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第18話:『見えざる暗殺者と、信頼の弾道』



 ティフォンに案内され、無機質な石造りの廊下を進む。

 観戦室へと続く角を曲がったその時、前方から一人の女性が歩いてくるのが見えた。


 真っ白な装束に身を包み、どこか神々しささえ感じる浮世離れした雰囲気。

 だが、彼女が口を開いた瞬間、その厳かな空気は一変した。


「あ! ティフォン補助教官やーん! いろいろおおきになぁ!」


 そのフレンドリーすぎる呼びかけに対し、ティフォンは言葉を返す代わりに、無言で深く一礼して通り過ぎた。


(おおきになぁ……?

 聞き覚えがあるような、ないような……。

 不思議な喋り方だなぁ)


 アダダがそう思った直後、視界に強烈な 『紅いノイズ』 が走った。


『ザザッ……!!』


(うっ…….!?

 なに、今の…..

 脳みその奥を、冷たい指で直接撫でられたような……)


 単なる頭痛ではない。

 何かを無理やりこじ開けられるような、生理的な嫌悪感と、

 なぜか泣きたくなるような懐かしさが混ざり合った、矛盾する感覚。


 アダダは思わず、壁に手をついて荒い息を吐いた。


「お嬢さん、こちらです」


 ティフォンが冷静に声をかける。

 彼が気づいたか、気づかないフリをしたのかは分からない。


(……い、今は二人を応援しなきゃ……!!)


 アダダは奥底の違和感を振り払い、観戦室へと足を踏み入れた。



 一方、二人が辿り着いたのは、訓練場の最奥にある何の変哲もない部屋だった。


「んあ? 何もねぇじゃねぇか」


 アッシュが不満げに声を上げた瞬間、グロウズが壁に手を触れた。

 白い表面に水色の光が走り、幾何学的な模様を描き出す。


 視界が歪む。


 次に目を開けたとき、二人は荒廃した市街地エリアに転送されていた。


『いいか、小童ども。ティフォンを知っているな。

 あいつが今からお前らを倒しにくる』


 エリア全体にグロウズの声が響き渡る。


 ルールは無慈悲だ。

 二人合わせて三回「死亡」すれば即終了。

 ダイヤの返却も、譲渡もなし。


 勝利条件は、ティフォンを一度でも倒すこと。


『安心しろ。あいつ自身が出てくるわけじゃない。

 お前らでは勝てん……。

 奴の数パターンを模倣したクローンだ。……始めろ』


 戦闘開始の電子音が鳴り響く。


 クロは即座に瓦礫の影へ身を隠し、インカムを叩いた。


「アッシュ、聞こえるかい? 作戦を伝えるよ」


「おう! どうすんだ!」


「相手はティフォンさんのクローン。

 案内された時のことを思い出して。

 彼は足音が全くしなかった。

 クローンが同じ性質なら、音もなく背後を突く暗殺型のはずだ」


 クロの脳細胞がフル回転する。


「アッシュ、君はあえて目立つように大通りを移動してくれ。囮だ。

 君の反応速度とグリーンガンの連射なら、奇襲の初撃は防げる。

 僕は高所から君を監視する。

 影が動いた瞬間、僕が撃って足を止める……いいかい?」


「へっ……了解だ! 信じてるぜ!」


 アッシュが地面を蹴り、瓦礫の中へと飛び出した。


 クロが持つHRスキンを、アッシュへと受け継ぐための運命の戦い。


 観覧室のモニター越しに、アダダは祈るように見守った。



 静寂が支配する市街地に、突如として「死」が舞い降りた。


 アッシュの背後。


 風を切る音さえしない。


 何の予兆もなく空間が揺らぎ、

 黒い人影が 「滲み出る」 ように着地した。


 質量を感じさせない、死神の挙動。


 ティフォン・クローン。

 手には短く切り詰められた、漆黒の銃身が握られている。


「アッシュ、真後ろだ!」


 インカム越しに飛ぶクロの声と、

 放たれたイエローガンの弾丸がクローンの足元を穿つのは同時だった。


「――っおらぁ!」


 アッシュは驚異的な反応で体を反転させ、グリーンガンを乱射する。

 火花が散り、クローンが一瞬硬直した。


 だが、奴は物理法則を無視したような動きで弾丸を回避し、

 再び闇に溶けるように姿を消した。


「消えた!? どこだよ!」


「動くなアッシュ!

 十二時方向の時計塔の陰、そこから三秒後に仕掛けてくる!」


 クロの指示は正確無比だった。

 まるで戦場の全ての動きを指揮棒タクトで操るかのように、

 クローンの次の一手を読み切っている。


 だが、クローンの速度がそれを上回っていく。


「くっ……速い……!」


 クロの精密射撃さえ翻弄する変幻自在の機動。

 アッシュが弾き飛ばされ、地面を転がる。


(クソッ!

 視えてはいるんだ!

 身体も反応してる!

 …..だが、今の装備じゃあと一歩、追いつけねえッ!!)


 重い足を引きずっているような焦燥感。

 どんなに反応が良くても、

 キャラ自体の「移動速度スペック」が足りていない。


「クロ! このままじゃジリ貧だぜ!」


「分かっている。……アッシュ、賭けに出るよ。

 僕がわざと姿を晒す。

 奴が僕を狙った瞬間、君が全力で突っ込め!」


「……はぁ!? お前、死ぬ気かよ!」


「信じてるって言っただろう? 頼むよ、アッシュ!」


 クロが屋上の縁に身を乗り出し、

 遮蔽物なしでイエローガンを乱射する。


 その瞬間、

 クローンの殺気が、獲物を狙う鷹のように

 クロへと向けられた。


前書き、後書き何書けばいいかわからない!!!



一先ず旧版での大事な譲渡試験の戦闘シーンまで持っていけました!!

クロとアッシュの信頼関係、見守るアダダ。


そして謎の関西弁の女性…。


続きが気になるなと思っていただければ幸いです・・・!!

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