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この友人には実在のモデルが存在します^^;




 「おーす、待たせたか?」


 「いや、そんなには・・・。」


 大学時代からなんとなく縁が切れずに続いている友人を前に、正文はデフォルトの表情とも言えるどこか優しげな微笑を浮かべる。


 友人たちの共通の意見として、彼の怒った表情がどうしても思い浮かべられないというものがある。

 それなりに怒ったり、不満を浮かべたり、凹んだりはしているはずなのだが、彼の顔を思い浮かべるとどうしてもどこか気弱っぽい笑顔しか浮かばないのだそうだ。




 あの後、職を辞す事を正式に連絡し、形ばかりの慰留を固辞して職場の同僚たちとも挨拶を済ませた正文は、先に送って平気な荷物から祖父の家に送り、処分できるものは処分をして、最後にこちらでの友人で会える者には直接会って話をしており、今日のこの相手が最後の相手となる。




 「しっかし、お前が村長ねぇ・・・なんも無いトコなんだろ?」


 「ああ、お前なら一週間ももたないな。テレビのチャンネルは少ないし、ネットは電話の基地局自体はさほど遠くないからADSLは繋がるみたいだけど光なんてものは無いし。アニメショップもパソコンショップも県庁所在地まで行くか、隣の県に行くしかない。住人は爺さん婆さんばっかりで若い子なんて一人も居ない。日が沈んだら辺り真っ暗で出かける場所もないし、コンビニすら存在しない。」


 「うげぇ、オタの地獄かよ。ここまで羨ましくない権力者も珍しいな。」


 「権力者とかそんなもんじゃないだろ・・・・・・どう見ても傀儡です、本当に有り難うございました。」


 「なんか爺さんが異様にコネ持ってるんだって?」


 「みたいだねぇ、なにせこっち戻ったら地元選出の国会議員が是非会いたいと運転手付きの車寄越したし・・・。」


 「はあ、で会ったの?」


 「会った会った、議員会館なんて初めて入ったぞ?」


 「そりゃ普通の人間は入らねえわなぁ・・・。」


 「まあ、どうしても締め切りから逃げたい時は来たらいいさ。」


 「はは、逃げてる途中で捕まる遠さですなぁ。」


 「う、確かに。」


 

 正文と話をしているこの男。

 フリーのライター兼編集兼企画屋というか、出版業界の一人隙間産業とでも言うべき仕事をしている。


 あちこちの編集部に顔を出したりして、手が足りてなかった時には手を貸したり、繋がりが無い部分に繋ぎをつけたりして日銭を稼いでいるのだ。


 見るからに典型的オタっぽい外見ではあるものの、意外とコミュ能力が優れており、出版社側からも重宝されている。




 「この仕事、休暇はあって無い様なもんだからなぁ・・・暇が怖いっての、普通の勤め人には分からねぇだろ?」


 「まあ、客商売だったから、暇が怖いってのは少しは分かる気がする。暇=客がいない、だからな。」


 「あー、お前はそうだっけ。いやリーマン連中と話してると変な感じで羨ましがられるからさ。」


 「自営業じゃないと普通分からないだろ、その辺は。それに別に分かって欲しいわけでもないだろ?」

 

 「まぁねぇ・・・にしてもお前が田舎引っ込んじゃうと平日に遊べる相手が減るなあ・・・。」


 「この間知り合った美容師の子は?」


 「イケメンとくっ付いたら途端に連絡が取れなくなりました。・・・・・・マジ、イケメン爆発しろ!」


 「そこら中でイケメンが爆発してたら怖いわ! ぷよみたいに連鎖したらもっと怖いわ!」


 「アイスストーム、ダイアキュート、ぱよえ~ん・・・ってか?」


 「カーくんのカレーライス食べたいです。」




 「道路作るんだっけか?」


 「道路より先に光を引けっての、これからはネットなきゃ孤島より酷ぇだろ?」


 「その辺は案外、爺様のコネとやらでなんとかなるんじゃないの?」


 「あー、ただ変なトコに借りは作りたくないんだよねぇ。」


 「借りと思わなきゃ借りじゃねーよ?」

 

 「それが通じるのは友人、知人レベルだよ。爺さんの知り合いとかに通じると思うか?」


 「まあ、無理だな。」


 「だろ?」




 

 友人の携帯に仕事の電話が入ってきたのを潮に、別れの言葉を口にして別れる二人。


 「下手をするともう一生会う事もないだろうなぁ」という思いは共通して頭を過ぎる。



 

 そんな二人が再会を果たすのは、双方思いもよらぬほど早い事になるのであった。






来週から日本に少し戻るので

書き溜めておいたものの一挙放出セールでした^^;

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