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真面目な人ほど思考がループ化しやすいです




 村に着いた正文はその足で村の住人一人ひとりに挨拶をして回る事になった。


 もちろん、公用車のクラウンで酒井の運転、祖父の付き添い付きである。



 ボケかかっている者を除き、ほとんどの住人が正文の事を覚えていた。


 小学生時代に遊びに来ただけの正文の事をである。



 それだけ、この村での子供の姿が珍しいものであったのかと、余計正文は落ち込む事になったのだが・・・。





 建前の限界集落脱出。


 しかし正文は建前だけで終わらせたくなかった。

 変に根が真面目な所がある正文は「本当に限界集落が脱出出来ればインチキ事業じゃ無くなる!」と、変な熱血を内心たぎらせていたのだ。



 しかしながら素人の悲しさ、気持ちは有っても何をしたらいいのか分からない。


 Wikiで限界集落について調べてみて、「元は林業に関する論文だったのかぁ」などとトリビア的な雑学が増えたのみであった。


  

 余所の自治体、それもこの村より遥かに大きく、生活での利便性も高い場所でも就農支援等は行っている。

 UターンIターン等の説明会を都市部で積極的に開いている自治体も少なくない。


 農地や住宅の安価な貸与、場合によっては無償での提供や更に支援金が付く場所すらある。


 林業等は公務員や準公務員としての採用や自治体が全面的にバックアップした第三セクターなど、大幅なサポートを行っている所も珍しくない。



 それでも過疎の解消どころか、ブレーキにすらなっていない所も多い。


 素人が思いつく程度の事は大抵どこかで既にやっているのだ。





 村に続いて県や近隣の自治体などの挨拶も済ませた正文は、こちらに来て初めての休日と呼べる時間を過ごしている。

 

 行ける本屋等無いのでアマゾンで購入した付け焼刃の知識の元である本の山を崩しつつ、寝床にした屋敷の一室でウダーっと脱力する正文。

 こんな所でも宅配便や郵便は来るのだ。

 日本という国の有り難さである。



 速度には不満があるもののADSLも繋がる。

 携帯電話は入らないけど・・・。


 「純粋な営利事業だけじゃ、こんなド田舎は切り捨てられるよなぁ」と都会に居た頃には思いもしなかった事を考える。



 大昔にはこの村にもバスは来ていたそうだ。


 石油ショック以降の事業計画の見直し等でかなり早い時期に切り捨てられたらしい。


 現在、計画中の道路整備案では、今ある峠越えの道とは逆方向にトンネルを掘り、JRの駅に続く道へと繋げる事になっている。

 道路完成後は列車の時刻表に合わせて、マイクロバスを駅と県の病院と村とでシャトル化して村営で無料運行するなどという計画もある。


 効率や効果の実効性等を考えなければ、計画自体は実に真っ当なものなのだ。



 

 考えれば考えるほど、知識を付ければ付けるほど、詰んでるとしか言いようが無い。


 


 「冗談抜きにゴールドラッシュレベルの事でもない限り無理だろ?」


 こちらに来て更に増えた独り言を呟きながらパソコンの電源を立ち上げる。


 メールボックスはスパムばかり。


 携帯の方にはもしかして知人や友人からのメールが入ってるかもしれないが、ここでは電波が届かない為、携帯電話ではなく、MP3プレイヤー兼デジカメになっている。


 「あー、契約解除した方がいいかもしれないな。」


 プランがプランだけにそれほど高くは無いが、繋がらないものの為に毎月金を払う等無駄に過ぎない。 


 都会に住んでいた頃は簡単に出来た事の多くが、この田舎ではえらく面倒で手間がかかる。


 こういった点も新しい住人を迎えるに当たってのネックだ。


 

 「知り合いに気軽に『いいトコだからこっち来ないか?』って言えないもんなぁ。」


 ある程度の数が集まらない限りどうしようもないという、目的に到達するにはある意味詐欺じみた行為も平然と行える事が必要となるケースなのだが、小悪党にもなれない正文には無理である。


 

 都会での一人暮らしの頃とはまた違った意味合いでのため息が増えた正文。


 胃痛までは行っていないのが救いであった。




ようやく次くらいでトンネル工事です

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