2-7
会話主体でちょっと読みづらいかもです^^;
住人が更に増えて、久保山村の人口を上回ってしまったダークエルフたちの集落。
元々、深き森の集落とかダークエルフの集落とか特に固有名詞を持っていない場所だったのだ。
基本身内かその知り合いにしか認識されていないところだったので「ウチの集落」とか「誰それが住んでるトコ」とか「誰それが嫁に行った森の集まり」とかで済んでいたのだ。
しかしながら最近になって余所から来る商人やら余所から移住に来る人間やら困っているという話になっていた。
そういう事は聞いていた正文だが「自分が決めていいことじゃないしなぁ」と放置していたのだ。
そうして気が付けばいつの間にか「クボ山村」と呼ばれる様になっていた。
元々は野菜を売りに来ていた爺様、婆様たちが聞かれた際にうっかり向こうの世界の感覚のまま「久保山村だぁ」と答えてしまったのが始まりらしい。
その辺り、ダークエルフたちも特に頓着していなかったのだが、そこから波及して向こうと繋がっている洞窟のある山が何故か「クボ山」であるとされてしまった。
「なんか申し訳ありません」
ようやくそうした話を確認した正文はダークエルフの老人たちに(若い衆はその辺全く気にしてないので)謝った。
「いやいや、構いませんよ、集落が集まって村になる事も、大きな村に小さな村が吸収される事も良くあることですからね。それにこれで私たちが『村長さん』と呼んでもおかしくなくなるわけですし。」
ニコニコとそう返されて、いつもの言い訳を言う訳にもいかず、困って出ていない汗を拭く動作をしてしまう正文であった。
というか、本人以外のほとんど全ての人間が、正文の事をこのダークエルフの集落あらためクボ山村の村長だと思っているのだ。ここに最後の抵抗勢力であった正文が黙認する形になり、久保山村の時以上の有耶無耶さの内にクボ山村の村長となってしまった正文であった。
さて、そうしたクボ山村では現在山や長老の木に影響の出ない方角に向けて村を拡大する作業に入っていて、その現場では久保山建設の社員とこちらの世界の住人が混ざって作業を進めている。
康則も必然的に仕事での行き来が増え、時には現場作業を手伝ったりしているのだが、最近、村に増えた新しい住人の噂を聞く度に冷や汗をかいている。
新しい住人、それはナマケモノの獣人の母子である。
母親の方は全く問題が無い、むしろ好ましい隣人として村に受け入れられている。
働き者のナマケモノという日本語で見ると違和感を感じる存在ではあるものの、気のいいおばちゃんなのだ(やはり魔王の召集を受けて戦争で無くなった旦那さんは「勇ましいナマケモノ」という日本人的に違和感を感じる存在だったそうだ)。
康則にしろ、正文にしろ、他の久保山村の人間にしろ顔を合わせれば挨拶するし、たまにつかまってはおばちゃん特有の話好きを発揮されて付き合わされたりするものの笑顔で対応出来る相手だ。
息子の方は存在自体は日本人的には違和感が無い。
なにせ怠け者のナマケモノなのだ。
元からそうした傾向があったそうだが、父親の死後、更に働かなくなった。
「自分の食い分くらい自分で働け!」と見かねた周囲に言われても「働いたら負けかな、と思ってる」と素で返す。
「あの父ちゃんと母ちゃんの子だろ、頑張ればなんだって出来るだろ!」と言われても「明日から頑張る」とやる気も無く答える。
「異世界にもニートが居るのかよ・・・」と康則だけでなく「身に覚えのある」現リア充の久保山村のオタクたちに衝撃を与えた存在、そんな彼の噂を聞く度に康則は少し前までの自分を思い出してはのたうちまわりたくなるのだ。
「周りからはこう見られていたんだな」というのをひしひしと感じてしまうのだ。
同じ様ないたたまれなさを感じていたオタクたちに同志である事を見破られ、康則が引き込まれた計画、それがナマケモノの獣人ヌルボの社会復帰計画だった。
「いいお袋さんじゃんなぁ」
「ウチの母ちゃんと話が合いそう」
「ともかく、このままじゃ漏れたちがいたたまれない」
「黒歴史以上のダメージを与える存在が居るとは恐るべし異世界!」
「力とかはありそうんだけどねぇ」
「拙者もゲー廃でござった当時は・・・」
オタたちがそれぞれ口にする言葉、康則も含めた彼ら自身にとって治りきってないカサブタを引っぺがす様な痛みを伴う言葉だ。
現状認識でさえ、「かつての自分」を直視させられる。
「バイトはしてたけどさ、こっち来てちゃんと就職してさ、父ちゃんと母ちゃんにプレゼント、ほんと、しょぼいものだよ? 大したこと無いもの。それでも泣いて喜んでさ、喜ばせたのは嬉しかったけど、それ以上に今まで心配かけてたんだなぁって実感しちゃってさ・・・」
「分かる、分かる」
「全俺が泣いた!」
必然的に体験談とその共感になり易い。
「嫁さん出来て子どもも生まれたけど、将来、自分の子がああなっちゃったらとか考えると・・・」
「禿同」
「まあ、嫁さんの血が強いからただイケでも自動排除されないだろうが」
家庭を持ち、親になって分かるものもある。
「まあ、だからと言って単純に『働け!』とか『ガンガレ!』とか言っても無駄だってのは経験で分かってるわけで・・・」
「なあー、俺だってココ来なきゃ後最低でも五年は同じ生活してただろうし」
「人が怖いって訳じゃないのは救いだけどな、彼の場合」
「あー対人恐怖とかあるとムズいよね」
「漏れはいまだに同類以外は抵抗が・・・。」
体験したからこそ分かる難しさもある。
「こっちでってより、久保山村での方が彼みたいなのは働き易くないッスかね?」
「こっちだと肉体労働主体だしなあ」
「あー、甘えとかもし辛いしな」
「まあ、行き来は簡単だけどな」
「それ関係者だけwww、外から来たヤシは無理www」
「俺らがある意味日本のトップシークレットに近いもんに関わってるってのが異常だけどな」
少しずつだが対策というか意見も出始めてきた。
「俺らにとってのダークエルフの嫁さんみたいな、馬のニンジンに相当するものとか、あっちの方が見つけやすいんじゃね?」
「とか言って布教する気だろ、おまえ」
「ま、オタ趣味は金かかるし働くきっかけにはなる罠、ウチのカミさんも娘より熱心にアニメとか見てるし、こっちの人間にもウケるのは確か」
「娘にまでコスプレさせんなよ?」
「英才教育と言っていいんだろうか?」
ところどころ脱線しながらも話し合いは進む。
そうして・・・・・・。
「だから俺は働かな・・・アニメ?」
「なんど言っても・・・ゲーム?」
「だるー、何もする・・・アイドル?」
「こ、これがパソコン?」
「萌えぇ~!」
・・・・・・。
「今日からウチで働く事になったヌルボくんです」
「よろしくお願いします、先輩!」
「お、おう、よろしくな!」
こうして康則の後輩社員が誕生したのであった。
康則くんに色んな意味での後輩が出来ました^^
明日から日本行きの前の滑り込み投稿です^^;




