peace1 ~ 宣誓 ~
死後、人間はどうなるのだろう。
三途の川で目を覚ます?
閻魔様による裁定?
それとも魂なんてものは存在せず、ただ無の存在になるのだろうか?
ーーー否。
そのどれでもない。
人は転生するのだ。
悪を成した者は人ではないナニかに。
善を施した者は再び人として現世に輪廻する。
それが人としての命運。
それが生命としての規律である。
…しかし
稀にその輪廻から外れてしまう存在がある。
それは神の悪戯か、はたまた運命による導きか。
それを知る者は身近にはいない。
それを教える者もいない。
だが、これだけは分かる。
人としての輪廻から外れ、別のナニかになる者は感覚で理解してしまうのだ。
自分に課せられた使命を。
さぁ、行くがいい。
運命によってナニかを背負わされた選ばれし者よ!
貴殿こそが、世界にナニかを示すのだ!
「だが断るッ!?」
・・・あれ?
時は現代。
場所は日本のとある路地。
今日、ここで1人の青年がトラックに轢かれそうになる少女を助けようと身を挺して救い、命を落とす・・・ハズだった。
「はっはっはッ! 見たかクソ神様がッ! だぁ~れが貴様の思い通りに死んでやると思ったかッ!」
青年は轢かれそうになったトラックから、少女ごと抱え込んで人間離れした跳躍でトラックを飛び越えて命の危機を回避していた。
いや・・確かにその人間離れした身体能力を唖然としたが、驚く所はそこではない。
彼は確かにトラックで死ぬ運命だった。
そして彼の魂が輪廻する先は、こことは別の異世界へ転生するはずだった。
何故なら、彼はその使命を背負った存在なのだから。
それなのに、なぜ・・彼は死なない?!
「いいかッ! よく聞け自己中神様よッ!」
青年は少女を抱えたまま夜空に拳を上げ、声を大きく吐き出す。
「俺は絶対に異世界になんて転生しないッ! この現代で! この日本で! 俺は人生を謳歌するッ!!」