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第27話:『黒い鳥の揺籃、羊の皮を被った狼』




◇ガレリア 噴水広場


 ブローキンに蹂躙され、街へと叩き戻された三人は、ガレリアの冷たい石畳の上で立ち尽くしていた。


「……クソッ、なんだよ、あいつ……。

 あんなの、まともにやり合って抗える相手じゃねーぞ……」


 アッシュは震える拳を地面に叩きつけた後、じっと自分の掌を見つめた。


「……届かねぇ。今の俺じゃ、あいつの足元にも……」


 その背中は、いつもより一回り小さく見えた。


 陰で特訓を重ね、少しずつ自信をつけ始めていた彼にとって、引き金を引くことすら許されなかった圧倒的な「死」は、あまりにも重い屈辱だった。


 その悔しさを塗りつぶすように、悲痛な叫び声が広場を切り裂いた。


「誰か……誰かぁ!

 俺の相棒を見なかったか?!」


 装備を整えた一人の男が、半狂乱になって周囲の人々に掴みかかっていた。


「いねーんだ、どこにも!

 戦場フィールドから戻ったら、あいつだけ消えちまったんだよおおお!」


 狂乱する男を避けるように、周囲にぽっかりと円ができる。

 誰もが 「この世界に起きている不自然な歪み」 に触れるのを恐れ、関わりを避ける冷淡な空気が流れる中――。


 その輪を割って現れたのは、一足先に帰還していたゲルドたちだった。


「おい、お前。一旦落ち着いてこっちに来い」


 地を這うような低い声。ゲルドだ。

 その後ろには、ブローキンに消された苛立ちからか、不機嫌そうに髪をいじるなーちょと、鋭い殺気を隠そうともしないリバルドが立っている。


「い、いやぁあああ! 俺の相棒がぁ!」


「……いいから来い」


 ゲルドは男を半ば強引に促し、人通りの少ない路地裏へと連れて行く。


「……行こう」


 クロの言葉に頷き、アダダたちは少し距離を置いて彼らの後を追った。



◇路地裏


 喧騒の消えた路地裏で、ゲルドが腕を組み、男に問いかけていた。


「で?

 生き残ったのに、戻る瞬間にあいつだけいなくなったってのか?」


「そ、そうなんだ……!

 どこ探してもいなくて……!」


 縋るように訴える男を見て、なーちょが髪をくるくると指に巻き付けながら口を開いた。


「ゲルちん、これってさー、やっぱー『あれ』だよねぇー?」


「……間違いなさそうですね。

 また同じパターンだ」


 リバルドが短く同意する。その口調には、冷徹な確信が混じっていた。


「タッ、タッ」


 路地の入り口で、クロが軽く足音を立てて姿を現した。


「あ?」


 ゲルドが眉をひそめる。

 なーちょはニタニタと笑みを浮かべるが、クロは彼女の笑顔の奥にある「何かが纏わり付いているような異質さ」を、改めて強く感じていた。


「ゲルドさん、カルマさんの事で何かわかったの?

 ……今回も、あの時と同じなの?」


 アダダの真剣な問いに、ゲルドは重々しく口を開いた。


「カルマの件があってから、俺なりにさらに調べた。

 こいつらと組んだのも、効率よく情報を集めるためだ。

 ……分かったのは、この『消失』が、今この瞬間もあちこちで起きているってことだ」


 ゲルドは背後のリバルドとなーちょを顎で示す。


「俺たちがこうして動いているのは、この『消えた奴ら』の足取りを追うため、

 そして被害者を見つけ出すためだ」


「被害者……?

 守衛団は何もしないの?」


 アダダの問いに、ゲルドは忌々しそうに吐き捨てた。


「あいつらは『ただの引退か、街を出ただけだ』と処理してやがる。

 だから、俺らが独自に被害者を集めてネットワークを作った。

 ……名付けて『クロウ(烏)』だ」


「クロウ……。

 なるほど、君たちがチームを組んだのは、腕を競うためではなく、この不気味な現象を追うためだったんだね」


 クロが納得したように頷くと、アダダも一歩前に出た。


「私達も、協力させてほしい」


「そーゆー事なら、俺らも黙って見てられねーしな!」


 アッシュもニッと笑う。


 ゲルドはふんと鼻を鳴らし、そっぽを向いた。


「フン、好きにしろ。

 ……リバルド、合図を送れ。拠点へ向かうぞ」



◇BAR『レイブン』〜地下拠点『クロウ』


 一行が辿り着いたのは、ガレリアの隅にひっそりと佇む落ち着いたバーだった。


 カウンターには、サングラスにバンダナを巻いたマスターが静かに立っている。


「邪魔するぞ」


「奥だよ。……いつも通りにね」


 マスターはグラスを拭きながら、サングラス越しにクロを一瞥した。


 言葉はない。

 だが、その視線は「深入りする覚悟はあるか」と問うているようだった。


 ゲルドは迷わず店の奥へ進み、本棚の横にある大きな木箱を三回叩いた。


「クロウ」


 合言葉と共に隠し扉が開き、地下へと続く階段が現れる。


 そこは、秘密基地のような広い空間だった。

 中には数人の「銃を握る者たち」が顔を突き合わせていた。


「ゲルドさん! 何か進展は!?」


「新しい被害者と、協力者を連れてきた」


 ゲルドに促され、アダダは恐る恐る頭を下げた。


「あ、どうもこんばんは……」


「あっ……! アダダさん?」


 不意に、茶髪の女性がハッとした顔で立ち上がった。


「え?

 私の名前、知ってるの……?」


「すいません、私、ロナといいます。

 すごく有名ですよ。大切な人を失った、私たちの間では。

 ゲルドさんからもお話は聞いています」


 ロナと名乗ったその女性は、どこか儚げで、不安に震える手をぎゅっと握りしめていた。

 その「守ってあげたくなるような姿」に、アダダは瞬時に親近感を覚える。


「アダダさん……会いたかったです」


 ロナがアダダの両手を包み込む。


 ヒヤリ、とした冷たい感触。


 アダダは一瞬ビクリとしたが、目の前の女性が小刻みに震えているのを見て、すぐに思い直した。


(怖いんだ……。ずっと一人で、震えてたんだ)


 その「冷たさ」の正体が、もっと別の恐ろしいものだとは気づかずに。


「えっ、私が?

 クロじゃなくて?」


「もちろんクロさんも。アッシュさんも……

 皆さん、私たちの希望なんです」


「えっ、俺も?

 へへ、有名人かぁ!」


 アッシュが照れ臭そうに鼻の下を擦る。


 なーちょが横から「あーしも有名人かもぉ?」と茶々を入れるが、ゲルドの低い声がそれを一喝した。


「無駄話はやめろ。

 ……情報の共有を始めるぞ。座れ」


 全員が円卓を囲む。


 羊の皮を被った狼が紛れ込んでいるとも知らず、

 アダダたちは『消失』という巨大な闇へと、深く踏み込んでいった。


遂に本格登場しました、**茶髪の女性**ロナ

彼女の口調は被害者そのもの、怯えた羊の様です……。



〜宣伝〜

 僕、「ゑルマ」は、legacy onlineの執筆の筆休め的な感じで新作の連載も始めました。


 ドロップ率1%の「真核」 取得イベントリに入れた瞬間の直前1時間の行動や周辺の環境を元に

 唯一のオリジナル武器を作れると言うシステムがあり周りのプレイヤーが気付く前から主人公がそのレア泥を蹴っ飛ばし最適な場所での記録デ ザインをするというちょっとおかしな主人公と仲間達の物語です。

 

【365日ライブ配信を監視し続けた俺、サービス開始と同時に『正解』を叩き出す 〜ドロップ率1%の至宝を蹴っ飛ばし、理想のログを刻んで最強の武器をデザインする〜】


僕の中では「至宝蹴り(しほけり)」と呼んでいます。


https://ncode.syosetu.com/n8535ls/


 よろしければそちらも読んでいただけると喜びます ブクマもしてやってもいいと思っていただけるだけでもありがたいです。

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