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たった一人で

「もう・・・・・・疲れちゃったなぁ」


それは、彼女の心の底からの嘆きだった。




―——すべての始まりは、彼・という存在が忘れ去られたことからだろう。

何もかも、誰もかも、彼という存在を忘れてしまったあの日。

この世界から確かに彼は消えてしまった。


それでも・・・そうだとしても、私はできる限りのことをしてきたつもりだ。


・・・・・・ただ、それでも、彼という存在を仲間たちに思い出させることはできなかった。


世界に思い出させることはできなかった。


だから・・・・・・だからこそ。


もう充分だ。

もう・・・・・・悔いなんてない。


そう・・・言い聞かせるようにする。

何度も何度も何度も。


そして・・・・・・

そして・・・・・・・・・

そして・・・・・・・・・・・・




―—————————————


「・・・・・・また、また・・・私は」




これで何度目なのだろうか?


私が死にきることができなかったのは。


これで何度目なのだろうか?

まるで運命がそれを否定するようにして、

私が生き残ってしまうことになるのは。


「・・・・・・・・・帰ろう、彼が・・・・・・待ってるから」


ぽたぽたと水滴が落ちる。

体が重く、気怠い。

それでも・・・歩き続ける。


彼が待っているその場所へと。




―—————————————


「・・・・・・ただいま、一人でいい子にしてた?」


いつ建てられ、そして取り壊されたのかもわからないほどボロボロで薄暗い廃墟の中。


目の前にいる彼と呼ばれる人物にそんな言葉を投げかける。

その姿はまるで生きている人とは思えないほど、

彼の姿からは生気を感じられず、

ぐったりとその車いすに力なく座っていた。


そしてそんな彼から言葉なんて返ってくることなんてなく。

虚しく感じる静寂だけが廃墟全体を包んでいた。


「・・・・・・私、また死ねなかったんだぁ、どうしてんだろうね」


彼に話しかける。

というよりもただぽつりと独り言を言うようにして話始める。

それは何分、何十分、何時間話していたのだろうか。


「さてと・・・・・・もう私は寝ることにするね、おやすみなさい」


そう切り上げると、ほぼ雑魚寝のようにして眠りにつくことにするのだった。




―—————————————


翌朝、私はいつものように彼を車いすに乗せ、その森の中を歩いていた。


「今日はいい天気だよね~、こんな日には”前みたい”にお昼寝でもしたいもんだなぁ」


私はそう彼と話すようにして話を始める。

ただ・・・当たり前のように彼から言葉が返ってくることはない。


いつもやっていることだが、

少し・・・・・・本当に少しだけ虚しさを感じてしまう。


そんな時だった。

不意に後ろから声をかけられる。


「あれ?シキさんじゃない、久しぶり、一週間ぶりぐらい?」


「・・・・・・びっくりした、いきなり声をかけないでよ、心臓に悪いでしょ?シオリ」


そこにはきれいな白銀色をした長い髪をなびかせた翡翠色の目をしたシオリという少女が立っていた。


「あはは、次からは気を付けるよ~」


と、そんな悪びれる様子も感じられない彼女に私はため息をつく。


そんな私の様子を尻目に彼女は次にその車いすに座る彼の姿を見てくる。

そしてどこか不思議そうにして、目の前の友人は口を開く。


「・・・・・・その人、誰なの?」


何度も・・・・・・

何度も何度も・・・・・・

聞かれた言葉。

”彼女からも”何度も聞いた言葉。


だからこそ・・・私はただ平然と、

ただどこかぶっきらぼうに答える。


「・・・・・・・・・私の大切な人だよ、世界でたった一人のね」


そう私は答えることにするのだった。








――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


気づいている方もいるかと思いますが、主人公ちゃんが”彼”のことをそのまま”彼”と呼んでいるのは名前を思い出すことができないからです。

確かに、主人公ちゃんは”彼”のことを覚えている唯一の存在ではあります。

が、それでも記憶は断片的には消えています。

というよりは今でも・・・・・・

まぁそれはともかく、主人公ちゃんは確かに”彼”を覚えている存在ではあります。


少々補足説明として話させていただきました。

今後ともこの作品を見ていただけると嬉しいです。

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