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鬼才絵師!!画狂老人卍

作者: 坂山 海


"画狂老人卍"(がきょうろうじんまんじ)


Xに突如現れたその鬼才絵師は海外でバズっていた。



・凱旋門の地面にチョークで波模様を描き、マンバズ。

・自由の女神の足に「free!!」と書かれた足枷を取り付け、マンバズ。

・上野動物園の外壁にパンダの絵を描いて、マンバズ。



たった3つの投稿でフォロワー数100万人を超えた。



バンクシーに次ぐ鬼才だともてはやされている。



バンクシーとの共通点は匿名であり、風刺的であり、突然性があるところだろう。



世界が注目する絵師が90歳のおじいちゃん集団だとは誰も気づかない。


高齢者の深夜徘徊にいちいち対応していてはキリがないからだろう。



「なんでこんなんしよるの?」

「ワクワクするやろ?悪ガキ気分で」



アカウントを作ったのは私。

活動しているのはおじいちゃんとそのネット友達。(相手も同世代くらい)



「次、何描くん?」

「言ったら、つまらんやいな」

「ふーん。できたら教えて〜」

「あいよ」



じいちゃん。病気になった言うてこっちに来たんに、バリバリ元気なんやが。


今時の90歳ってこんなもんなん?その辺のサラリーマンより目輝いとるし、楽しそう。



「まあ元気そうならいいけど」

「あぁっ??なんち?」

「nあんでもな〜い」

「あそ」




2ヶ月後。



「じいちゃん。次できた〜?」

「んぇ?ああ。できとーよ」

「まじ?見して見して!」

「ええよ〜」

「うおっ!?これやば!!」

「そうやろ!!」


「どげんしてつくった?」

「そげんは内緒や」

「ずるー」

「エリックがてつどーてくれたんや」

「いや、誰やし」

「ネット友達」

「私より、ネット陽キャなんやが・・・」


「るりはもうちょい人に好かれなな」

「うっさいわ」

「まあ、えーらしい顔しとるけ、大丈夫や」

「・・・」



誕生日に渡したmacbookairの画面には忠犬ハチ公の銅像が本物の犬になっていた。(すぐに犬は保護されたとニュースになった)




「じいちゃん。なにもん!?」

「年寄りの悪ふざけは世界共通みたいやな〜」

「いやいや、悪ふざけの域超えとるやろ」

「年寄りのいいところ教えちゃろか?」

「いいところ?」

「権力持ちが多いっちゅうこっちゃ」

「クソジジイどもが」



じいちゃんは掠れた声で高笑いをしながら、満足そうに座布団を枕にして昼寝した。


次の日。

じいちゃんを起こしに向かうと、部屋にいなかった。


階段を降りて居間へ向かうと、昼寝をしていた場所で横になったままだった。



「じいちゃんそこで寝たん?風邪ひくがえ」

「・・・」

「おーい納豆ラスイチやけど食っていんの〜?」

「・・・」

「じいちゃ〜ん??」

「・・・」

「じいちゃん!!!!!!」



じいちゃんは満足そうな顔のまま目を覚まさなかった。


座布団の隣に置いてあったMacBookairを覗くと、私と過ごした1年間の思い出を綴った手紙の写真とフォルダいっぱいの私の写真がfacebookの"卍老人"という非公開グループに投稿されていた。




畳にシミが増えていく。



トラックパットに涙が落ちると、さらに下へスクロールされた。



一番下にはこの一年を表現したタイトルと画狂老人卍が打ち込まれていた。






「鬼才絵師!!画狂老人卍」




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