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3-3

相変わらず新規作成がうまく表示されません

なもんで、新作短編が投稿出来ません


「こんにちわ!」

「ただいまー!」

「おじゃましまーす!」


「はいはい、いらっしゃい」

 友人を引き連れての雅音の帰宅を玄関で迎えるサキ。

 友人たちも慣れたもので挨拶をして靴を整えると雅音の部屋へとみんなで向かう。


 雅音の小学校入学以後、徐々に定番化している光景だ。

 メンバーは日により入れ替わりはあるが、この雅音宅訪問まで含めて学校の時間という感じに受け止めている異世界組の子どもも多い様で誰かしらと一緒の帰宅が雅音の日常である。

 この辺りでは一番広い家である正文の祖父宅は大勢の人間が集まっても問題無いし、家の敷地もそれなりに広いため、庭で遊んだりなどということも可能である。


 正文や雅音もここで主に暮らしているが本来の家主は正文の祖父である。

 その祖父は国会出席後、担当大臣として先進国の異世界関連会議への出席のため、次にこの家に戻ってくるのは来月となっているが、テレビを通じて元気な姿を目にすることが出来るだけでなく、「え、さっきまでテレビ出てたよね」というタイミングですら暇を見つけては雅音に電話をかけてくるため、あまり不在という感じはしない。


「パパだー!」

「村長さんだ!」

「こんにちわっ!」

 たまたまこの日は取りに来るものがあって祖父宅に居た正文。

 久々に「おかえり」と娘を迎えることが出来た。

 娘の友達にも挨拶をするが、子供たちのテンションは高い。


 何故だかは分からないが、子どもたちは普通に会うことが可能な範囲の中で一番偉い人が村長である正文であると思っているようで、中には日本の首相やあちらの世界の魔王より偉いと思っているような子まで居たりする。

 男の子の中には「スゲー、村長さんだスゲー」と目をキラキラさせてる子が居たり、腕にしがみついて「持ち上げて、持ち上げて」と実際に持ち上げてもらって燥いだりと実に賑やかである。


 今日は普段とは逆にシオネが友人の家に出かけていて不在である。

 ママ友のお茶会だそうだ。

 娘の小学校入学を機に、これまでの村単位からシオネの交流の輪も広がったようである。

 なまじ日本人のママさんたちより和服慣れしていることもあり、簡単な着付け教室の真似事の様なことをする機会もあるようだ。

 最初の頃こそダークエルフ、それもテレビCMに出たくらいの美女ということもあって、身構えられることもあったようだが、村でのノリの延長であっという間に打ち解けてしまった。

 本人が正文や雅音最優先だからさほどではないが、律儀にお誘いを全て受け入れていたら、祖父以上に自宅に居る時間が無くなっていたことであろう。


 下の子である長男の紀文のりふみはシオネと共にお出かけだそうだ。

 超絶肥満にでもならない限り(今から狩りのイロハを仕込もうとしているシオネにかかればそれもあり得ないが)将来イケメン確定の紀文は普段から大人しく、周囲が大人ばかりの席でも騒がしくしたりはしないが、時々ポツリともらす一言が絶妙のタイミングで、周りの人間を爆笑させたり大慌てさせたりと今から大物感が溢れる子で、もしかするとダークエルフ寄りの外見ながら内面は正文の祖父の血が濃く表れているのかもしれない。

 正文が色々あった末に身に着けた「長」としての覚悟を、生まれながらにして持っている様な感じなのだ。

 幼児ながらどこかふてぶてしさを感じさせる謎の貫禄を持つ孝典の息子と揃うと、次世代の久保山村も安心だという気持ちと共に、どこか末恐ろしさも感じてしまう正文と孝典である。


 父譲りの高いコミュ力を除けば、弟に比べてごく普通の子どもをしている雅音にどこかホッとする思いでその頭を撫でる正文であった。





「この『ピッ♪』となるヤツは面白いのう」

 コンビニのレジに立ちバーコードスキャナーを片手にご満悦の姫。

 遊んでる訳ではないし、悪戯している訳でもない。

 その証拠に服装こそ元のままだが頭には帽子、服の上からはエプロンを付けたバイトモードである。

 そう、久保山村で早速コンビニに買い物に出かけた姫は、そのままそこでアルバイト体験まで始めてしまったのだ。


 これは、単なる興味本位の我儘ではない。

 コンビニでの買い物の支払いを利幸がするのに対し「いや、そこまで世話になる訳にはいかぬ」と言い出した姫であったが、実際問題手持ちの日本円は全く無い。

 宝石を押し付けようとしてきたのを丁重に断りつつ「なんとかならんもんかな?」と周囲に助けを求めるも、リツもシリルもこうした面では役に立たない(「お友達ってことで『今回は奢り次はなんか奢ってね』ってことでいいんじゃないの?」というシリルのアイデアは、姫サイドには納得してもらえても日本サイドとしてはアウトである)。

 オタついたバイト君に呼び出された店長の顔を見てニンマリした姫が出したアイデア、それがここでバイトをしてその給料を支払いに充てるというものであった。


「いや、それもマズいんじゃ?」と思う利幸だが、姫自身がノリノリな上、リツやシリルのフォローも可能であり、店舗側としても忙しい時間帯で無いから問題ないとのこと、「こちらの世界での労働を体験し、その対価としての賃金という形で経済活動の理解を深めてもらう」と無理矢理理屈付ければなんとかなるかと帽子とエプロンを身に着け満面の笑みの姫を見て諦めた。


 ちなみに店長は「うん、このバイト、やる気とある程度の常識があれば平気だから」と呑気なのか大物なのかあっさりとOKを出している。

 それどころか小田や他のオタ仲間に連絡を取り、引き込んで、急遽「一日店長」の腕章を作らせたり動画やスチルの撮影をさせたりまでしている。

 確かに本部サイドからすれば幾ら積んででも欲しい映像である。

 その価値は単純に金銭換算することが難しいほど高い。


 まあ、実際のトコは自分たちがその映像を欲しいというオタ心によるものなのだが……。


 そうこうする内に客がやってくる。

 非番の自衛隊員や警官である。

 いや、制服姿のままの人間も居る。

 手慣れたバイトですらプレッシャーがかかる状況なのだが、姫の表情は逆に輝いている。


「いやあ、やはりこうして額に汗をして働くというのは良いの!」

 お釣りを手渡しされて舞い上がっている自衛隊員を余所目に、次の客の弁当を受け取って「温めますか?」と尋ね、受け取ってレンジに入れと実にスムーズだ。


 リツとシリルは棚の商品の補充、利幸はフロアのモップ掛けをしつつ、飲み物を裏で補充したりとこれまた忙しい。


「忙しければ忙しいほど楽しそうって、確かに周りの人間が心配するハズだよ……」

 姫の姿を見つつ、そう言いながらコンビニの床に着いたゴツイ靴の跡を消す利幸であった。

 



「なにをやってるんだか……」

 姫の歓迎のレセプションにやって来た外交大臣への就任が確定している顔馴染みの政治家の相手をしていた正文は、小田からのメールに添付されていた写真を見て額に手を当てた。

 日本の皇族が欧米のファストフードでバイト姿を見せるようなものである。

 

 横から覗き込んだ政治家は手を叩いて爆笑している。

「異世界、こちらとは別の世界ってことを無視して『封建制は~』『人としての平等が~』とかあちらさんに噛み付こうとしているアホな左巻きの連中を黙らせるにはいい材料ですな。夜のNHKニュースで全国に流れる様にしておきましょう!」


 政権側が何か上手くやっているだけで気に食わないという野党政治家は、本当に呆れるほど多い。

 それこそ、政権側の失点のためなら、第三者への配慮や国政や外交への将来的な影響すら平気で無視をする。

 既に地上波の番組などにも何回か登場したことのある正文であるが(マスコミの公平性など欠片も信じていない正文は編集が困難な生放送以外の出演を拒否している)、本筋でまともな対話が出来ず、関係ないことで大騒ぎする野党政治家にはほとほと愛想が尽きている。

 正文の穏やかな口調にも一因はあるのだが、嫌味を言われてもそれを全く理解しない者も多いのだ。

 自分が言いたいことしか頭に無く、相手の言うことを全く聞いていないため、頓珍漢なことを平気で言ってきたりもする。


 失言だの暴言だのとメディアに叩かれる様な政治家の方が、よっぽど相手の話をきちんと聞いて理解しようとしているのだ(実際に理解できているかは全く別問題だが……)。


 国政に関わるようになって更に魔王染みてきた祖父相手だとゴニョゴニョと迫力負けして口を閉ざしてしまう人間でも、若造の正文相手ならなんとかなると思うのかテレビ出演時にはここぞとばかりに噛み付いてくる。

 論破されてもそれに全く気付いていないアホさ加減に、野党支持者からは「いい加減黙れ!」との苦情が放送時には党本部へ寄せられたり、ネットでは「村長さん、優しい顔してえげつないですなぁ」と正文の柔らかな辛辣さが評価されたりしてる。見る人が見れば相手のバカさ加減がよりはっきりと分かる方向へと正文が誘導していることが分かるのだ。


 今の日本、特にネット界隈では前後に何も付けない「村長さん」という言葉は正文のことを指す様になっている。

 瀬澤正文という名前より「村長さん」「ダークエルフ村の長」という呼び方の方が一般的である。

 初期にはスタジオっぽい会議室撮影だった村発信のネット放送。

 今はカメラマン役の小田を伴って久保山村やクボ山村に正文が出かけて行って、色々な建物などを紹介したり、その過程で会った住人たちと話をしたりというものになっている。

 ごく自然に異世界の住人たちと対話をし、その信頼を勝ち得ている正文の姿に「村長さんすげえ……」という感想を持つ者は多く、単なる名前呼びでない敬意が含まれた呼び名が「村長さん」なのだ。

 国政に携わる政治家、中央の官僚、県の政治家や官僚、財閥関係者などでも「村長さん」と呼びかける人は多く、たまに「瀬澤さん」と呼ばれると反応が遅れてしまう正文である。


「これからがあちらの姫様の日本での諸々の本番ですから、気合の入れどころですな、村長さん!」

 政治家に肩をポンと叩かれ、「はあ」と昔のままの調子で返す正文。

 日本人からはともかく、海外の人からまで「SONCHOUSAN!」と呼ばれるのはどうにかして欲しいと思う今日この頃であった。



喉と肺が悲惨ですが住んでる国の季節風の流れで汚染物質が悲惨なことになってるようで

振り返ってみたら昨年の同時期も同じ様な体調不良になってました

風邪が治るんじゃなく汚染物質に体が対応するのに時間がかかってるという話でした

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― 新着の感想 ―
[一言] 小田が書いたあの頃の俺はその後ベストセラーに なったとか?初めてダークエルフにあった時の苦悩と 二率背叛は全世界のヲタの共感を生んだとか? 地獄と天国は同じ場所にあるという迷言は!
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