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2-4

説明回になっちゃってます^^;


 猫の柔らかさは魔性のものである。

 赤子の柔らかさとはまた別の柔らかさを持ちながらも、いざ動くとなるとしなやかに力強い動きを見せる筋肉をふわふわで柔らかな手触りの毛が覆った感触の柔らかさも加味されている。


 女性の柔らかさ、特に胸の柔らかさは男にとって抗い難い、もはや魔力や強制力と言っていい存在である(まあだからと言って不埒な行為を行う事を正当化するものではないが・・・)。



 その二つが合わさった、正に「魔」の存在が、正文の腕にしがみつ・・・と言うには力が入ってないし、ぶら下が・・・と言うには体重がかかってないしと言う絶妙な力加減で、そう・・・「纏わりついて」いた。



 ピョコンと突き出た猫耳、ピンピンと顔のそこここから突き出した触覚の様なヒゲ、自然にアヒル口の様な、あるいは微笑みへの移行途中の様な楽しげな線を描く口元、背中から腰にかけての綺麗なラインの終着点に相応しい美しい曲線を描く尻尾。正文に声をかけつつ腕に纏わりついて来たのは、そんなある種の人間にとって理想的な存在と言える猫耳の獣人だった。






 「猫耳キタ――(゜∀゜)――!!」と彼女たち猫の獣人と初めて接触した際、特にオタクを中心に歓声が上がり、それがすぐにダークエルフの嫁さんたちによるツネり攻撃を喰らった悲鳴に代わったが、それは単なる嫉妬ではなく、猫の獣人たちの社会と言うか、家族システムというか、そういうものが絡んだ実に厄介なものを含んだ、ダークエルフたちにとっては当然の警戒だった。



 ダークエルフたちは一夫一婦制であり、連れ合いを亡くしても再婚する事は珍しい。


 一方の猫の獣人はと言うと、女性の血統メインの人間や他種族から見るとかなり特異な社会を構成しているのだ。


 猫族の家族は大母と呼ばれる家長を中心にその姉妹や娘たちから構成されており、男の子供も含めて家族が共同で育てる。

 成長した男は独立して家を構える事も無く、男手として姉妹や母や叔母の力となる。まれに外に出て働く者も居るが、仕送り等をする相手はやはり自分の家族となる。

 

 まあ、家族と言っても子育て以外の締め付けは余り無く、「自分の食い扶持は出来るだけ自分で!」という個人主義的な、割と緩めの血族集団なのだが・・・。



 では「結婚は?」と言うと、厳密な意味での結婚は無い。

 ある意味恋愛至上主義というか、浮気という概念自体が存在しないのだ。

 男女ともに、その時、その時で好きな相手と付き合い、子供も父親が誰かなど全く関係無しに自分の家族で育てる。

 同時に複数の相手と恋愛をする事も珍しく無いし、父親の違う子供を同時に妊娠出来るという猫族の体もそれを余計に促進している(双子、三つ子で生まれても父親が全部違うという事があり得る)。


 男は自分の兄弟姉妹、その親や叔母、姉妹の子らの生活には責任を持つが、自分が付き合った恋愛対象やその子供の生活には責任は負わない。せいぜいがこちらの世界の彼氏が彼女にあげるプレゼント程度の負担であり、それも付き合っている間だけの事だ。

 

 タブーは同じ家族に属する者との恋愛だけ、他種族との付き合いも全く拒まない。


 こうした恋愛観、結婚観を持っている為、他種族との接触は往々にして相手側に混乱をもたらすのだが、猫族側では全く気にしていないという、厳格な一夫一婦制を持つ種族にしてみるとたまったモノではない存在なのである。


 その性格上、広い血が混ざっているにも関わらず、一族の血を引く者は必ず猫族の外見を持った子供が生まれる事から見ると種族の活力としては非常に高く、また地球でも混血に美形が生まれる確率が高いのと同じなのか、男女共に外見の良い者が多い事等が、ある意味トラブルメーカー種族である彼らがいまだに一定数存在している理由と言える。


 獣人がすべてそうだという訳では無く、狼や狐、犬等の獣人は一夫一婦制だし、男系ハーレムの獣人も居る。猫族の方がどちらかと言えば獣人・魔族の中でも特異な存在なのだ。


 

 さて、そんな猫族の村でもやはり魔王の軍に男手が取られ、その多くが帰ってこなかったが、生活と言う面ではダークエルフたちほど困窮しなかった。元々が男がメインの働き手で無かったからだ。


 他所との争いごとや、家など大きな物を作る際には男が中心となるが、それ以外は採取どころか狩猟まで女性がメインである為、普段の男はダラダラとしているか恋愛をしているかで、粗大ゴミとまではいかないが、家族の女性からは割と粗雑に扱われていた。


 そうした点から、日々の暮らしという面では男不在の影響は無かったのだが、ある意味「恋に生きる」種族である彼女たちにとって、恋愛対象の不在というのは重大な問題であり、家族から離れてあちこちへと出かける事が増え、そうした中の一人が、この元・ダークエルフの集落に訪れ正文に纏わりついている猫娘カレンなのだった。



 正文はシオネと言う相手も居る事だし、村長と言う立場もあるので、きっぱりと断りつつも邪険にはしなかったのだが、その態度が余計に火を着けてしまったのか、かなりベトベトと纏わりつくようになってしまったのだ。これにはほとほと手を焼いているのだが、彼女たちの種族的主観から見ると何も悪い事をしていない(別に他の相手と付き合っていようが、自分と付き合うには何の障害も無いという考え)ので、理解させ、行動を止めさせる事が非常に困難なのである。



 そうした正文を見ている康則はと言うと、視線のほとんど、思考の99%が唐突に現れた猫娘に行ってしまっている。


 元々そうした素養はあったのだが、実物の魅力に一発でノックアウトされてしまったのだ。


 自分以外の男性に言い寄っている状況であるというのも全く関係無い。

 というか、そうした部分にまで思考が達していない。


 彼の内心は一言で言えば「うわぁ・・・」だ。


 それは「うわぁ、猫耳だよ、ピクピク動いているよ」だったり「うわぁ、体ん中、本当に骨入ってるのかってくらい柔らかそうだなぁ」だったり、「うわぁ、アイドルどころか2次元も目じゃないよ、この顔は!」だったりするのだが、正に「心奪われた」という状態が内心から現時点で口から漏れてしまった「うわぁ・・・」なのだ。


 そうした康則の目の前を横切って、猫娘カレンを掠めた何かが地面に突き刺さった。


 細かく振動しているそれは、金属製の矢。


 

 「正文さんから離れなさい! この泥棒猫!」


 

 そんな声が更に矢の様に鋭く響いた。




 

猫族の特殊な社会は当初からの予定通りです

最初は獣人全てにしようかとも思っていたのですが、狐や狼の獣人とは合わないよなぁ・・・と猫特有になりました

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