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第29話:創造主のシナリオとデータの咆哮



 生命の気配を一切感じさせない、無機質な白い回廊。

 その静寂を引き裂くように、重厚な金属音が響き渡る。


 カツン、カツン、カツン。


 足音の主は、この殺風景な場所には似つかわしくない、煌びやかで禍々しいほどの豪華な装備――

 全身**URウルトラレア**に身を包んだ男、ブローキンだった。


「相変わらず、気味のわりぃ場所だぜ……」


 彼は眉間に深い皺を寄せ、吐き捨てるように呟く。


 やがて彼の前に、高さ5メートルはあろうかという巨大な扉が現れた。

 人間など虫けらのように感じさせる威圧的な扉の前に立つと、キィンという微かな駆動音と共に、それは自動で左右へと開いていく。


 中に広がるのは、深淵のような闇に包まれた広大な空間。


 その中央に足を踏み入れた瞬間、どこからともなく声が響いた。


『遅いよ』


 それは、曇ったガラス越しに聞くような、あるいは高度に編集されたような、奇妙な違和感を伴う声だった。


『まあいい。……累計100回目の死亡を記録する者達が増えてきた』

『消失に気付くものが、現れ始めたのさ』


 声の主は、淡々と自身の思考を語り始める。


『世界は少しずつ、僕が考えたシナリオに向かって動き出している。邪魔をするな。……君はただのデータなんだ』


 ――ドクン。


 ブローキンの心臓が大きく跳ねた。


 そして、その直後に湧き上がったのは、抑えきれないほどの激情だった。


「……俺がデータだろうが何だろうが、知ったこっちゃねぇ」


 ブローキンは拳を握りしめ、ギリギリと歯軋りをした。


「あんたがこの世界を作ったのは分かっている。だがな、俺にはここが……!

 俺が存在できる、唯一の場所なんだよォ!!」


 彼は自らの首筋を、血管が浮き出るほど強く掴んだ。


「あんたが作った設定のせいで!

 俺はこんなにも! 血管という血管がはち切れそうなんだよォ!!」


『ふっ……血管ときたか。データのお前に、そんなものがあるとでも?』


 声は冷ややかに嘲笑う。


『所詮は欠陥品なんだな』


「うるせぇええええ!!!」


 ブローキンの咆哮が闇を震わせた。


「だから俺がデータとかはどうでもいいと言ってるんだ!

 あんたが作った『設定』が、俺を苦しめているという事実は変わらねぇんだよ!」


 彼の脳裏に、二人の男の顔が浮かぶ。


「俺が尊敬していたあのローヴァンを消したのもアンタだ……。

 それも許せねぇ。だがそれよりも……」


 ブローキンの声は、憎悪に震えた。


「俺は許せねぇんだ!

 消えた謎を追う意志も、戦うことすらも放棄して逃げた、あの男をよォ!!」


 ブローキンの憎悪は、創造主たるこの声の主よりも――

 戦場から逃げ出したかつての英雄。


 『灰燼のバレット』として恐れられ、崇められた男。

 自身の父親へと、真っ直ぐに向けられていた。


『珍しいね。今日はよく喋るじゃないか』


 声の主は、ブローキンの激情すらも分析対象としか見ていないようだった。


 ブローキンは忌々しそうに舌打ちをする。


「チッ……それで? 用件は何だ。俺はまだ暴れたりねぇんだ」


『まあ待てよ、ブローキン』


 その言葉と同時に、闇に包まれていた空間が一変した。


 正面の壁一面が巨大なモニターとなり、そこにノイズ混じりの白い映像が映し出される。


 やがてそれは、一人の男の顔を鮮明に浮かび上がらせた。


 ――早乙女蓮吾。


 この世界の創造主にして、全ての元凶が、冷徹な瞳でブローキンを見下ろしていた。


『僕はね、許せないんだよ』


 蓮吾が静かに語りかける。

 それはブローキンへの言葉であると同時に、自分自身への独白のようでもあった。


『当たり前に居た者が死ぬ事。

 それは二度と戻らないという事実が、許せないんだ』


 彼の瞳の奥に、狂気じみた光が宿る。


『いないものには、何も届きはしない。……だが、僕には届いてしまう』


「……何の話だ?」


 ブローキンが眉をひそめる。

 蓮吾の言葉は、あまりにも哲学的で、狂気じみていた。


『ふっ……僕も喋りすぎたようだ』


 蓮吾は自嘲気味に笑うと、再び冷徹な開発者の顔に戻った。


『とにかく、僕の目的がまだバレてしまうのはマズい。

 もっともっと、彼らには絶望を目の当たりにしてもらわないと困るんだ』


 蓮吾の視線が、モニター越しにブローキンを射抜く。


『その前に、不確定要素を排除する。

 君にはその役目を与えた。それを果たすために、そのUR装備を渡したんだ』


 それは、創造主から被造物への、絶対的な命令だった。


『一般NPCや一部のプレイヤーのカウンターを、君の目に表示させる』


「カウンター?」


 創造主、早乙女蓮吾がディスプレイを操作し始める。


 ブォーン……ピィーーー。


 ブローキンの網膜に、無機質な数字が羅列された。


【RENYA / Death counter: ?/?】


『見えたか? 僕のは見れないと思うが。

 一般のプレイヤー達のは表示される。自分のも見えるだろう?』


 ブローキンは、自分のカウンターを確認する。


「……気味が悪りぃ」


【BROKIN / Death counter :4/100】


「4……。ローヴァンと訓練していた時のか……」


『そうそう、消失の被害者ネットワーク組織が出来たらしい。

 エージェントナンバー2『ロナ』から報告があった』


『その組織の記憶を消す。

 彼らの目を、真実から逸らすために』


『君が暴れ、大量に消失が起きれば異常感知が起きる。

 システムエラーがね』


『指示通り、戦場でプレイヤーを殲滅し続けてくれ。

 一晩で大量に消失させろ』


 ブローキンは男を睨みつけ、獰猛な笑みを浮かべた。


「……フン。いいだろう」


 彼は踵を返し、出口へと歩き出す。


「俺は、あの男が戦場に戻ってくればそれでいい。

 俺の復讐を果たすためになぁ!!」


 データとしての宿命を呪いながらも、彼はその身に刻まれた

 「復讐」という設定に従い、再び戦場へと舞い戻る。


 創造主のシナリオを狂わせる、最大のイレギュラーとなることを夢見て。


 今は、牙を研ぐ時間だ。


ついに創造主の正式登場です。

RENYAの正体とは……!!


ブローキンは最強のプレイヤーだが彼も被害者でした。

設定に苦しむ彼の今後の行動は……?


ロナがエージェント確定しました泣



 〜宣伝〜  僕、「ゑルマ」は、legacy onlineの執筆の筆休め的な感じで新作の連載も始めました。  

 ドロップ率1%の「真核」 取得イベントリに入れた瞬間の直前1時間の行動や周辺の環境を元に

 唯一のオリジナル武器を作れると言うシステムがあり周りのプレイヤーが気付く前から主人公が、 

 そのレア泥を蹴とっ飛ばし最適な場所での記録デザインをするというちょっとおかしな主人公と仲間達の物語です。


【365日ライブ配信を監視し続けた俺、サービス開始と同時に『正解』を叩き出す 〜ドロップ率1%の至宝を蹴っ飛ばし、理想のログを刻んで最強の武器をデザインする〜】

https://ncode.syosetu.com/n8535ls/


よろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです!!!






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