第三世代型戦車最強と呼ばれているレオパルドの敵ではなかった。

 装甲車一台でレオパルドに正面から立ち向かうのは無謀と言えた。


 ――しかし、


「二台がかりで、後ろから攻撃されたとしたらどうかな、っと」


 指先の動きにあわせ、レオパルドの背後に二台目のストライカー装甲車が現れた。

 狭苦しい通学路で背後をとられたレオパルドになす術はなかった。

 道路脇に並んだ桜並木が邪魔して、砲塔を旋回させることもままならない。

 無防備に背中をさらすレオパルドに向けて、ストライカー装甲車は主砲を発射する。

 正面からの打ち合いでは無敵のレオパルドであったが、背面からの攻撃は想定外であった。


 薄い背面装甲に105mm砲弾が命中。

 しかし当たり所が悪かったらしく、装甲の一部を破壊しただけで大破には至らない。

 一発目を耐え忍んだレオパルドに、すかさず二発目を発射。

 今度は弾薬庫に引火したらしい。

 火の玉に包まれたレオパルドは爆発、黒煙を撒き散らし炎上する。


 レオパルドの残骸を押しのけ、ストライカー装甲車は進撃を開始する。

 校門をくぐるM1128ストライカーMGSの後を、さらに二台のM1126ストライカーICVが続く。

 兵員輸送型のICVの中には、歩兵ユニット一個分隊が搭乗している。

 校舎内の制圧は彼らに任せ、メイベルは裏門に待機している美沙を呼び出した。


「美沙ちゃんそっちの様子はどう?」

『何人か見張りがいるわ。上級生だと思うんだけど、ライフルを持った二人組みが……』

「いや、口で説明しなくていいから、映像をちょうだいよ」


 メイベルの指示に従い、美沙は映像を送ってきた。

 メイベルのサイバー・グラスに、新なウィンドウが開く。

 美沙のサイバー・グラスを通して、裏門の映像が送られてきた。

 裏門には見張りと思しき二人組みが居る。

 プログラム兵士ではなく生身のプレイヤーだ。

 電脳管理委員会のメンバーなのだろう、昼休みだというのに見張りに立つとは勤勉なことだ。


 装甲目標が存在しないことを確認したメイベルは残されたストライカー装甲車、最後の一台を裏門に出現させる。

 突如現れた装甲車に見張りたちは慌てふためく。

 ストライカーに向けて発砲するが、小銃弾では装甲車はびくともしない。

 搭載火器のM2機関銃で一薙ぎすると、二人の見張りはあっさりと沈黙する。


 校内に進入したストライカー装甲車から、完全武装の兵士達が次々と降車する。

 歩兵ユニットはアサルトライフルを構え、敵の姿を求めてつぎつぎと校舎に突入して行く。


「戦闘はそいつらに任せて、美沙ちゃんはどこかに隠れて見ていて。くれぐれも、やられたりしないよう気をつけてね」

『わかっている、ありがとう』


 美沙との通信をひとまず切る。

 裏門の制圧を完了。

 レオパルドを倒して制圧した正門とあわせて、この学校の出入り口を封鎖したことになる。


 これで電脳管理委員会の支配領域は崩壊した。

 いよいよこれからが本番だ。

 メイベルは校舎内に待機している二人を呼び出した。


「呉羽ちゃん、かなでちゃん。お待たせ、サイバー・グラスを起動して」

『OK、起動したぜ』


 先ずは中庭に待機している呉羽から、


『こっちも起動したよ』


 次に学食で待機しているかなでから返事が帰ってきた。

 二人とも緊張しているようだ、声が固い。


「最後に確認するね。二人の任務は何?」


 二人がメイベルの指示を覚えているのか再確認する。

 うるさく言うのは性に合わなかったが何しろ彼女たちは素人だ。

 初陣の緊張から、ブリーフィングで説明したことを忘れてしまっているかもしれない。


『……えっと、敵戦力の監視。だっけ?』

『敵に発見された場合、速やかに撤退。敵との交戦は可能な限り避ける。よね?』

「よろしい。歩兵ユニットを召還するから、よろしくお願いね?」


 通信を切ると同時に、学食にたむろする電脳管理委員会と、中庭の様子が映像として送られてきた。


 ここまでは順調だ。

 校内安全研究会のメンバーもメイベルの指示通りに動いている。

しかし、油断は禁物だ。

 何しろ、向こうには《百人殺し》のサイファがいるのだ。


▽▲▽


 105mm砲が校舎に炸裂した瞬間、サイファはちょうど学食に向かって歩いていた所だった。


(敵襲!?)


 その砲声にサイファは素早く反応する。

 肩掛けしていたライフルを構え、サイファは駆け出した。

 臨戦態勢で廊下を駆けるサイファの姿に、周囲の生徒が目を丸くするが気にしている場合ではない。


 まずは状況の把握が先決だ。

 電脳管理委員会の指令部である、学食のオープンテラスに向けて走った。

 オープンテラスに到着したサイファを出迎えたのは、エイブル委員長の叫び声だった。


「被害のほうはどうなっている!?」


 矢継ぎ早に繰りだす委員長の指示に、オペレーター達が次々と応対する。


「今、エコー1とエコー2を向かわせました! 目下調査中」

「教室棟は封鎖。生徒会長に報告しろ。……それで、敵の正体はまだわかんないの!?」

「未だ不明、ですが幕張同盟でないことだけは確かです。今のところCRAは犯行声明を出していません。千教委に動きは無いし、可能性として一番高いのは東京からのお客さんかと……」

「CRAの線は無いね。あのしみったれ共に装甲車両なんて用意できるはずが無い。……あいつら、ストライカーを平然と捨て駒にしやがった、かなり資金力のある相手だ」

「生徒会長につながりました、会長室に向かっています。習志野に金払って増援呼びましょうか?」

「馬鹿野郎! そんなみっともない真似できるか! ここはあたしらの学校だ。あたしらの手でカタをつけるんだ!!」


 突然の襲撃に、電脳管理委員会は浮足立っていた。

 忙しなく行きかう委員会のメンバー達の様子を見ていると、A・Jが駆け寄ってきた。


「何やってたんだよ! サイファ!!」

「何があった?」

「たった今、敵の襲撃受けた。エイブルのレオパルドがやられたってよ」

「なんだって!?」


 校門に鎮座するあのバケモノを誰が、どうやって倒したのか。

 何者かはわからないが、敵の戦力は相当なものだ。


 A・Jはすでに戦闘準備を完了していた。

 制服の上からタクティカルベストを着込み、手にはショットガンを構えている。

 慌ててサイファも身支度を整える。

 弾倉をチェックしていると、オペレーターが悲鳴を上げた。


「裏門に敵襲! シエラ3、シエラ5喪失!」


 正門に続き、裏門まで抜かれた。

 それは電脳管理員会が『管理』している防衛システムの崩壊を意味していた。


(……ZOCが崩れた)


 戦闘開始からわずか数分、正体不明の敵にこの学校は包囲された。

 頭の中で学校を上から見た図を思い浮かべ、サイファは凍りつく。

 敵の配置した布陣には見覚えがあった。

 一ヶ月前の、土浦遠征――恐怖と共に戦場の記憶がよみがえる。


「……上等だよ」


 敵の見事な用兵は、エイブルの闘争心に火をつけてしまったようだ。

 腰から拳銃を引き抜くと、メンバーたちに向かって檄を飛ばした。


「みんな、銃を用意しな! これから校内に潜入した敵ユニットを迎え撃つ! 敵は見つけ次第、撃ち殺せ! オペレーターはありったけの歩兵ユニットを校内に配置しな! 費用は生徒会が負担する、出し惜しみすんじゃないよ!」

「……その必要は無い」


 熱くなるエイブルに冷水を浴びせかけるように、冷たい声でサイファがつぶやく。


「……なんだって?」

「向こうから、来てくれたようだぜ。……伏せろ!」


 警告と同時に、オープンテラスに銃声が響き渡る。

 銃声に素早く反応したメンバーたちは、サイファの警告に従い身を伏せた。

 テーブルを蹴倒し、バリケードにして身を隠す。


「ぎゃあああああああっ!」


 反応が遅れたメンバー数名が、銃撃の餌食になった。

 銃弾を全身に浴びて、悲鳴と共に倒れる。


「どこから撃ってきている?」


 床に伏せた姿勢でエイブルが叫ぶ。


「学食のほうからだ! 数は一個分隊……、十よりかは多くないはずだ!」


 テーブルの影にひそみながら、サイファは銃声の聞こえてくるほうを覗き込んだ。


「応戦するよ! みんな、着いてきな!」

「待て! エイブル、待ってくれ!!」


 銃を構えて身を起こしたエイブルを、強い調子でサイファが押しとどめる。


「あんたは逃げろ」

「なんだって?」

「撤収するんだよ! 奴らの狙いはあんただ。やられた連中を見ろ!」


 サイファに言われて、エイブルは奇襲に倒れた仲間たちの姿を見た。

 銃撃のショックから立ち直ったらしく、床に倒れた犠牲者たちは頭を振りながら身を起こした。

 彼らの全身は死亡判定を意味するブロンズ色に染まっていた。

 奇襲攻撃でやられたのは、ほとんどが戦闘プログラムを操るコマンダー達だ。


「奴らはコマンダーを真っ先に狙った。コマンダーだけ、正確に、居る場所が見えているかのように、攻撃したんだ。どういう意味だかわかるか?」


 指揮官クラスの人間を狙い撃ちにした。

 つまり、敵はオープンテラス内の位置関係を正確に把握しているということだ。


「……見える範囲に敵のコマンダーが居るってことかい?」

「いいや、違う。正門と裏門を制圧されて、ZOCが崩れたのはついさっき。敵のコマンダーはまだ校外に居るはずだ」

「じゃあ、どうして……」

「近くに敵の『目』がいる」

「目?」


 察しの悪いA・Jに煩わしさを感じつつも説明する。


「偵察兵のことだ。指揮官は偵察兵のサイバー・グラスをモニタリングして、テラスの情報を手に入れているのさ。俺達の位置や状況を偵察兵の『目』を通して見ながら、歩兵ユニットに攻撃指示を出しているんだ」


 サイファが解説している間に銃撃が止んだ。

 反撃してこないので形成有利と見てとったのか、学食の中から敵の歩兵ユニットが乗り出してきた。

 状況に対応した適切な戦術だ。

 偵察兵が監視しているのは間違いない。

 押し寄せる敵兵の姿を見て、エイブルが舌打ちした。


「……それで、どうすればいい?」

「敵プレイヤーの数は指揮官一人に『目』が一人……、いや、裏門の『目』も含めて二人以上いるってことだ。とりあえず『目』を潰さん事にはどうにもならん。エイブル、あんたは残った兵隊引き連れてここから撤収しろ」

「ふざけんじゃないよ! 舐められたまま逃げるなんて……」

「あんたが動けば『目』も動く! 敵の狙いはあんただ、アンタを囮にして『目』をおびき出す。俺が『目』を見つけてしとめてやる」

「……わかったよ」


 しぶしぶではあったが、エイブルは頷く。

 エイブルはキーボードを叩き、四体の歩兵ユニットを召還した。

 サイファの周りをデジタル迷彩の兵士達が取り囲む。


「そいつらを置いていく。必ず敵の『目』を潰すんだ。……撤収する! みんな着いて来な。A・J、あんたはあたしの護衛だ。離れるんじゃないよ」


 エイブルはテーブルの影から飛び出すと、中庭に向けて駆け出した。

 A・J他、電脳管理委員会のメンバーたちも後に続く。

 敵の歩兵ユニットはすぐに反応、エイブルに向けて発砲する。


 撤収するエイブルをサイファが援護する。

 ピンク色の迷彩に気をそがれつつも、敵の歩兵ユニットに向けて攻撃する。

 サイファの動きに合わせて、エイブルの召還した歩兵ユニットも攻撃を開始する。

 歩兵ユニットの戦闘力はこちらのほうが上のようだ。

 デジタル迷彩の兵士達は、バトルライフルの強力な火力で敵ユニットを次々と倒してゆく。


 撤収が完了し視界にいる敵を殲滅すると、サイファは敵の『目』の探索に取り掛かった。

 歩兵ユニットを従えて撤収したエイブルたちの後を追って中庭を進む。

 敵の『目』もまた同じように、エイブルたちの後を追いかけているに違いない

 エイブルたちにはすぐに追いついた。

 中庭の出口、体育館へと続く渡り廊下付近で激しい戦闘を繰り広げていた。

 続々と集まるピンク色の歩兵ユニットが、エイブルたちの行く手を阻む。

 雲霞のごとく押し寄せる歩兵ユニットを相手に電脳管理委員会は奮闘するが、兵力の差はいかんともしがたく一人、また一人と銃弾に倒れてゆく。


 銃声に混じって笑い声が聞こえてきた。

 中庭には昼食を終えて暇をもてあましている生徒たちの姿があった。

 彼らは銃弾に倒れる電脳管理委員会を見て笑っていた。

 サイバー・グラスをかけていない彼らには敵の姿は見えていない。

 見えない敵に向かって銃を撃ち、見えない敵の攻撃を受けて倒れる電脳管理委員会の姿は、彼ら一般生徒達の目にはさぞかし滑稽に映るだろう。


 笑いながら見物する野次馬達の中で一人だけ、真剣な表情で戦闘を見つめる女性徒の姿を見つけた。

 中庭に植えられた金木犀の傍らで、女性徒は戦闘の様子をつぶさに観察していた。

 校舎内から次々と現れる敵歩兵ユニットを、サイバー・グラスで覆われた目で追いかける。

 見覚えのある女性徒だった。

 一昨日、社会科準備室で受付をしていた校内安全研究会の少女――名前は、佐伯とか戦術担当補佐官だとか呼ばれていた。


「…………!」


 視線に気が付いたのか、女性徒がこちらの方に振り向いた。

 凝視するサイファと視線が合うと、ぎょっとした表情を浮かべ身をすくませた。

 慌てて斜め上に視線をそらすと、そ知らぬ顔で口を尖らせる――どうやら、口笛を吹いているつもりらしい。


「……わざとらしいんじゃああああああああっ!」

「みゃあああああああああっ!」


 問答無用で銃弾を叩き込むと、佐伯、又は戦術担当補佐官は脱兎のごとく駆け出した。

 歩兵ユニットを引き連れて後を追いかけながら、エイブルに報告する。


「エイブルか? 敵の正体が判った!」


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