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第6話 沈黙と余白の間に

ChatGPTにて執筆



 バイト終わり、春の夜風に吹かれながら駅前のロータリーを歩く。すっかり日も落ちて、街灯がぽつぽつと歩道を照らしていた。


 気づけばまた、藤城さんと帰る流れになっていた。


 彼女は店内でもよく話しかけてくれるけど、どこか節度があって。過剰に絡んでくるわけでもなく、けれど時折、妙にぐっと近づいてくる時がある。距離感を自在に操れるタイプなんだろう。


 そういうの、苦手なはずだったのに。


「ねぇ、村田さんってさ、バドミントン部だったんだよね?」


「うん。中学から大学までずっと」


「やっぱり運動できる人ってかっこいいよねー。私、走るのだけはホントに無理」


 そう言って肩をすくめて笑う。


「でも、なんか似合わない? 藤城さん、スポーツ系の部活っぽいよ」


「いやいや、ないない。私、文化祭の出し物で走っただけで一週間筋肉痛になる人間だよ?」


 そんな他愛もない会話を繰り返しながら歩く帰り道が、最近少しずつ楽しみに感じている自分に気づく。


 別に、何か特別なことがあるわけじゃない。ただ、こうして誰かと自然に話しながら歩けるだけで、少し心が温かくなるような。


「……村田さんってさ、優しいよね」


「え?」


 急にそう言われて、足が止まりそうになる。


 彼女は歩きながら、何気ない感じでそう言った。


「なんか、誰かのことちゃんと見てるっていうか。気づかってるの、伝わってくる」


 どう返したらいいかわからなくて、曖昧に笑うしかなかった。


 そんな自分の反応に、また少し自己嫌悪する。


 本当は、もっとちゃんと話せたらいいのに。


 もっと、彼女が何を考えてるのか聞いてみたいのに。


 それが怖くて、うまく踏み込めない自分がいる。


 そんな沈黙を埋めるように、祐希さんがポケットから飴を取り出した。


「食べる? 今日のおやつ」


 見覚えのあるミルクティー味の飴だった。


「……ありがとう」


 受け取った飴を口に含むと、ほんのり甘さが広がった。


「これ、無駄遣いしちゃダメってわかってるのに、いつも買っちゃうんだよね。」


 独り言みたいに言って、彼女は前を向いたまま微笑んだ。


 沈黙が、また僕らの間に降りてきた。


 けれど、不思議とそれが苦じゃない。


 風の音、街のざわめき、足音。


 それらが、まるで会話の代わりみたいに心に染み込んでいく。


 少しだけ、右手が彼女の手に触れそうになる。


 けれど、やっぱりその距離は保たれたままだ。


 夜の空気が少し冷たくて、僕はまた、何も言えなかった。



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