第3話 無意識のヤキモチ
ChatGPTにて執筆
ある日の夕方、バイト先の棚整理がひと段落したころ、ふと視線をあげると、藤城さんが安西さんと話しているのが見えた。
カウンター奥で、なにか楽しそうに笑っている。普段から人と話すのが上手な彼女のことだ。べつに珍しい光景でもないし、そう思ったはずなのに、なぜか目が離せなかった。
少しのあいだ、本の背表紙を指でなぞりながら手を止めたまま、そのやりとりに意識を奪われていた。
笑い声が、耳に残る。
なにがそんなにおもしろいんだろう、とか。 あんな風に話せるって、すごいな、とか。 自分には無いものだ、とか。
そんなことを、つい考えてしまっていた。
それに気づいて、そっと目をそらす。
べつに、気にすることじゃない。バイト先の仲間と雑談してるだけ。俺だって、ときどきは話すし、ちゃんと笑ってもらえたことだってある。
……のに、どうしてこんなにざわつくんだろう。
なんか、自分が嫌になる。
「村田くーん」
不意に呼ばれて振り返ると、安西さんが俺に向かって手を振っていた。
「この雑誌、あと一冊どこ行ったかわかる?」 「あ、えっと……ちょっと確認します」
ごまかすように雑誌の在庫を確認して、ストック棚に向かう。
棚を見て、確認して、数えて……。
でも、その間も、心のどこかで、藤城さんと安西さんの話し声が離れなかった。
別に。嫉妬とか、そういうのじゃない。
ただ、うまく話せない自分が、情けないだけだ。 ……そういうことにしておく。
***
その日、シフトが終わって更衣室で着替えていると、藤城さんが隣に来た。
「お疲れさまでしたー」 「お、お疲れさまです」
俺はモゴモゴと返しながら、カバンの中を整理するふりをした。
「今日、村田さんずっと静かでしたね」 「え、あ……そう、ですか?」
自分では、いつもと変わらなかったつもりだったけど、やっぱり、顔に出てたのかもしれない。
気づかれたくない感情って、いつもこうして、誰よりも気づかれやすいんだろうな。
「でも、あれかな。安西さんと話してるの、見てたから?」 「えっ」
俺は反射的に目を見開いた。
「……ちょっとだけ、見てました」 「ふふ、やっぱり」
そう言って笑った藤城さんは、なんてことない顔をしているようで、どこか少し、試すような目をしていた。
俺は、ただ曖昧に笑うことしかできなかった。
この感情に名前をつけるのは、まだ早い気がしたから。