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たこ焼きで釣られた魔王の孫と人間たちの大魔王すぎる街づくり――デモンズキャッスルパークへよくぞきた!  作者: いか墨ドルチェ


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第57話 圧倒的勝利――力だけがすべてではないとその身をもって体感せよ!

 魔獣たちは鼻が利く。


 一目散に目的地を目指していたが、途中で食べ物の香りに気が付いてしまう。


 最初に見つけたのは、先頭にいた下っ端の集団だった。理性や忠誠心がさほどない魔獣たちは、その香りにつられて進路を外れると、我こそはと真っ先に食べ物に口をつけようとする。


 だが、先頭の部隊が進路を外れたことに、知能を有する上位魔獣が気が付く。


 ここでまず第一の仲間割れが起きることになる。オークキングとミノタウロスは自らが率いる部隊の下級魔獣を怒りに任せてぶっ飛ばして回ったのだ。


「オマエタチ モドレ モドレ!!」


 豪快なオークキングの棍棒が火を吹くと、手下のオークたちが一瞬でミンチになった。


「メイレイ イハン ユルサン!!」


 屈強なミノタウロスの持つ斧の一振りで、シカツノバイソンの首がいくつも吹き飛んだ。


「このような場所で、仲間割れをするのはよくありません」と冷静に彼らをなだめる軍師などいない。オークキングとミノタウロスはドーパミンがドパドパ出て、好き放題暴れまわった。


 彼らの活躍で、この軍は戦う前に約五分の損害を受けることとなった。


(ブカヲ コロストハ オロカダナ……)


 その間に、脳筋ミノタウロスたちよりも、ほんの少し知能の高いキマイラとケルベロスは配下の魔獣たちを前線へと送りこんでいた。部下は捨て石にしてこそナンボだろう。


 が、ボス自身は食糧庫から漂ってくる旨そうな香りに、その場を離れることはなかった。オークキングたちが暴れまわっている間に、食料をこそっといただこうと考える。キマイラとケルベロスはそれなりにズル賢かった。


 キマイラとケルベロスは食糧庫へと足を踏み入れた。キマイラたちはよだれを垂らしながら、フライドチキンにかぶりついた。


「ウオオオオオオッ! ウメエエエエ」

「ヌオオオオオオオオオッ! モットクウゥゥ!」


 魅惑の味すぎるその食べ物のせいで、思わず雄叫びを上げてしまう。周りなんてもう見えない。フライドチキンのジューシーな味に脳がしびれて、そもそも足りていないのに冷静な判断がまるでできなくなる。


「コッチモ ウマイ!」


 酒もガブガブと飲み干す。初めてのアルコールに、あっという間に酔いが回る。が、その状態が心地よく、食欲は増すばかり。


 欲望のままにフライドチキンにかぶりつき、酒樽に顔を突っ込んでいたら、背後に気配を感じた。ミノタウロスとオークキングがやってきていたのだ。


「ヒトリジメ ユルサン!」

「オレニモ クワセロオオオ!」


 血の気の多いミノタウロスとオークキングは、別に結託しているわけではないが、先に獲物にありついていたキマイラとケルベロスに襲い掛かった。


「ナニスンダアアア!」


 ボス同士で取っ組み合いになる四者。


 その間、前進を命じられた魔獣軍団の先鋒は罠地帯に差し掛かっていた。


 中でも先頭を進んでいたケルベロスの部下である人面オオカミたちは、トゲ罠を思いっきり踏みつけた。


「ウギャアアアア!」

「イテエエエ!」


 人面オオカミたちはその場でひっくり返ると、悲鳴を上げた。


 機動力を生かした集団攻撃を得意とする人面オオカミの一群だったが、トゲ罠によって、脚が使い物にならなくなってしまった。


「アッ、クイモノ……」

「ウマソウ……」


 落とし穴の前には、魔獣たちが見たこともない食べ物が置かれていた。


 サディスティック・サファリ名物のラーメン「邪神に捧げられし骨と肉の生贄ラーメン 動物骨味」である。これを嗅ぎつけたオークたちが我先にとラーメン目がけて爆走しだした。


 よだれを垂らしながら、当然のようにオークたちは罠に突っ込んでいった。これぞまさに猪突猛進である。


 そして、そのまま落とし穴に落下する。オークたちは、ラーメンの名称通り、その命を捧げることになった。もっとも相手は邪神ではなく、オークたちが倒すべき敵に……。


「グオオオオッ」

「トマレエエエ!」


 後続に止まるように促すが、そんなのを聞き入れるような冷静さはない。すでに波のように勢いに乗ったオークたちは、次々と落とし穴に落ちていった。


「おおおっ、すげええ!」

「やったぜ! 作戦通りじゃねえかよ!」


 落とし穴はあっという間にオークたちの死体で埋め尽くされていった。これによって、百を超える魔獣たちを、こちらは無傷で片づけることができたのだった。


 こうなると、さすがにそこは落とし穴としては機能しなくなった。が、固い地面と異なり、オークたちの死体で埋め尽くされたその場所は足場がかなり悪い。後続のキマイラの手下の長髪ライオンたちは前進するのに手間取るようになり、攻めの脚が鈍る。


 多くの長髪ライオンたちがバランスを崩したところで、近くの櫓から、火矢を放った。


 この攻撃自体はそこまで殺傷力が強いわけではないが、急に火矢が飛んできたことで、長髪ライオンたちの隊列は完全に乱れた。


 特に毛の長い長髪ライオンたちは、顔の周りに火がついたことで大混乱に陥った。


「グオオオオゥ!」


 凄まじい咆哮を上げるとともに、火を消そうと、あるいは火矢を避けようとして方向を変えようとする。が、後ろから突っ込んでくる仲間もいるので結局逃げ場がないのだ。


 火だるまになった長髪ライオンたちがめちゃくちゃな動きをしたことで、さらに火が広がり、戦場全体の混乱の度合いも増した。


 すでに数百匹を超える魔物が死体となって戦場には転がっていた。時折、単独で突破してくる魔獣がいるものの、敵が単体であればすぐに対処可能だ。こちら側はほとんど無傷の状態だった。


 このまま突っ込んでも敵わないと悟ったのか、残りの魔獣たちは前進することをやめた。だが、引き返せばミノタウロスの斧の餌食となってしまうだろう。退却することも許されず、その場に立ち尽くしていた。


「打てー!」


 無情にもサミュエルは号令を上げた。


 今度は即席カタパルトで投石を開始する。密集状態で静止している敵に石をぶつけることは難しくはない。生き残っていた魔獣たちも次々と石の下敷きになって絶命していった。


 こうなると、命令も何もない。わずか数百匹ほどにまで減ってしまった残りの魔獣たちは一斉に逃げ出した。


 ということで、新・魔王軍との戦い第二幕・魔獣軍団との戦いは、サミュエルたちエビルアイランド軍の完勝である。

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