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2-18

お待たせいたしました(;´∀`)


 シオネと雅音が出演するCMは5作目でおしまいとなった。


 もちろん不評などということは全く無く、今、現在でも高い人気と好感度を保っている。

 CM本編やメイキングの動画サイトでの再生数も、海外からのアクセスもあって、凄いことになっている。


 メーカーも代理店サイドもそのまま続投の意向だったが、シオネの都合により継続が不可能となった。


 その理由は……。


「まさねねー、おねえちゃんになるんだよ!」


 シオネの妊娠である。


 まあ、することはしていたので、いつそうなってもおかしくはなかったのだが、妊娠の事実が発覚して逆算で初期の不安定な時期のシオネの行動を思い返し、真っ青になった正文である。


 クボ山村の森の中で弓を片手に狩りをして、木から飛び降りたりなどもしてたのである。

 着地時には強い衝撃も加わったりしていた筈で、一人目の雅音の時に色々と調べて知識を得ていた正文が「良く無事だった、本当に良かった」と思うのも当然の話だ。


 当のシオネは「私たちダークエルフの生活はそんなもんだから、妊娠してようが動ける間は動くわよ」とあっけらかんとしたものである。


 シオネはテレビのCMに出演したが、相次ぐ様に他のダークエルフたちも財閥系の他の新商品のCMに出演したりして、ダークエルフたちのメディア露出は加速しており、だんだんとん日本人の意識の中でダークエルフの存在が当たり前のものになりつつある。


 ともあれシオネが妊娠し、少しずつではあるが元々のスタイルがいいこともあってお腹が目立つ様になってきた昨今。


 さて、そうなるとシオネとバトンタッチで別の人間がCMに出演する必要があるのだが、そこで白羽の矢が立ったのが……。


「え? 私も!? それ公開処刑だよ~!!」


 と叫ぶリツを含む仲良し4人組だ。


 

 久保山村には飲食店が無い。

 クボ山村には屋台はあるが、どこかで落ち着いて食事となると誰かの家にお呼ばれするしかない。

 CM撮影の際はスタッフは旅館を利用していたので、そこでお弁当なども作ってもらえたのだが、旅館の予約は常に満杯でキャンセルが出ない限りすぐには利用出来ない。


 軽く次作の打ちあわせに来たCMディレクターは、シオネの予測不可能な降板で予定が大幅に狂ってしまった。


 正文は「良ければウチに泊まっていっては?」と声をかけたが、それに甘える訳にもいかず、財閥のコネで工場の来客用宿泊施設を利用することになり、昼食は工場の社員食堂でということになったのだ。


 今更、日本人のタレントや外国人のモデルにバトンタッチする訳にもいかず、さてどうしようと思案に暮れながら社員食堂で予想外においしい日替わり定食を食べていた彼の目に留まったのがリツたち4人組であった、という経緯である。


 異世界の住人である獣人の少女たちと、ごく自然に楽しそうに会話をしている日本人の少女。

 ダークエルフであるシオネのインパクトのせいで高くなっているハードルだが「これならいける!」と確信、その場で交渉に乗りだした。


 話を聞いたシリルたちがすっかりと乗り気になってしまい、リツが一言も話さない内に話が決まってしまっていた。


 カッコいい美人のエルバ、可愛い美少女のミリーシャ、シリルだって美少女だ。


 自分だってそんなに捨てたもんじゃないと思いながらも、流石に芸能人を軽く上回るクオリティの友人たちと一つの画面に映るとなると、しかもそれが全国に流れるとなるとリツとしては後ずさざるを得ない。

 自慢の友達であるし、外見でどうこう言う子たちではないが、リツにだってプライドらしきものはある。


 というか、日本人の女の子なら、彼女たちと比較される様な状況は極力避けたいと思うのは自然な話だ。


 それでも「カツ丼何杯ぶんかな?」とギャラにワクワクしているシリルを見ると「ま、いっか」と前向きに諦めざるを得ないリツであった。




「おねえちゃんになる!」と張り切って、自分で色々なことが出来る様にと今まで世話を焼かれていたことを自力でやろうとする様になった雅音。

 正文としては嬉しく思いつつも寂しくもある。


 ジジ馬鹿の祖父は寂しさの方が強いようで、構おうとしては拒絶されて鬱陶しいくらい落ち込んでいる。


 心配していたシオネのピンチヒッターのCM出演者も決まり、「あの子たちならいいんじゃないかな」と肩の荷も下りた気がする正文である。

 リツやシオネを知る者たちは概ね好意的な反応で、リツの父親などは先走って家中の映像機器を新調しようとして妻に怒られたりもしている。

 それでも録画機器は新規購入したようだ。


 大きな動きとしては自衛隊の駐屯地と機動隊の訓練施設が完成し、人員が派遣されて異世界にも出入りする様になっている。

 既にダークエルフや獣人に捕まってしまった独身男性も居る様で、周囲からの嫉妬の視線に晒されながらもニヤケ顔を隠せないでいる。

 

 異世界側の方ではリザードマンの元の居住地での隣人であるドヴェルガーが初めて村を訪れ、ファンタジーならではの金属、ミスリルの実在が確認され、財閥の金属、素材系の研究者が狂喜乱舞してドヴェルガーたちにドン引きされるという騒動を起こしている。

 髭モジャ、どっしり体型というドワーフそのままの姿にオタ達が喜ぶと共に「女性は合法ロリなのか、それとも髭なのか?」に関して激しい論争が起こったりもしている。

 ドヴェルガーの女性がほとんど居住地を離れないということもあり、自分たちが彼らの住まいに足を運ばないと確認出来ないため、比較的フィクションでの空想イメージに近いこれまでの異世界住人傾向からの推察も自然と白熱しているのだ。


 ミスリルは原子構造的には銀そのものなのだが、その金属特性が全く異なるという現象に、薬草などの例も踏まえて「魔力」というものを本格的に調査・研究する必要があるという話になっている。


 放射性同位元素ならぬ、銀の魔力性同位元素といった存在なのだろうというのが現時点でのミスリルに対する推測である。


 魔鉄と呼ばれる金属も同時に確認されており、こちらは鉄の魔力性同位元素だと予測されている。


 魔力の研究が進むことで、より多様な成果が得られるであろうと、財閥だけでなく政府も本格的に力を入れている。


 自衛隊の警護付きで国土地理院の人間がクボ山村周辺の測量を開始しており、魔王の城方向への道筋が最優先されている。

 これは外務省からの要請もあっての動きで、直接交渉に先立って、現地の住人を通じて親書、贈答品を贈る動きも出ているのだそうだ。

 内閣内に異世界特務大臣のポストが出来るという話もあり、表面に出ているものは少ないが既に異世界の周知は止められない動きとなっている。


 今日もそうした外務省の人間との打ちあわせで、正文はすっかりお疲れモードである。


「マサさ~ん!」

「な、シオネ、駆けてきちゃ危ないだろ?」

「この子はそんな弱い子じゃないわよ、私とマサさんの子だもん!」

 祖父の家の前、雅音と一緒に駆けてくるシオネに慌てる正文だが、シオネは自信たっぷりの笑顔で心配いらないと答える。

 シオネと雅音に抱きつかれて、ちょっと疲れが飛んだ様な気がする正文であった。




 江隅利幸は外務省のペーペーである。

 海外赴任が多かった父親のせいで、日本以外の国に行くことが多かった少年時代を過ごし、日本に戻って来てそうした国々と日本を繋ぐ外務省の仕事に魅力を感じ、必死に勉強をして国立大学を卒業、試験もパスしての外務省入りだったが、なまじ明確なビジョンを持って外務省に入ったために夢と現実の落差に打ちのめされる毎日である。


 国と国との関係というより、外務省内部での派閥セクション争い。日本として相手にどう関わるか、どの国に比重を置くかよりも、自分の部署の予算と勢力を強めることが第一。


「研修3週間とか……青臭い理想論吐き過ぎたかな、こんなド田舎になんで外務省の研修所なんかあるんだ?」

 営業をやっている従兄に泣きつかれて購入したアクセラのハンドルを握りつつ、周囲の農村風景を眺める。


 道路の路面状態はいい。

 都内の道よりも凹凸が少ない感じだ。

 

 自衛隊の駐屯地が出来て周辺道路の道幅が拡大されたのだという。

 ミリ系が好きな癖に何故か外務省に入った同期の話によれば、各地から集められた精鋭が存在する部隊も居る駐屯地らしい。

 

 広々とした出来て間もない研修施設。

 横目で道路の反対側にある駐屯地を見つつハンドルを切る。

 国産の最高級車が何故か何台か停まっている。


「政治家がらみか? 面倒な話にならなきゃいいけど……」


 まずは宿泊施設の方に荷物を置いてくる様にと指示され、部屋に入るとどう見ても自分が利用者第一号といった感じの部屋だ。

 

 セミダブルのベッドにしっかりとした木製のライティングデスク、ソファまで置かれ風呂もユニットバスでは無い。


「研修施設にしちゃ豪華過ぎないか、これ?」


 タブレットコンピュータをショルダーバッグから出し、指定された会議室へと向かう。


「失礼します」

 ドアを開け、入った室内には自分の部署の大ボス、そしてニヤニヤと笑うテレビでも良く見る現職の閣僚政治家、その秘書なのかそれほど垢抜けていない温厚そうな若者、そして……。

「え、エルフ……?」

 どう見ても日本人どころかこの世界の住人に見えない青年。


 いや、ファンタジー的なエルフの概念から言えば、青年どころか老人と言える年齢だとしてもおかしくはない。


 そんな利幸の反応にまるで悪戯が成功した小学生の様な笑顔を浮かべる政治家と、似たり寄ったりの表情の大ボス。


 トンでも系だと見做していた省内で流れていた噂が、事実だったと利幸が知った瞬間であった。



最後に出て来た外務省キャリア

第3部で活躍してもらう予定のキャラです

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― 新着の感想 ―
[一言] かなり気になるのだが薬草の搾り滓は どうなるのでしょうか?家畜の飼料は勿体ないので フリーズドライで乾燥させてミンサーで粉末にして 圧縮してタブレットにして食物繊維の補給用にして 胃腸の調整…
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