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2-5

えらく半端なトコで中断してた形になって申し訳ありませんでした^^;


 一触即発・・・どころか既に発動している状態にも関わらず、正文たちの周囲の空気は緩かった。



 人、どころかモンスターすら倒せる矢が飛んできたという、日本で言えば銃を街中でぶっ放すレベルである。

 にも関わらず、おのぼりさんゴブリンがビビって逃げ惑っている以外は「あらあらまあまあ」とか「村長は愛されてるなぁ」とか日常レベルの反応。

 康則に至ってはいまだ現実と妄想の境界線を漂っている状態である。

 


 そうして姿を見せたシオネ。



 ツカツカと歩いて本来なら正文の手を取ってカレンから引き剥がそうとするところなのだが、姿を見かけた農家の婆ちゃんに「これ余りもんだけどよ、村長さんと食べてな?」と野菜を渡されたり、「おう、これでも食って精をつけて二人目頑張んな!」と串焼きを渡されたり、「おやおや村長さんの奥さん」と研究員に挨拶されたりで正文のところに辿り着いた時には渡されたものを落とさずにいるので精一杯の状態になってしまっていた。



 「ほらほらシオネ、これに入れて。」

 自然と貰い物が多い正文がズボンの尻ポケットに入れていたレジ袋を広げ、何故かごく自然にそれをカレンが手伝って、再起動をようやく果たした康則がなんとなくカレンとの共同作業的なシチュエーションに浮かれつつそれを更に手伝って・・・と、ただでさえ緩い空気がもはやグダグダである。


 周囲の人間が狙ってやってるならば凄いのだが、あくまで周囲はいつも通り、こういう状況で無くてもある程度人の居る状態でシオネがこの村を歩くとだいたいがこんな感じである。


 親しまれてはいるというものの、別の世界の、それも人間である正文より、自分たちの世界のダークエルフであるシオネの方が気軽に声をかけやすいし、日本側から来ている人間たちにとっても村長の妻であるシオネは、自然とダークエルフたちのまとめ役的あつかいだし、久保山村の老人たちにとっては自分たちの孫の嫁、あるいは孫みたいなものである。必然的に色々話しかけられたり、もらったりすることも多くなる。正文が愛妻家であり、基本的にシオネに逆らえないというのが周囲にバレバレなせいもあったりする。


 こちらの世界にも通貨はあり、商取引などでは用いられているのだが、こうした貰い物が多いため、使う機会の乏しい正文はいまだにこちらの貨幣価値が良く分かっていなかったりする。ま、貰い物のせいだけでなく、どこか海外旅行に行った日本人的感覚で、お金を支払う機会があっても「あ、お釣りはけっこうです」とかやっちゃう正文自身のせいもあるのだが。


 ちなみに久保山村限定だが、こちらの通貨の使用は可能である(ただし、計算が面倒になるため、混ぜての使用は不可である)。逆にこちら側でも日本円が使えるし、ここまでわざわざ訪れる商人などを中心に徐々に日本円の認知度が高まっている。


 通貨レートは、というと、非常にローカルと言うか久保山村とダークエルフたちらしいというか、野菜基準である。

 つまりキュウリ一山何円、キュウリ一山銅貨何枚というのを基準にして、そこから決められたものであって、変動性ではなく固定性なのだ。


 色々と法的に問題ありそうなのだが、お役所系と色々な兼ね合いもあって出来てしまった久保山村商工会(孝典に会長の椅子が押し付けられた)的には「地域振興券みたいなもんだということにしましょう」らしい。


 ちなみに久保山村は農産物があまりにも特異(「やくそう」が現在のメイン作物)な上に、その納入先も確定(財閥系製薬)してしまっているため、農協は存在しない。

 もともとが無借金(というか貸してくれる相手もいなかった)経営だったし、現在では財閥系の金融機関が優遇措置を取ってくれているため金融的な意味での必然性も無い。農業用機械もこれまた財閥系からモニター扱いで低価格リースが受けられる。普通の野菜も作ってはいるものの、それは自分たちで消費するか、こちらで売っているため、これまた販路も必要ない。

 

 過剰なまでの手厚さとも言えるが、それだけ財閥系が「関係ないヤツがどっかから入ってくる」のを警戒しているのだとも言える。

 「やくそう」の応用は外科分野で驚異的な恩恵をもたらしており、成分抽出に成功し、かなり希釈したもの(成分そのものだと指程度なら生えてくるため)を使用している救急絆創膏は「マジックパッチ」として爆発的なヒットと、天然成分ベース故の品切れを起こしている。


 ちなみに日本でやくそうを生産出来るのは久保山村(の山に囲まれた範囲内)に限られており、他の土壌では生育しないことが確認されている。

 この事から久保山村の研究施設の一部では、せっかく建てた豪華と言っていい研究所を取り壊してまで、研究農園を作ったりもしている。


 話はすっかりそれてしまったが、シオネと正文。荷物の受け渡しからいつの間にかイチャイチャモードに突入し、康則などは久保山村でダークエルフの夫婦などを見る機会も多かったことから多少はついたと思っていた耐性が「まだまだであったのだな」と口元から噴出しそうになる砂糖を抑える事に忙しかった。



 この状況でもまだ正文に対する纏わりつきを止めないカレン。

 実に凄い根性の様に見えるが、同時進行恋愛も二股どころか恋愛の多角経営も普通な猫族に取ってみれば、ごくごく普通の行動である。


 別にシオネから「取る」という意識も無いし、単に「自分も仲良くしたい」というだけなので悪意も全く無い。例えばここで康則がそれこそ一生分の根性を使って「俺と付き合ってください!」と言っても、彼女のめがねに康則がかなえば気軽に「オッケー!」と言って付き合ってくれるだろうし、そういう状況になっても正文を見かければ今回の様に纏わりつくであろう。


 うまくいってもいかなくても、他種族的には地獄を見る存在、それが猫族なのだ。もしかするとこの世界には嫉妬心を糧とする邪神でも居て、それが作った存在が猫族なのかもしれない。

 あるいは、人の形に近い猫だと思って、纏わりついたり離れたりの気まぐれさも含めて、愛でるしかないのだろうか?

 正文的には最近は後者よりの諦観に落ち着きつつある。

 悪意の全く無い好意で近寄ってくるものを、全力で拒否出来る人間はいないのだ。

 過剰な纏わりつきさえ無ければ、先ほども自然に手伝ってくれたように「いい子」なのだから。


 さて、正文を自分の手の中に取り戻して、少し落ち着きを取り戻したシオネだが、その外見は子どもを一人産んだとは言え以前のまま、いや胸が少し成長しただろうか? そうした体のラインが割と分かる服装をしている。

 

 久保山村では若奥様然とした和服割烹着がデフォのシオネだが、こちらに来る際は活動的な服装をする事もある。

 

 とは言っても以前のダークエルフ御用達の露出度の高い皮製の服では無く、ジーンズにライダージャケット、ライダー御用達のプロテクターとブーツ、アーチェリー用のグローブに、珍しく正文にねだって買ってもらったコンパウンドボウというファンタジーというより『シャド○ラン』にでも出てきそうな現代アレンジのエルフスタイルだ。

 一児の母とは思えない勇ましさである。


 「で、雅音はどうした?」

 「おじいちゃんが預かるからたまには二人で・・・って」


 絶対、ひ孫独占を狙った親切ごかしだな・・・正文は確信した。


 普通、孫は可愛く無制限に甘やかしがち、と言うが、正文自身は祖父にそこまで甘やかされた記憶は無い。


 まあ、後になってみれば学費だのなんだので、色々と「甘い」ところを見せてくれていたのだが、ひ孫である雅音への甘やかしは、真剣に雅音の今後が心配になるレベルである。


 将来、成長して結婚などと相手を連れて来た時、本来なら反対というか壁になるべき存在である父親の正文だが、その時点でもまだ元気で居そうな祖父の猛反対ぶりが軽く予測出来てしまって、気の毒さの方が強かったりする。


 「なにがあってもお父さんは雅音の味方だぞ!」

 周囲の状況をそっちのけで、自分の想像で盛り上がってしまう正文であった。



なるべく早く次を書こうと思ってます・・・・・・

・・・・・・・思ってるんですけどねぇ、いつも^^;

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